それぞれの道


「ひかるちゃん、あのね……?」
「高校は別々になっちゃうよね、きっと」

どう切り出そうかとしていたらひかるちゃんから軽くマウントを取られた。
うーん、まぁ……そーだよね?
私の成績からしてもひかるちゃんが合わせてわざわざ偏差値低い学校に行って将来不利になる必要性無いもんね……。

「そーなるよね、多分……」

行先はそれぞれに違うこと、初めから分かってたことだったけど、いざひかるちゃんから直接その言葉を聞くとやっぱり寂しい。

「最近よく話してる違う学校の子達と同じ高校に行くんでしょ?」
「え?」

驚いた。やっぱり色々見透かされてる?
でも、まだ今の段階で進路や受験勉強の事は4人と話せてなかったから私一人が漠然と“一緒の高校に行けたらいいな~”って考えていただけだった。
やっぱりうさぎを近くで護るには同じ学校の方が安心だし何かと都合がいい。亜美ちゃんやまこちゃんを見ててそう感じたし、リーダーだし、影武者だし、お陰でうさぎとおツムも同じレベルだしぃ……トホホ。
亜美ちゃんは頭がいいから違う学校かもしれないけど、同じく同レベルのまこちゃんと2人ならうさぎをがっちり護れそう。
レイちゃんは狡いエスカレーター式だからそのままTA女学院よねぇ~。

「微妙な反応ね?違うの?」
「いや、違うって言うか……私はそのつもりでいるけど、まだ話せてないんだよね」
「そうなんだ。まぁどの学校に行くかはこれから成績次第で変わってきたりするからねぇ。ゆっくり決めればいいんじゃないかな」
「でも今週末までに進路希望調査票出さなきゃじゃない」
「第1回だから、先生が把握しておきたいだけでそんなに深くしっかり書く必要無いと思うわよ?そりゃあちゃんと決まってたらそれに越したことはないけど」
「ひかるちゃんは進路決まってるの?」
「大体はね」

そう言って言ってきた高校は普通よりレベルが高い学校だった。……やっぱりどう転んでも同じ高校には行けないと絶望した。
ひかるちゃん、ずっと塾通ってるもんなぁ~。
同じアイドル好きなのに頭の良さは全く違う。レベチに今更凹むわ。

「やっぱりひかるちゃんとは別々になっちゃうのね……うぅぅぅ残念!」

いつまでも同じじゃないって初めから分かってはいたものの、現実を突きつけられて一気に寂しくなった。

「本当、遅刻したりそそっかしくて騒がしい美奈と別々の高校は寂しいわ」
「ひかるちゃん……。別々の高校に行っても私たち、ずっと仲のいい親友よ!」
「美奈……うん!ずっと親友よ!」

この言葉は心からの本心だった。
ひかるちゃんとは鹿が合うし、アイドルの追っかけやたわいも無い話をこれからもずっとしていきたいと思っていたから。
うさぎやレイちゃん達も親友だけど、やっぱり前世からの腐れ縁と言うか運命共同体って感じで親友であり、戦友でもあるからどうしたって戦いが付き物になってしまう。

その点、ひかるちゃんとはそーゆーの関係なくホッとできて日常を感じられる安らげる場所だとセーラーVになった時から思っていた。
ひかるちゃんは私の癒しのオアシスで、戦士の私には必要な居場所になっていた。

「良かった。親友って言って貰えて」
「どうして?ずっとひかるちゃんは私の1番の親友だよ?」
「……うん、上手く言えないんだけどね?美奈が遠い知らない所に行っちゃうんじゃないかって不安に思ってたから……。違う学校の子達とも仲良くしてるし。美奈が時々知らない人みたいに見えてたりしたんだよね。でも、美奈は美奈だった!私、おかしいよね?」
「ひかるちゃん……ううん、そんな事ない!実は私、前世の記憶があってね?それで色々あって…」
「そっか……だから知らない人に見える事があったんだね。ありがとう、話してくれて」
「ひかるちゃん……」

勘のいい子だから“前世の記憶”それだけで何となく察してくれたみたいで、詳しく言わないでいい様に汲み取ってくれた。
それ以上は多分言えなかっただろうし、ひかるちゃん自身も聞きたくなかったと思う。ーー聞いてしまうと後戻り出来ないと察したんだと思う。
それに私たちの間にはこのやり取りで十分だとお互い感じていた。

この先もよっぽどの事が無い限りは詳しくは話さないと思う。
けど、ひかるちゃんは大切な大親友で私の居場所。これからもそれはずっと変わらない。

“よっぽどの事”、この前のブラックムーンとの戦いで見たあの未来。
うさぎはクイーンに、まもちゃんはキングになってこの地球(ほし)を治める未来がもしこの先あれば、色んな人に本当の事を言わなきゃ行けないだろうな……。
それ以外の“よっぽどの事”が今の私には思いつかないけど。
戦いがあれば死と隣り合わせでよっぽどの事と言えばそうなんだけど、死んだら終わりだから考えないでおこう。

「ひかるちゃんはずっと何があっても私の大切な大好きな親友だよ!」
「美奈、ありがとう!ずっと親友でいようね!」


この日はそんなこんなで何となく私が人とは違う事、ひかるちゃんとはずっと親友である事を確かめて終わった。
でも私たちにはそれで十分だった。
全て打ち明けて余計な心配をさせたくないし、して欲しくない。巻き込みたくないもんね。

これまでのモヤモヤした胸のつかえがスっと取れたみたいにとてもスッキリした有意義な時間だった。




おわり


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