恋するうさぎちゃん♡


『進悟は見た』



学校からの帰り道に家路へと向かって歩いて自宅付近に差し掛かり、ふと前を見ると姉貴がいた。男と一緒だ。しかも腕を組んでいる。彼氏?マジか?
ボーッと2人のことを見ながら歩いていると見つめあったかと思えば顔が徐々に近づいていって、何とキスし始めた!
はい、彼氏確定!…っておいおいバカ姉貴、そんな道の真ん中で堂々と何してんだ?
誰か見てたらどうすんだよ?現に俺は見たぞ!見たくも無いのに見てしまったぞ!
常々周りが見えず不注意だとは思ってたけど、ここまでとは…。恋は盲目って奴か?俺にはまだ分かんねぇけど。

それにしても相手の男は大丈夫なんだろうか?
制服姿を見ると元麻布高校の制服じゃん!エリートじゃねぇか!そして男の俺から見てもイケメン…
かっこいい上にそんな頭のいい高校に通っていて、何でよりによってバカうさぎなんかと付き合ってんだ?疑問でしかない。
騙されてるんじゃないか?
そもそも会話が成立するのだろうか?
弟の俺ですら噛み合わない事が多々あるのに、他人のしかも超絶頭がいい高校に通う奴となんてちゃんと会話出来てるのかすら怪しい。
きっと男の言ってる事のほとんどはちんぷんかんぷんで何言ってるか理解出来ていないんだろうな。
そしてきっとからかわれてるに違いない!
バカが物珍しいとかそんなんだろ?

そしてうさぎはバカで純粋だからからかわれてることにも気付いてないに違いない。
我が姉ながら世話が焼ける。

そうこうしてるうちに男とさよならして去っていった。

「おい、バカ姉貴!今の誰だよ?」
「進悟、見てたの?」
「見たくもねぇのに目に入ってきたんだよ!彼氏か?」
「ん、まぁねぇ~」

左手で結ばれた髪を掻き揚げ、得意気にドヤ顔で肯定してきた。
最近様子が違うと思ってたのは彼氏が出来たからか?
だけどキスしてるの見ても本当に付き合ってるのか半信半疑だ。
そう思って浮かれているのはバカうさぎだけでアッチは違う可能性すらある。

うさぎは人との距離が近く、誰にでも心を許す所がある。長所であり短所だ。
それだけに心配になる。

「そいつ大丈夫なのかよ?」
「どういう意味よ?」
「遊ばれてんじゃないか?って事だよ!」
「まもちゃんはそんな人じゃないわよ!」
「何で分かるんだよ?そんな事分かんねぇじゃねぇか!」
「分かるわよ!私の事大事にしてくれるもん!」

はぁー(大きなため息)何を言ってもダメだ。
完全に言いくるめられてるし、うさぎがベタ惚れしてる。こりゃダメだ。何を言っても無駄な奴だ。

ってかサラッと言ってたけど、彼氏の事“まもちゃん”って呼んでるのか…。
なんだよそのニックネーム…。
“まもちゃん”の方は納得して受け入れてんのか?すげぇな…
馬鹿なうさぎと付き合ってるのもそうだけど、勉強して頭良すぎて逆に頭おかしくなってるんじゃないだろうか?
彼氏さん、大丈夫か?
うさぎといて成績落ちたりしないだろうか?
…って何で俺、騙してるかもしれないと疑ってる奴の心配してんだ?

うさぎの方は受験生でこれからが大変なのに恋にうつつを抜かしてて大丈夫なのか?
ただでさえバカなんだ。恋煩いなんかして何にも手につかないとか言って勉強も益々しなくなったらどうするんだ?
高校どこも受からず中卒が最終学歴なんて流石に笑えねぇし、恥ずかしくて人に言えねぇよ。

「まぁそう言う事にしといてやるよ」
「もう!いくら弟でもまもちゃんの事悪く言ったら打つよ!」
「いってぇ!ぶってから言うなよ!」
「あんたがまもちゃん疑うからでしょ!」
「疑うだろ?エリート校の奴とバカうさぎじゃ釣り合ってねぇもん。疑問しかない」
「失礼ね!確かに私はバカだけど…。今度合わせてあげるわよ」
「別にいいよ」
「ママにも会わせて欲しいって言われてるから、あんたもその場にいなさい!」
「俺の予定は無視か?」
「弟に拒否権は無し!姉の言うこと聞きなさい!将来の義兄さんになるんだから」
「はぁ?気がはえぇよ!」

結婚なんてまだまだ先だろうに、脳内花畑かよ?
確かにうさぎは来年で16歳になるから結婚出来るけど、相手の気持ちとかお互いの両親とか色々壁があるだろ?
ってか姉の言うことを聞かなきゃいけない決まりなんてないだろ?バックレてやる!
…でもちょっと気になる。
まぁ姉貴がそんなに会って欲しいって言うんなら、会ってやらなくはないけど?

「2人とも、玄関でなにやってるの?おやつあるから早く入ってらっしゃい!」
「はーい♪」

玄関先で喋っているとママが気付いて呼んできて話はそこでお開きになった。
うさぎは一目散におやつ目当てにさっさと家へ入っていってしまった。
こういうとこ子供だよな…。
俺も早く入ろう。今日のおやつはなんだろう…?







おわり

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