ぴんきー♡ぱにっく


火川神社に到着すると衛がスモールレディを抱っこして長い石段を昇る。
小さなスモールレディには自分で登ることが出来ないと判断した衛の計らいだ。

階段を登りきったところでレイが和永と待ち構えていた。

「いらっしゃい、スモールレディ」
「この子が前に衛達が話してた例の…?」
「そう、未来から飛ばされてきてしまったみたいだ」
「どうなってるんだ未来は…恐ろしい」

静かにみんなのやり取りを聞くスモールレディは、この2人も見覚えがあるから若かりし頃のマーズとジェダイトだとぼんやり考えていた。

「中に入って雛人形見ていって」

案内され、雛人形が飾られている部屋に入ると、とても立派な雛人形に圧倒されて驚くスモールレディ。

「うわぁー、すっごい!こんなの見た事ない」

漸くこっちの世界に来て元気が出たのか純粋に驚き、興味津々で雛人形を食い入るように見る姿を見て衛とうさぎは心底ほっとする。

「パパ…ママ…」

ふと我に返り、寂しくなってしまったのか突然泣き出してしまった。
思えばこっちの世界に来てから戸惑いはしているものの、泣く精神状態ではなかったのか涙を見せていなかった。
ここに来てほっとして両親が恋しくなったのか、緊張の糸が切れたように泣き続けた。
その間、優しく寄り添ってあげるうさぎと衛は、そんなスモールレディを見て未来に返してあげる事を決意した。

「お家に帰りたい?」
「パパとママに会いたい…」
「じゃあ、帰ろっか?」
「そんな簡単に帰れないだろ?どうするんだよ?銀水晶か?」
「フッフッフップルートから貰った鍵があるのよ!これで帰りましょ♪」
「そんなもの持ってたのか?よく無くさないで持ってたな?」
「銀水晶と一緒に大切に保管してたもん!」
「…あたし、帰れるの?」
「そうよ、しっかり送り届けてあげるからね!」
「大丈夫なの?とっても心配だわ」
「大丈夫だ。俺も着いていくから」
「けど、2人ともキングとクイーンには見つからないようにしなきゃいけないのよ?」
「あっちのプルートに預けるから大丈夫だって!」

どこから来るのか自信満々のうさぎに不安しかないレイ。衛も着いているとはいえ、心配しかない。

「じゃあレイちゃん、和永さん、お邪魔しました!ここで時空の鍵使って行っていいよね?誰もいないし」

横着にも火川神社で飛ぼうとするうさぎに頭を抱え、より一層の不安を募らせる。

「では行きます!…ってあれ?呪文って何だっけ?私、知らないや。アハハハハハァ~」

一同、大ゴケである。

「…時の衛人よ 時空の扉 天空を裂き 我に開け放てー我は汝の真の名を呼ぶ 全能なる時の神ー衛人の父ー『クロノス』よ 我を導きたまえ 我を守りたまえ 光の道を我に!」

すっとぼけて頼りないうさぎからスモールレディが鍵を取り、呪文を唱える。
うさぎと衛は驚いたが、流石プリンセスとしてしっかりと教育を受けていると思った。
そして時空の狭間が開き、吸い込まれて行った。

しばらく時空を飛んでいたが、予定通り扉が見えて来てホッとする。
そしてうさぎはフッと思い出した。この時代のプルートはあの戦い以前のプルートだから自分たちを認識していないのでは?と。
また消去されそうになるのは嫌なので見えない位置でお別れする事にした。

「スモールレディ、私達はここまででお別れにするわ。パパやママ、マーズ達によろしくね」
「元気でな、スモールレディ」
「ありがとう、過去のパパとママ。さようなら」

笑顔でさようならの挨拶をしてその場を駆け出してプルートが待つ時空の扉を目指すスモールレディ。

合流するのを見届けた衛とうさぎはホッとして元の自分たちの時代へと時空の鍵をせつなへ意識を集中させて帰って行った。

元の世界に戻ったスモールレディはプルートの元へ心配して来ていたキングとクイーンに出迎えられ、無事クリスタルトーキョーへと帰ることが出来た。

何故自分だけが時空を超えてしまったかは謎だが、過去の両親を見たいと言う潜在意識が飛ばしたのかもしれない。




おわり

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