二年一組の名物カップル
そしてあっという間に夏休み。
残念ながら2人の家も連絡先も知らない俺は、つまらない夏休みを過ごしていた。
そんな中、偶然街中で2人が一緒にいる所を目撃する。
相変わらず喧嘩をしているようで、夏の暑い日に良くやるよと思って遠くから見守っていた。
そして二学期が開始された。
再び席替えがあり、今度は月野が前で地場が後ろになった。
ただ、相変わらず仲は悪い様で、何かと揉めている。
「何でまた席が近いの?」
「文句あるのか?今度はお前が前だから黒板見やすいだろ?これで二学期は!いい成績取れそうで良かったな?」
「二学期は!って強調したわね!一学期も赤点取ら無かったもん!」
「威張ることか?当たり前の事だろ!」
頭がいい地場はどんな言葉も直ぐに正論で論破する。
その為か、余計月野はムキになり言い争いが起こる。
こうして二学期の始めまでは喧嘩を繰り広げていた。
そうしてずっと喧嘩をしていた2人だが、ある日、いきなりラブラブっと2人で教室に入ってきた。
最初は当然状況なんて把握出来るはずもなく、俺を筆頭にクラスメイト全員がポカーンとしていた。
そして休み時間、あのクールな地場の一言により更に驚く。
「俺たち付き合ってるから、うさこには手を出すなよ!」
事実上の交際宣言である。
こんな事言う奴だとは思わなかったから驚いた。
本当に昨日まで喧嘩をしていたからなおのこと。
夢か?夢でも見てるのか?と疑って、頬っぺをつねるなど、ベタな事をして確かめるに至った程。……結果、無事痛かったから現実と確認できたけど、にわかには信じられない話だった。
……って、うさこ?うさこって言った?何だよその結構可愛い呼び名?地場、マジ可愛いな!
まぁ何にしろ、地場を同性愛者と疑っていたが、彼女が出来た。この事実に、ちゃんと異性愛者である事が証明され、ホッとした。
そして瞬く間に「あの学校一のイケメンに恋人が出来た」と言う噂が学校中を駆け巡った。
そのせいでで多くの女子生徒がとてもショックを受け、地場衛ロスが起きてしまい、学校を何日も休むと言う事件が起き、先生達は頭を抱えていた。(余談だが、先生も理由は知っていて、「そんな事で休むなら落第させる!」と半ば無理矢理説得して登校させたらしいと噂で聞いた)
きっと彼女達にとったら、俺みたく同性愛者か一生彼女作らないで欲しかったのだろうと不憫になる。
いつかは彼女は出来るし、誰かが幸せになれば誰かが不幸になるのはどこでも同じ。
強く生きろよ、地場衛ガールズ達よ。
次に俺が危惧したのは月野をいじめる地場衛ガールズがいるだろうこと。
ノーマークの、まるで何の変哲もない普通の女の子が、学年、いや、学校一のイケメンモテ男を射止めたのだから。妬み嫉みで心無い事をして来る輩がいると予想した。
しかし、何故だか全くそんな気配など無く、拍子抜けしてしまった。
後で分かったことだが、月野はみんなに分け隔て無く優しくしていて、評判がいいらしい。それこそ女にも男にも。
何より付き合い始めてからずっと地場と月野はどこに行くにもベッタリのラブラブ。
月野に何かしたくても、地場がいては自分の価値を下げると女生徒も分かっているからかても出せないのだろう。
ラブラブを見せつけられる挙句、怒りの矛先も向ける所を見失い、何とも可哀想だな。
そして、そんな月野もまた男子生徒からもモテている事が判明した。
実際、同クラの奴も告ったらしいし、何人かがちょっかい出してるのも何度か見かけた事がある。
ははぁん、なるほど!それを知ってて地場はあの時宣言したんだな?
頭いいし、計算高いなぁ。
牽制の意味も込められてるとなると話は別だな。
あんなに喧嘩していたのに、月野の事、めっちゃ好きじゃねぇかよ!
でも安心しろよ、地場。学年、いや地球一イケメンなお前が彼氏になった事実で、みんな戦意喪失。強いては諦めざるを得なかった連中ばかりだから、わざわざ宣言して牽制しなくとも大丈夫だって!と軽く考えていた。