過去への想いと未来への誓い


「ここよ」

案内されて入った祈りの塔はとても広くて、中央にクリスタルで出来た塔とその前に台座があった。

「ここで祈るの。前世の時もよくここで祈りを捧げていたわ。今は1年に1度この日だけ前世で滅びたあの日を思い出して、犠牲になった人々を弔う為に黙祷しているの」

そっか、月が復興してちゃんとした祈りの塔で黙祷するからいつものドレスとタキシード姿で良かったんだ。
クリスタル・パレスでの祈りの塔でもいつもこの格好だから。つまりは祈る時の王国流の正装。
そんな事を思っていたらママは台座の前に跪き、祈り始めた。
パパもママの隣で一緒に祈っている。
慌てて私もママの隣に行き祈る。
どのくらい黙祷すればいいんだろう?
きっと多くの犠牲があったろう事は想像に固くない。
黙祷し過ぎてもし過ぎることなんてないんだろうな。
私もママやパパに続いて黙祷し始めた。

“前世のパパやママであるプリンセス・セレニティ、プリンスエンディミオン、ヴィーナス、マーズ、マーキュリー、ジュピター、クンツァイト、ネフライト、ゾイサイト、ジェダイト、ウラヌス、プルート、ネプチューン、サターン。太陽系の住人のみんな、どうか安らかに。そして、前世でのママのママであるクイーン・セレニティ、みんなを転生して下さってありがとうございました。お陰で今私がここにいます”

どれだけの時間が経っただろうか?
黙祷から目を開けると私のピンクムーンクリスタルが光り輝き、まるでシグナルを鳴らすように点滅していた。
隣のママを見ると、ママの銀水晶も同じで、更にパパのゴールデンクリスタルまで光り輝いていた。

共鳴して、る?そう思った瞬間、台座に人が現れる。ーークイーン・セレニティその人だった。

「お久しぶりね」
「おかあ……さま?」
「クイーン……」
「双方向で話が?」

クイーン・セレニティが現れるなんて予想もしていなかった。
クイーンはネヘレニアとの戦いの時、彼女の記憶の中で見ていた。
姿は小さいけれど、あの時と変わらない若さを保っていた。

「可愛い、初めましてね?スモールレディ」
「私を、知っているのですか?」
「勿論よ。セレニティがこの日にいつ色々報告してくれるもの」
「スモールレディ、ご挨拶を」

前世でのママのお母様のクイーンに認識してもらえてるなんて、とても光栄。感激すぎる。
クイーンが私を知っていてくれたことに驚いてしまい、挨拶することをすっかり忘れていた。

「クイーン、ご機嫌麗しく存じます。私はうさぎ・スモールレディ・セレニティ、ネオ・クイーン・セレニティ、キング・エンディミオンの娘、シルバーミレニアムの第一王女です。どうぞお見知り置きを」
「私は地球で呼ぶ所の月の女神セレーネの化身、シルバーミレニアムの前女王クイーン・セレニティ」

私が挨拶するとクイーンも挨拶を丁寧に返してくれた。
流石はクイーン、とても聡明な方だと言う第一印象を受けた。

「どうして?あの時消えたはずでは?」
「“幸せになりなさい セレニティ。今度こそ貴女の愛する人と”と言った後ね?そうね、強いて言うなら3つのクリスタルに呼ばれたのかも知れないわね」

あの時の光はクイーンを呼んで共鳴していたのか。

「セレニティ、愛する人と幸せになれたのね。こんなに可愛い女の子も出来て」
「お母様、本当にありがとう。私たちを転生させて出会わせてくれて」
「私が出来る精一杯をしただけよ」
「しかし、同じ時代の同じ地球でまた再び出会うようにして下さった。とても感謝しています」
「エンディミオン、それは私1人の力では出来なかった事です。私はただ銀水晶に転生するよう願っただけです。弱い心で願ったから不完全だった。セレニティに銀水晶を託すだけで精一杯で……」
「ではどうして全員が集結する事が出来たのですか?」
「セーラーサターンの再生の力によるところが大きいでしょう」
「サターンが?」
「あの時サターンが沈黙の鎌で全てを終わらせ、然るべき時に転生し、集結出来るようしてくれたのでしょう」

クイーンはこうなる未来を想定していたのかな?
銀水晶では敵を封印したり、人や物を再生する力はあるけど、終わらせることは出来ない。
と言うか悪しき心を持っていないから終わらせたくてもきっとそれが出来ない。
あの日、王国が滅びた事で太陽系惑星の役目もなくなってしまった。
だけど、メタリアを封印してママ達に未来を託すだけが精一杯だったんだろうなと思う。
銀水晶を解放すると命が無くなるもの。
守るべき領域を離れることを許されず、はるか遠くで見守っていたウラヌス達外部太陽系三戦士。
3人が集結して呼び出したサターンは、3人の前で下ろされたその沈黙の鎌は、シルバーミレニアムの全てを終わらせた。
クイーンが銀水晶で出来なかったことを補う為の役目で、辛い事を一手に引き受けていたんだ。
その部分だけを見ていたからウラヌス達は忌み嫌い、嫌がった。
だけど、実際は終わらせると同時に再生も出来る力が備わっていた。
クイーンより冷酷に判断を下せ、必ず使命を果たせると絶対的な信頼の元任命され、見事期待に答えた結果なんだと思った。
クイーンがここまでの事を想定していたかは分からないけど。

ほたるちゃん、初めてあった時不思議な子だと思った。
だけど、悪い子なんて思わなかったし、仲良くしたいって思ったんだよね。
滅びの戦士の生まれ変わりって聞いて驚いたけど、仲良くしないなんて考えは生まれなかった。
寧ろ、もっと仲良くして私が守ってあげるんだって気持ちが大きくなった。
結局、最終的に守られたのは私の方だったけど。
どんな状況でも臆すること無く立ち向かう姿はとても立派で芯が一本以上通ってる。
ほたるちゃんは、セーラーサターンは私の憧れ。

3/4ページ
スキ