アル美奈SSログ


『無責任ヒロイン(アル美奈)』

「美奈、綺麗な満月だよ」
それもそのはず、今日は中秋の名月。所謂、月見だ。
美奈にあげたコンパクトをこの満月に翳して欲しくて見るように話しかける。
「あっそ、良かったね?」
全く興味無いと言わんばかりに上の空。
漫画を熱心に読んで馬鹿笑いの繰り返し。
少しは戦士の自覚や学生としての本分を自覚して欲しい。
「美奈、俺が言ったこと、覚えてないの?」
「何の話?」
「はぁー」
深いため息をついて呆れてしまう。
「コンパクトは?充電、して欲しいんだけど!」
「ああ、忘れてた!」
ごめんごめんと言いながらコンパクトを満月に翳す。
「ったく、戦士の自覚無さすぎ!」
こんな無責任ヒロインが月のプリンセスを護るリーダーだなんて。信じられない。
前世の欠片も持ち合わせてない。
本当にセーラーヴィーナスその人か?と疑いたくなるレベル。
「だから今充電してるでしょ?」
「今日は中秋の名月で1年で1番月が綺麗な日なんだぞ!」
「だから何?」
「満月はそんなに珍しい事じゃないけど、中秋の名月は年に1回だ。この時の満月に充電するとより強い力になるんだ。次の戦いできっと実力以上の力が出るよ!」
「へぇーそーなんだ」
分かっているのかいないのか?よく分からない乾いた返事に不安になる。
「何か思い出さないか?」
ボーッと月を見る美奈に、期待はしていないが聞いてみる。
「あっ!思い出した!」
「何?何を思い出したんだ?」
前世の記憶が蘇ったのかと期待したが。
「いっけない!月見バーガー食べなきゃ!」
「にゃ?」
期待してなかったけど、まさか食い意地が勝つなんて……。
「俺の心、美奈子知らずだな……」
「まぁまぁアルテミス、美奈子も頑張ってるんだ。気長に待とう」
「……ボス、他人事だと思って」
まるで他人事なボスにも呆れる。
「バレたか?私も見守っている。頑張れ、アルテミス」
「言われなくても、頑張ります」
美奈が前世の記憶が蘇るのはいつになるだろう?
そしてルナ、君に逢える日はいつになるだろう……。
早く会いたいな、ルナにも、プリンセスにも。そして、勿論、みんなにも。




おわり

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