Precious Time


「はい、地場です」
「まもちゃん、ちびうさだよ♪」

一方、衛は通信機を切り、電話に出ると先程話しに出ていたちびうさからだった。

「ああ、ちびうさか」
「なぁにぃ~その微妙な返事は?うさぎじゃ無くてガッカリしたって感じ?」
「いや、そんな事ないよ!」

うさぎとの通信していて、暫く会えないと言う宣告と通信を遮られたことにより、多少ガッカリしてはいた衛だが、それが隠せず出てしまっていたのか、ちびうさに見透かされてしまったようで慌てて取り繕う。

「本当にぃ?声に元気ないよ?」

ちびうさはうさぎと違い感がいい。
この性格は自分に似ているところだと衛は思っていた。
だからこそ誤魔化せないと考え、観念する事にした。

「いや、本当にうさだとは思って無かったんだ。通信機でギリギリまで話していたから」
「だからまもちゃんの通信機に繋がらなかったんだ……」
「そっちにかけてくれてたんだな、ごめんちびうさ」
「良いわよ!どーせ話が長いって分かってるもん!……うさぎと話したって事はあの事はもう聞いたの?」
「ああ、聞いた」

“あの事”とは成績が悪いうさぎとは期末テスト終わるまで会えないと言う事。
だが、衛は絶賛その事で絶望中の為、手短にしか答えられない。
受け入れはしたが、言葉にすると現実味が増して波のように一気に押し寄せて来るような気がして言えずにいた。
そんな衛の事を勘のいいちびうさは読み取った。

「うさぎと会えない事がそんなにショック?一生会うな!とか、別れろ!って言われてるんじゃないんだから……。ほんの3週間程度じゃない」
「そうは言ってもな……」
「私なんてパパとママにもう3ヶ月以上会ってないのよ?」

それを言われるともう何も言えなくなる。
まだ幼いちびうさはセーラー戦士修行の為、両親と離れて月野家で暮らしている。
そのちびうさに言われると弱音は吐けない。

「そうだったな。すまないちびうさ……寂しいよな?会いたいか?」
「寂しいし会いたいけど、立派な戦士になるまで帰らないって決めたから」
「そうか、偉いな!俺らもちびうさ見習わないとな」
「まぁ私は900年生きてパパとママと過ごしてきたからね!2人共公務が忙しくて会えない時もあったけど……」

30世紀にいても多忙な両親とはあまり会えず、寂しい思いを抱えている事を知った衛は心を締め付けられる思いだった。
そして将来、うさぎと結婚してちびうさを授かったら寂しい思いを最小限に出来るように努力しようと違うのであった。
衛自身もちびうさくらいの時期は両親が他界し、親戚の家を転々としていた過去があるから寂しい気持ちはよく分かる。
小さい子供に寂しい思いをさせるのは間違っているとやるせなくなる。
きっと未来の2人も寂しいのは嫌いだから分かって努力はして来ただろうと思うが、それでも埋めきれず寂しい思いをさせてしまっているのだろうと衛は悔しさを滲ませる。
公務や仕事は2人で抱え込まず戦士達と分担しようと心に誓った。

「ちびうさは大人だな!俺は全然ダメだ。うさと少し会えないくらいで心が折れそうになってる」
「えへへー照れるなぁ~♪まもちゃん、大丈夫だよ!うさぎの代わりに私がまもちゃんとデートしてあ・げ・る♪」
「ありがとな、ちびうさ」
「あ~まもちゃん、本気にしてないでしょう?私、本当にまもちゃんとデートするからね!」

こんなチャンスは滅多にない為、デートにこぎつけようと必死になるちびうさ。
弱っている衛の心に寄り添って、あわよくば、うさぎから彼女の座を奪おうと意気込んでいた。

「分かった分かった」
「だからね、6月30日絶対!空けておいてね?うさぎの誕生日だけど、私の誕生日でもあるから祝って欲しいの♪」

この前、ムゲン・C・パークに連れて行って欲しいと頼まれたのと同じテンションでお願いされる。オネダリにとても弱い衛は承諾する事にした。
どうせうさぎには会えない。代わりにはならないが、未来から来た娘を祝えない両親の代わりに祝ってやろうと考えた。

「分かったよ。行きたい所とか考えておいて!誕生日プレゼントのリクエストとかある?」
「わぁ~い、ありがとうまもちゃん♪当日一緒に見て買ってもらうから大丈夫だよ!じゃあね!」

誕生日当日、会える事になった事が嬉しくて約束を取り付けた所でちびうさは電話を切った。
ちびうさのお陰で衛は絶望的な宣告から浮上出来たのであった。

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