あなたに会いたくて


もうすぐ出産の日が迫って来ている。どんな子が産まれるかは、もう充分すぎるくらい見ていたクイーンだが、それでも楽しみを抑えきれない。
ピンクの頭に、自分と似たシニヨンヘアに衛に似た目の大きさと色。寂しがり屋の癖に、その癖強がりで。頭が良くて頑張り屋。そんなちびうさに会える事が日に日に楽しみになっていた。
大きくなって行くお腹を見ながら、もうすぐだと早く会いたくなっていた。

「準備は万端よ。いつでも産まれてきてくれて大丈夫よ」
「うさは気が早いな。6月30日に俺が取り上げる事になってるんだから」
「そうだったわね。頼りにしてます、まもちゃん」

お互いをかつての愛称で呼び合い、愛を確かめ合う。

「カルテット達の教育係は貴女に任せるわ、サターン」
「有り難き幸せ」

早めに着任したカルテットの教育の総括はサターンが取りまとめることになった。主に彼女らのスケジュール管理をサターンが務める。
そうする事で、かつて仲の良かったちびうさとほたるがいつでも近くにいられるように計らった。
孤独に幽閉された世界で一人ひっそり太陽系を見守らなくても良いようにと、クイーンなりの配慮だった。

「四守護神に四天王も。サターンのサポートと彼女たちのお世話をお願いね」
「御意!」
「了解致しました」

クンツァイトとヴィーナスにはセレス。
ゾイサイトとマーキュリーにはパレス。
ネフライトとジュピターにはジュノー。
ジェダイトとマーズにはバスタ。
それぞれ個別に面倒を見る様、取り計らった。
この人事に一番驚き、喜んだのは四天王その人たちだった。
前世でも現世でも裏切り、殺そうとした。なのに、クイーン自ら役割を与えられた事に驚きを隠せなかった。何と慈悲深い。とクイーンの心遣いに感謝した。
任命されたからには、全力で全うするだけ。命をかけても。そう各々が心の中で誓っていた。

「クンツァイト、ゾイサイト、ネフライト、ジェダイト。ゴールデンキングダムの護衛も頼んだぞ」
「喜んで」

かつての名で久しぶりに呼ばれ、嬉しさと懐かしさに照れながら返事をする。

「ウラヌスとネプチューンは、プルートの時空の扉のサポートとクリスタルトーキョー、そして、エリュシオン。みんなのサポートをお願いね」
「承知しました、クイーン」
「貴女の仰せのままに」

戦闘力が特に強いウラヌスとネプチューンには、太陽系全体を守る役割が与えられた。
全ては、スモールレディ誕生のその日の為。色んなことを強化していた。

「無事に産まれて、素敵なレディに育ってね。スモールレディ」

それは、かつて自身が誕生した際に起きた忌まわしい出来事があったから。そのせいで月の王国は滅んでしまった。
しかし、そのお陰で生まれ変わり、今こうして禁断の恋が成就したとも言える。人生とは皮肉なものである。

「スモールレディはこう見えて900歳。何故か成長が止まってしまった」

うさぎとして、セーラームーンとして見た未来でキングが言ってた言葉が引っかかっていた。
成長を望まない親などいないし、止まってしまったとしても銀水晶やヒーリング能力で強制的に成長させる事も可能なはず。なのに、それすらされず成長出来ないちびうさ。
前世の自身が誕生した時と同じで、招かれざる客に呪いをかけられたなら納得出来る。誰にも知られず、心の中で不安と戦いながら、早急な人事とカルテット召喚を急いだ。
勿論、カルテット召喚はこの事が無くともしていたが。



そして数日後。6月30日当日ーーー

「うっ産まれそう……」

ピンク頭の明るい女の子に会えるまで、後数時間。
不安と期待を膨らませながら、キングに支えられ、クイーンはパレスにある医務室へと入って行った。

「オギャー、オギャー」

と元気な産声は、エリュシオンまで響き渡るほどだったとか。そうでなかったとか。




おわり

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