アル美奈SSログ
『女の敵は女!(アル美奈)』
夜中。耳元が騒がしくて目を覚ます。
嫌ぁな音に不快感を露にする。
この音は。この音の正体はーー
「もう!うるっさーーーーーい!!!」
「ニャ?」
そいつの正体は蚊。夏の風物詩の一つ。
思わず叫ぶと、私の部屋でスヤスヤ寝ていたアルテミスも驚いて声を上げる。
「蚊よ、蚊!アルテミス!」
起こした事を悪いとは思わず、大絶叫に至った奴の名前を叫ぶ。
私の周りばかり飛び回っているのか。アルテミスは涼しい顔をしていて、それがかえって余計神経を逆撫でする。私とアルテミスは運命共同体!一人だけ寝るなんて許さない!
「かっゆーーーーーい!!!!!」
再びの絶叫。時既に遅く、もう数箇所刺されていたみたい。
日本の夏は暑い。若い私は露出をして、布団もろくにかけず寝ていた。そこを付け込まれたみたい。
「一体、どこにいるのよ!」
ここでようやく私は部屋の電気を付ける。
いると分かってしまった以上は、殺さない限り寝られない。
戦士として培った視力を武器に、小さい蚊を探す。
眠気まなこのアルテミスを見ると、奴がいた!
パーーーーーン!!!
「痛ってぇ!美奈がぶった!」
「あんたの頭に止まってたのよ!感謝しなさいよ。と言っても、止まってる時点で吸われてるから痒いと思うけど(笑)」
そう。止まったら終わり。待った無しに皮膚が膨れて痒くなる。
掌を広げて叩いた蚊を見る。血がベッタリと着いていた。
「はぁーー。やっぱり、相当吸ってやがったか、コイツ」
身体のあちこちが痒いし、アルテミスも今しがた刺されたわけだし。
アルテミスを見ると、叩いた所に血が着いていた。白猫だから目立つ。何よりこれ、取れないでしょ?
「アルテミス、血が付いてるわよ」
「美奈が俺の身体で仕留めるからだろ?」
「叩きやすい所にいたからチャンスだったのよ。それより刺されたのはどのくらい?」
「美奈がご丁寧に叩いてくれたところだけだ。痛いし痒い」
「なぁんですってぇ!」
アルテミスは一箇所だけ。それにひきかえ私は十箇所程刺されている。
血を吸うのはメスの蚊だけって聞いているのに、何で異性のアルテミスより同性の私の方が刺されてる数が多いわけ?
納得できないんだけど!
「メスが吸うんだからアルテミスの方が多いんじゃ無いの?」
「美奈は血の気が多くて、血気盛んだからじゃない?」
「アルテミスは太古の昔から一回も死んでないし、おっさんだからか?」
「誰がおっさんだ!」
「私は若いから美味しいのかも」
「ま、それはあるかもな。血もいっぱいありそうだし、また献血でもしたら?ジュース貰えるし、美奈ももう17だろ?」
「そー言えば、献血スタンプ後一つでいっぱいだっけ?」
蚊に吸われて痒くなって損しかしないなら、献血してジュース貰う方がずっと有意義よね。
セーラーV時代以来、献血スタンプは出番を無くし、財布の中で眠っていた。
「偉い偉い!美奈も四年も経てば大人になるもんだな」
献血カードを見て前向きになっている私にアルテミスは満足そうに微笑む。
「それにしても痒い……」
次に私は鏡を手にしていた。刺された箇所を確認する。
「うっわー、最悪!鎖骨に三箇所も……」
「勘違いされそうなところだよな。アハハ」
「他人事だと思って!」
「他人事だしな。ま、精々浮気と疑われない様にする事だな!」
アイツの嫉妬する顔を思い浮かべ、私は気分が下がりながら再び眠りについた。
おわり
20230811