過去への想いと未来への誓い


支度をしてママの部屋へと向かう。
ママの部屋の前にパパと2人で待っていた。
やっぱりいつものドレスとタキシードに身を包んでいる。
私もいつものピンクのドレスにしたけど、大丈夫かな?
お墓参りの格好にそぐわない気がするけど。

「この格好でいい、のかな?」
「大丈夫♪問題ないわ」
「ありのままの姿でいいんだ」
「私たちもいつものこの格好だから」

だから私もドレスにしたけど、本当にこれで大丈夫なのかな?
ママ、どこか天然だし、パパはそんなママに甘いから心配。

「どうやって行くの?」

歩きながら2人に聞くと何か含んだ顔をした。

「行く前にみんなに言ってから行きましょうね」

再び黙り、神妙な顔をした。

「じゃあ今年も行ってくるわね」
「今日はその日でしたね。行ってらっしゃいませ」
「今年はスモールレディも一緒なのですね?」
「ええ、昨日話したら行きたいって言ってくれて」
「そうでしたか。良かったわね、スモールレディ」
「うん」

今日という日がどう言う日であるのかを知りたがっていたヴィーナスに声をかけられる。

「気をつけ行ってらっしゃいませ」
「クリスタルトーキョーをよろしくね」

内部のみんなに見送られて出発する。
パレスの奥を進んで行く。
この道は、プルートが守る時空の扉がある所だ。
扉が自然と開くと、そこにはプルートが跪いて待っていた。

「プルート、今年も行ってくるわ」
「今年はスモールレディもご一緒なのですね?」

みんな私がいる事に驚くよね。
今まで連れてってもらってないばかりか、どこに何をしに行くかさえも教えてもらってないから当然だけど。

「ああ、昨日全てを話してね」
「ついて行きたいって言ったの!」
「そうでしたか。立派なレディになったのですね」

プルートが喜んでくれて、私も嬉しい。

「じゃあ行きましょう」
「ご武運を」

そう言うとママは銀水晶を取り出した。

「銀水晶?」
「そうよ、これで月へ行くの」

銀水晶で月に行けるなんて聞いてない!
勉強不足と自分の無知さ加減に愕然とする。
それにしても銀水晶はやっぱり偉大な聖石。何でも出来るんだね。ひょっとして時空の鍵が無くても過去にだって行けるのでは?なんて思ったりしてしまう。

「因みに俺の持つゴールデンクリスタルでも行けるぞ」
「そうなの?」
「貴女のピンクムーンクリスタルでも行けるわよ」
「……そう、なんだ」

サラッと当たり前みたいに色々言わないで欲しい。
こちとら初めての事実に驚いてるんですけど?
うさぎ~、まもちゃん!何で教えてくれなかったのよぉ~。

「今回は私の銀水晶で行くわ。2人とも、私に掴まって」

言われた通りママに掴まる。
どれくらいかかるんだろうと考えている間に月に到着していた。

「ここは……?」
「マーレセレニタティス、晴の海よ」

ここが、月……。
前世のママ達がいた王国があったところ……。
目の前に広がる光景に圧倒された私は、感動で声が出なくなっていた。
来る前は不安の方が大きくて。
それは、前世で壮絶な戦いがあったと聞いていたから。
サターンが全てを無に帰したって聞いていたから。
年月だって経ちすぎているから何も無い廃墟で虚無な世界なのだと思っていた。

でも、実際は違ってた。
ムーンキャッスルは立派にそびえ立ち、周りにも色んな建物や噴水に泉とまるでギリシャ神話の様な、それでいてどことなくクリスタル・トーキョーにも似た雰囲気で。
復興っていうのかな?
きっと当時と変わらない、もしくはそれ以上に栄えていたから。
自身の浅はかな考えを呪った。

「凄い……」

それしか言えなかった。
それ以上の言葉が出て来なかった。

「驚いた?再建したのよ。クインメタリアとの決戦の時、銀水晶と私の祈りの力で」
「そう、だったんだ」

銀水晶と祈りの力って凄いんだ。
こんなに綺麗に再建するなんて。

「行くわよ、スモールレディ」
「あ、うん。どこに向かうの?」
「祈りの塔よ。そこで黙祷するの」

驚きで月の周り、シルバーミレニアムを見回していたらママに呼ばれる。
慌てて2人に付いて城の中へと入って行った。
初めてのムーンキャッスルの中はとても広くて、どれも目新しくて胸がときめいた。
祈りの間までは少し遠くて、行く途中にママから案内や想い出話を聞かせてくれた。

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