薔薇の秘密!タキシード仮面の強さの秘訣


衛は、立ち上がりうさぎの手を取りリビングを出た。廊下を歩いて立ち止まったのは、今までうさぎでさえ入る事が許されなかった唯一の部屋の前だった。

「ここって……」
「ああ、今までうさこもちびうさも入るの禁止にしていた部屋だ。ドア、開けてみて」
「……いいの?」

ダメだと言われていた部屋を開けてもいいと言われ、うさぎは一瞬躊躇った。

「ああ、知りたいんだろ?俺の事」

妖しい言い方をして、企んだ顔でうさぎにそう言う衛。
開けたくて知りたくて仕方なかった秘密の部屋。しかし、いいと言われると怖くなる。衛の事は勿論知りたいが、知ってしまうと後戻り出来ない気がした。

「開けます!」

そう宣言して、ドアノブに手をかける。恐る恐るドアを開ける。

「お邪魔しまーす」
「うさこ、もうとっくにお邪魔してるだろ?」
「だって、初めての場所なんだもん」

会話をしながらうさぎが中に入って行くとそこにあったのはーーー

「わぁー、トレーニングマシーンがいっぱいだぁ」

その部屋にあったもの。それは、トレーニングマシーン。ベンチプレスやぶら下がり健康器、握力計、大胸筋トレーニング器具、レッグエクステンションetc.....
身体を鍛える道具の数々が置いてあった。
つまり、トレーニングルームと言う訳だ。

「分かって頂けましたか、お姫様?」
「うん、何となく」

うわぁ〜凄い!と目を輝かせながらトレーニングマシーンを見て回るうさぎ。

「このトレーニングマシーンで薔薇を投げる腕の力を鍛えていたんだ」
「努力してたんだ!」
「ああ、だから余りここを知られたくなかったんだ。好きな女の子の前ではかっこいい男でいたくてな」
「まもちゃん♡」

女心も複雑だが、男心も色々ある様だ。
努力している所を知られるとかっこ悪い。衛はそう思っていた。

「失望したろ?」
「何で?とっても素敵だな♡って思ったよ?うさこは、そんな事でまもちゃんの事幻滅したりしないよ」
「うさこ♡」

努力している事を知られて幻滅されると思った衛。うさぎのその言葉に救われる。
そうだ。うさぎはそういう子だ。だから好きになったのだと改めてうさぎを好きになった理由を再確認した。

「でも、コントロールはここにあるマシーンで鍛えられるものなの?」

力は付くのは説明が着く。しかし、コントロールはこれらの機械では養えないだろうとうさぎは疑問になる。

「それは、これとこれだ!」

コントロールを鍛えているものの道具を指さす衛。

「テニスとバトミントンのラケット?」
「そう、俺中学時代はテニスで高校はバトミントンに所属していたんだ」
「まもちゃん、部活してたんだ!」

衛が運動部に所属していた事を初めて知ったうさぎは驚いた。しかも、テニスとバトミントン。意外だった。

「コントロールも力も両方鍛えられるんだ。ボールや羽根を考えて打ち返さないといけないから」
「そっか!だからテニスの妖魔の時、張り切ってたんだ!すっごいかっこよかったもんね、あの時のタキシード仮面様♡」
「覚えてくれてたんだな」
「忘れるわけないよ!一緒にダブルス組んだんだもん。あのリードがなかったら、殺られてた」
「そうだったな」

うさぎにとってテニスはタキシード仮面と初めて一緒に戦った思い出深い戦いだった。
タキシード仮面自身も生き生きしている様に見えた。わけを知ると合点がいった。

「今でも毎日素振りしたり、壁打ちしたりしている」
「今も現役なんだね!凄い!ソンケーしちゃう♡」
「そう言われると照れるな」

うさぎに褒められ、調子に乗った衛は更に秘密を明かしていく。

「後はこいつだ」

そう言って今度は指を指す。

「ダーツのまと?」
「正解!これで、投げるシミュレーションをしているんだ」
「なるほどぉ〜。確かにうってつけだ!」
「だろ?思っている所に刺さった時の快感は敵を倒す比じゃないぜ!」
「かっこいい♡」
「後は、ステッキの技だな。それは、これだ!」

そうして案内されたところには大きなテーブルが置いてあった。

「これって、ビリヤードだっけ?」
「そう、正解!今日のうさこは頭がいいな」
「えへへ、それ程でもないよ」

うさぎは聞いてはいなかったステッキの技の秘密も教えて貰えるとは思わなかった。

「そう言えばルビーナさんを助ける時、ビリヤードのポーズだったね」
「ああ、薔薇でも良かったが、ボールのレムレスだったろ?ビリヤードが一番かと思ってな」
「様になってたもんね♪」

ホークスアイに襲われて気絶していたルビーナ。風船のレムレスに転がされ、引きそうになった所をタキシード仮面がステッキで華麗に助け、事なきを得た。

「後は、これとこれだな」
「トランポリンと跳び箱の踏み台?」
「ああ、これはジャンブの脚力を鍛えてる」
「そー言えば、タキシード仮面様っていつも高い所から登場するもんね!それも鍛えていたんだね」
「そうなんだ。避けるのにも脚力がいるし、勿論セーラームーンを助けるのにも脚力と腕力は必須だからな」
「言われてみればだ!」

勿論、ランニングも強い脚力を作る為に大切なトレーニングだと衛は得意気に語る。
うさぎは感心した様なに、目をキラキラさせて衛の強さの秘訣を聞いていた。

「努力を惜しまないまもちゃん、かっこいい」
「サンキュー」

薔薇を投げるのにたゆまぬ努力があることを知ったうさぎ。
敵と戦うことや、自身を助ける為に血のにじむ様な鍛錬があった事を知ったうさぎ。そんな衛の努力を垣間見たうさぎは、改めて惚れ直した。

そして、そんな思いを乗せた薔薇はやはり衛そのもので、勇気の象徴だと改めて感じ、大切にしようと決めた。




おわり

20230602 ローズの日

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