薔薇の秘密!タキシード仮面の強さの秘訣


ある日の放課後。いつもの様にうさぎは衛のマンションへと遊びに来ていた。
いつも座っているソファーへと腰掛けるうさぎ。何の気なしに前のテーブルを見る。珍しく花瓶が置いてあり、花がいけてあった。

「わぁ~薔薇だ!綺麗だなぁ~♪」

花瓶の中にあったのは、真っ赤な薔薇。それを見たうさぎはうっとりする。

「ただの薔薇だろ?いつも見慣れている花じゃないか」

うさぎの横に座っている衛。うさぎの顔を見ると、まるで恋する乙女の顔をしている事に気付く。
うさぎがそんなに薔薇が好きだとは知らなかった衛は、不思議に思い問いかけた。

「だからだよ!」

尚もうっとりしながらうさぎは衛に顔を向ける。
だったら尚更こんな顔をするのは変だと衛は思った。

「どう言う事だ?」
「この薔薇はね、まもちゃんそのものだからだよ?つまり、まもちゃんなの!」
「俺は薔薇じゃ無いぞ」

うさぎの説明が要領を得ず、衛は更に謎が深まる。自分だと言われても、衛は当然だが薔薇ではない。人間だ。

「そんなの私だって分かってるよ!もう、まもちゃんのニブチン!」
「さっぱり分からないから、ちゃんと説明して欲しい」
「もう、仕方ないなぁ~」

衛は鈍いと言われ、素直に何故自分なのか聞くことにした。

「タキシード仮面様の必殺技は薔薇だからだよ」
「ああ、言われてみればそうだったな」
「でしょ?だから薔薇はまもちゃん」

説明しながらもうさぎはうっとりしていた。
そして、花瓶から一輪薔薇を手にするうさぎ。

「この薔薇が、どれだけ私が安心したか分かる?」
「ただの薔薇なのにか?」
「ただの薔薇じゃないもん!私にとっては、勇気のしょーちょーだもん( ー̀ н ー́ )」

ただの薔薇呼ばわりされたうさぎは、膨れて見せた。馬鹿にされ、少し気分を害したようだ。

「ごめんごめん!そんなに勇気を貰っていたのか?」
「うん!戦いでね、この薔薇が飛んで来たらタキシード仮面様が来た証拠だから」

うっとりしながら持っていた薔薇を胸の中へと抱き締める。まるで薔薇自身に恋をしているようだ。

「そうやって認識してもらえて、嬉しいよ」

うさぎがそんなに薔薇にタキシード仮面を重ねていたとは思わず、衛は何だか嬉しく思った。

「認識するよ?だって、初めて助けて貰った時も薔薇が飛んできたもん!」
「そうだったな。でも、飛ばしただけで手は出てないぞ」
「“泣いているばかりでは、何も解決しないぞ”って叱咤激励してくれた。びっくりしたけど、助けてくれて嬉しかったんだ。あの時から私、タキシード仮面に恋したんだ。一目惚れ♡」

初めての戦いで右も左も分からない。怖い敵との戦いの中、助けられた。吊り橋効果も手伝っての事だろう。
うさぎからすると、無償で助けに来てくれるなぞの仮面の戦士に、知りたいと言う気持ちもあり、惹かれたのは自然の事だった。

「それからも毎回薔薇を投げては助けてくれて。もう、気になってどんどん好きな気持ちが大きくなっちゃったの。前にも聞いたけど、改めて聞いていい?」
「なんだい?」
「どうしていつも助けてくれていたの?」

前にピンチになった時にセーラームーンからされた質問だった。
あの時は、無性に熱き血が騒ぎ助けたくなると答えた。それは、まだ自身がタキシード仮面と地場衛がリンクしていなかったから、そう答えるだけで精一杯だった。
戦いが終わり、平和になった今振り返るとあの時は何故助けたのだろう。うさぎが聞きたいのはそういう事だろうと衛は考えた。

「初めての時は好奇心とか興味本位だったと思う。でも、いつも怖がりながら戦うセーラームーンを助けたいと、そんな気持ちに、ほっとけないと思って体が動いてたんだと思う」
「そっか……」

衛の説明の中で、“好きだから”と言う単語がなかったことにうさぎは気付き、ガッカリしてしまった。
助ける方と、助けられる側ではここまで気持ちが違うのかと改めて現実を突きつけられた形だ。

「きっと、心の中にセーラームーンがいて、気を引きたかったのかな?」
「薔薇の技で?」
「ハハハ、薔薇の技で」
「でも、どうして薔薇だったの?」

薔薇に異論は無いが、何故なのか知りたくなった。

「それは俺もあまり深く考えてなかったんだが、事故で入院していた時にうさこが薔薇を一輪くれた事があったろ?」
「あ、進悟が産まれたお祝いに買ってた花束からあげたんだよね」
「そう、それ!潜在的に覚えていたのかな?薔薇で気づいて欲しかった。なんてな?」
「薔薇は私たちの恋のキューピットだね♡」
「みたいなもんだな。それと……」

うさぎと衛は、昔幼い時に会っていた。その時は又こうして再会して恋人になるとは思ってもいなかった。
それにあの時とは立場がまるで逆になっていた。うさぎと会ったあの日、衛は泣いていて、自分より年下の女の子に“泣いちゃダメだよ”と言われた。
しかし、年月が経った今はうさぎの方がまだまだ泣き虫だ。
今振り返るとそんな誰にでも優しく接してくれる小さなうさぎに、恋をしていたのかもしれない。あの頃は気付けなかった初恋。

「それと?」
「薔薇には棘があるだろ?」
「あるね」
「投げて刺さりやすいと思ったんだ」
「なるほどぉ~、確かに刺さってた!」

うさぎはタキシード仮面が投げた薔薇がいつも地面に刺さっていたことを思い返していた。

「でも、地面に刺さるってよっぽど力強く投げないと無理じゃない?どんなイリュージョン使ってるの?」

いつも刺さる地面は硬い。それは流石のうさぎでも分かる。
そんな地面に毎回少なくとも五センチ程折れずに元気よく刺さっていた。余程の力や魔法を使わなければきっと刺さらない。
一体、どんな仕組みなのだろうとうさぎは疑問に思った。

「それに、コントロールも凄く良いよね?百発百中で飛ばしたいところに命中してた!」

力だけでは無い。タキシード仮面の薔薇の命中率は100%。必ず敵に当たっていた。
力とコントロールの両方のスキルを発揮するのは並大抵ではないはず。

「あとあと!」
「待て待て、うさこ!落ち着けって!」

強さの秘密を知りたいと思う余りうさぎは、興奮して早口になっていた。息も荒く、興奮のあまり立ち上がっていた。

「これが、落ち着いてられますかって!」
「秘密、教えてやるからこっち来いって」

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