Precious Time
公園のベンチに2人で腰かける。
「まもちゃん、プレゼントありがとう♪」
「どういたしまして♪開けてみて」
そう言われ、開けるとそこには自身の誕生石であるムーンストーンで出来た可愛いハート型のネックレスだった。
手に取ったうさぎからネックレスを取り上げると衛は首に付けてあげた。
華奢な身体のうさぎによく合うこじんまりした可愛いネックレスだった。
「可愛い♪嬉しい!大切にするね?」
「喜んでくれて俺も嬉しいよ。選んだのはちびうさだから俺の趣味じゃないんだけどさ」
「ううん、それでもまもちゃんからの愛を感じるよ♪」
「ならよかったよ」
自分で選んだものでは無い物でもそう言って喜んでもらえて衛は嬉しくて目頭が熱くなった。
「うさ、15歳の誕生日おめでとう♪」
「ありがとう、まもちゃん♪」
「うさが産まれて来て、俺と出会ってくれて、俺を好きになって、俺と付き合ってくれてありがとう!」
前世での恋人であり、再転生して出会い恋に落ちる事が約束されていたとしても奇跡的な事だと改めて思っていた。
もしかしたら運命の歯車が少しでもズレていたなら今こうしてここにいなかったかもしれない。
特に衛は6歳の時に事故にあった。それ故に当たり前の普通の幸せに縁遠い所で生きてきた。うさぎ以上にこのミラクルロマンスを感じていた。
見つめ合った2人はどちらともなく目を瞑りながら顔を近づけキスをした。
1ヶ月ぶりくらいの口付けだった。
この前いつもの公園であった時は既のところで思いとどまった事と、夜も更けて暗くなり誰もいなかったこともあって、口付けは次第に長く深いものになる。
2人とも夢中でお互いの舌を絡め、激しく求めあった。
外だという事を忘れそうだったが、既のところで止め、唇を離す。
「そう言えばちびうさとのデートはどうだったの?」
「あ、あぁ……」
聞くか迷ったが聞いてみると衛の返事は何だか覇気がない。
「どうしたの?」
「あぁ、楽しかったぞ」
言葉少なに答える衛にうさぎはそれ以上聞けなくなった。そして後でちびうさに聞いてみようと思った。
「……じゃあ、そろそろ帰るか?」
「う、うん……」
今度はうさぎが言い淀む。
帰りたくはないからだ。
だが、ルナと育子ママの信頼を裏切るわけにもいかない。
束の間ではあるものの会えないと思っていた衛と誕生日に会えた事は単純に嬉しかった。
腰も足取りも重くその場を離れ、月野家へと2人で帰っていく。その間の2人はまた暫く会えなくなると言う事実で無口になっていた。
「送ってくれてありがとう♪……じゃあ、また、ね?」
「あ、あぁ、勉強頑張れよ!おやすみ」
「おやすみなさい」
衛はうさぎを家の前まで送ると踵を返して自分のマンションへと帰って行った。
一方のうさぎは家へと入るとリビングへと行き、育子ママに帰った事を報告し、お礼を言った。
そして2階へと上がるとちびうさの部屋へと向かった。
先程から気になっていた衛とのデートの詳細を聞こうと思ったのだ。
「あ、あの……さあ?……さっきはありがとう」
「良いわよ、別に」
「素直じゃないんだから!で、まもちゃんとのデート?は、どうだったのよ?」
「あぁ、うん、楽しかったよ?」
ちびうさの方も歯切れが悪く、言葉少なだ。
あれだけ楽しみにしていたのにどうしてだろうと思ったが、それ以上は何だか聞いてはいけないような気がした。
珍しい喧嘩でもしたのかな?と考えた。
実際は喧嘩をしたわけではなかった。
2人が言い淀んでしまったのは他ではないうさぎが原因で少し気まづくなってしまったのだ。
それは数時間前の事に話は遡る。
ちびうさは約束通り衛のマンションへ行き、デートをスタートした。
最初は楽しそうにしていた衛だが、段々と心ここに在らずで上の空になっていった。
うさぎとは違い、敏感に察知するちびうさははしゃいでいる自分とは裏腹に余り楽しんでない様子の衛に気づいてしまった。
気づかれてしまったことに気づいた衛は罰が悪そうになる。
ちびうさに悪いと思いつつ、やはりうさぎと会えない事に寂しさが募り、段々と元気がなくなり落ち込んでしまった。
そんな衛の気持ちに気づいたちびうさは衛に提案した。
「ねぇまもちゃん、うさぎの誕生日プレゼント一緒に選ぼう」
「あぁ、そうだな!何がいいかな?うさは何が喜ぶだろう」
「まもちゃんが選んでくれたものなら何でも嬉しいと思うよ?」
「そんなもんか?」
「うん♪」
当日は会えない事が確定していたのと寂しさでうさぎのプレゼントをこの日まで買う気分になれなかった衛。
気を使って何も言わずうさぎのプレゼントを一緒に選ぶことをちびうさに提案されて、衛は少し気分が少し上がる。
ちびうさと一緒にいるのにうさぎの事を考えてしまって気を使わせて人として最低だと衛は自分を責める。
ちびうさはもう大分両親と会えず寂しい事を表にも出さず1人で頑張っているというのに、少し会えないくらいで寂しがるなんて贅沢な悩みだと自分を叱責する。
ちびうさとうさぎのプレゼントを選んでいる間はうさぎの事を考える事を許されている為、不謹慎だが嬉しくて楽しい時間を過ごした。
「まもちゃんって本当にうさぎが大好きだよねぇ~。うさぎがいないと全然ダメダメなんだから!」
「アハハ、ちびうさには嘘が付けないな……」
「あったり前じゃない!何年パパとママを近くで見てきたと思ってんのよ?」
「……未来の俺もうさがいないとダメダメか?」
「残念ながらね?」
「変わらないんだな……面目ない」
そんな調子のデートだったが夜も更けてすっかり暗くなった為、夜道は危険だから月野家までちびうさを送っていくことになった。