Precious Time
そして月野家の前に来ると衛はますますうさぎに会いたい気持ちを募らせ、2階のうさぎの部屋を見上げる。
「うさぎ呼んでくるからちょっと待ってて!」
そんな姿を見たちびうさはそう言い残して慌ただしく家の中へと入っていった。
ちびうさの気遣いに嬉しく思うが、会えるとは限らない為、期待せずに待つことにした。
するとちびうさが2階に駆け上がって行って帰った事を察知した育子ママが玄関に出てきて衛は驚きつつも会釈をした。
「衛くん、今日はちびうさちゃんをありがとう♪」
「こんばんは。いえ、ちびうさも誕生日だったので……」
「それとうさぎの事、ごめんなさいね?会えなくして……。恨んでるでしょう、きっと」
「いえ、そんな!受験生なので勉強するのは当然の事なので……」
「うさぎが出てきたら、残り一緒に過ごしてあげて」
そんなやり取りをしていたらうさぎが出てきて、と言う流れだった。
そんな事とは知らないうさぎはちびうさの部屋を後にして、自分の部屋へと戻って行った。
「ルナ、ただいま~ありがとう、まもちゃんの事許してくれて♪」
「お帰りなさい!楽しかった?」
「うん、久しぶりの生まもちゃん、やっぱり暗闇でもかっこよかった♪」
そう言って首にかかって胸の上で光る物を見せて喜ぶうさぎ。
「こんな素敵なプレゼントまで貰っちゃって、幸せだなぁ~♪」
「良かったわね!じゃあ、期末テスト最終日まで頑張れるわね?」
「……う、うん。よし、やっるぞぉ~」
それからのうさぎは期末テストの当日まですごい集中力で頑張った。
その頑張りは見事成績に現れ、全科目平均点に到達させ、衛とのデートを勝ち取ったのであった。
「そう言えばこの1ヶ月間、敵が大人しかったように思うけど、空気読んでくれてくれたのかな?」
「ん?そうかもね?」
家に買ってきたうさぎは敵の襲来が無かったことに気づいて疑問をルナに問いかけた。
勉強でそれまで敵が襲ってきていないことも気に止めていなかったが、勉強から解き放たれて余裕が出てきたことでふと湧いた疑問だった。
期末テストを終わるまで忘れていたうさぎだが、実は当初遊びを禁止された時から敵が来たら必然的に衛に会えるし、敵と戦うのは怖いけどストレス発散にもなるから敵の襲来に少し期待していた。
しかし結果は物の見事に裏切られ、期末テストまで連絡すら無かった。
不謹慎だったが結構ガッカリしてしまった。
そうかもと答えたルナだが、本当は知っていた。
何度か敵が襲って来ていたが、うさぎには勉強に集中してもらおうとレイ、亜美、まこと、美奈子とちびうさ、そして衛にうさぎに連絡入れずに戦ってもらっていた。
レイとまことは常々プリンセスであるうさぎを戦いの最前線に引っ張り出して、結局自分達の方が守ってもらってしまっている形になっていた事に悩んでいたから良い機会だと受け入れた。
勿論、リーダーの美奈子も快諾した形だ。
うさぎに輪をかけて頭の悪い美奈子は期末テスト勉強を逃れられるならと人一倍張り切っていた。そしてテスト結果は火を見るよりも明らかで、母親に怒られる羽目になってしまったがーー。
セーラー戦士にとって1番の敵で手強いのは“定期テスト”なのかもしれない。
おわり