恋するうさぎちゃん♡


『硝子の少年』



雨が降るこの場所でフッと目覚めた俺は、周りを見渡した。覚えのない場所に立っている。ここは、どこだ?
視線を前へと向けるとセレニティに似ている彼女が、誰かに抱かれて腕の中で微笑んでいた。
セレニティに似てはいるが、その彼女は風貌が何処か違っていて。大人びた顔つきに、金髪の髪を靡かせている。

戸惑って立ち尽くして見ている俺の事など見えていないようで。2人の世界を作っていて、前を歩き続けていた。
男の背中に手を回した左指を見ると、そこにはキラリと光る指輪がはめられていた。そんな小さな石で、未来を共にする決意をしているなんて……と胸が締め付けられた。
そんな俺の心はひび割れた水晶のようだ。
覗き込めば君が逆さまに映って見える。

ずっと俺のそばにいて欲しい。
禁忌を犯していても、俺にはセレニティだけが心の拠り所で、全てだった。
そんな硝子の少年時代の破片が胸へと突き刺さり、胸が痛む。
そこら辺に転がる石を蹴っ飛ばし、遠ざかって行くセレニティに瓜二つの別人の彼女に背を向ける。


会える日は貴重で、もう会えないかもしれない。そんな覚悟であっていた。
互いの愛を確かめるように夢中でキスをしたり、唇が腫れるほど愛を囁きあった。
絹のような銀の髪に、俺の知らない色香。
未来は無いと予感した。余所行きの顔。

嘘をつく時、目線をそらすその癖が、遠く離れて行く愛を悟った。
ずっと俺の傍にいてくれ!
その想いは、虚しく儚く消えて行くことを思い知った。

セレニティと過した日々が、思い出達だけ横切って行く。
痛みがあるから、前を向いて進んで行き輝ける。
青い日々がキラリ、駆け抜けて行く。

俺の心に、ひび割れた水晶だ。
覗き込めば、セレニティに似た君が逆さまに映る。
ずっと俺の傍にいてくれ!
セレニティと私語した日々が、走馬燈のように横切って行く。
痛みがあるから、前を向いて進んで行き未来が信じられるのかも知れない。

そんな美しい日々がキラリと輝く。
これからもずっと俺の傍にいて欲しい!
硝子の少年時代の破片が胸へと突き刺さる。
セレニティに瓜二つだった彼女の横にいた見知らぬ男。これは、きっと俺だ。あの2人は俺とセレニティの生まれ変わり。
そして、ここは未来の地球の生まれ変わった姿。
前世での報われない未来の無い恋が終わって、生まれ変わってまた誰からも祝福されて未来のある恋愛が始まったのだと悟る。

雲が切れて俺を照らし出す。
未来の無い恋愛は、生まれ変わると将来を約束できる関係性になれるから安心しろ。そう案に言っているかのような、澄んだ光が当たる。

セレニティ、君だけを愛してた。
これからもずっと……。
後にも先にも君だけ。
だから、この身が滅び生まれ変わったとしても、また君を愛したい。




おわり

2022.07.21発出

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