原作まもうさSSログ


「ペルセウス座流星群、綺麗だな」
「うん、そうだね」

まもちゃんの家でペルセウス座流星群を一緒に見あげていた。まもちゃんは流れ星を見て綺麗って言ったけれど、私は複雑な気持ちで同調する事しか出来なかった。

綺麗と言う言葉を言えなかった。綺麗だとは思う。神秘的だとも。
けれど、流れ星も今空でそのまま留まって輝き放っている星々はどれも一つ一つに私たちの様に星を護るセーラー戦士がいる。この輝きはその守護戦士が持つセーラークリスタルのおかげだと言う事を知ってしまったから。
その事をスターライツや火球皇女から教えて貰った。
その時初めて太陽系以外にもセーラー戦士がいることを知った。それぞれ、自分達の星を守る事に必死で、それぞれのやり方で守っていた事をギャラクシアとの戦いの前に知ってしまった。
もう、知らなかった頃の様に純粋に綺麗だとか素敵だと言う言葉で片付ける事なんて出来なかった。

この流れ星達は何処に行くんだろう。
キンモク星の人達の様に壮絶な戦いに故郷を後にして私に助けを求めに来たのかな?
それともギャラクシアの手下の様な敵が侵入して来たの?
太陽系には降り立たずただの通過点で、ギャラクシーコルドロンがある射手座Aスターに行って命燃え尽きるんだろうか?
この流れ星達がどんな目的でどこに向かうのかは私には分からない。どんな気持ちで流れているのかも計り知れない。どんな思いでいるのかも理解は出来ない。
けれど、どうか安らかでありますようにと願うばかりだ。行き着く先に救いや癒しがあればと思ってしまう。

“流れ星に願い事をすれば叶う”

そんな事を最初に言った人は誰なんだろう。珍しいから叶うと思って言い伝えられてきているけれど、流れ星は願い事なんて決して叶えてくれない。その事を私はよく知っている。

“まもちゃんがずっと一緒にいてくれますように”

あの流星雨の夜、留学が決まってしまっていたまもちゃんと離れたくなくてすがる思いで願った事は、叶わなかった。
長年の夢だった医者になる一歩であるアメリカ留学を取り消して傍にいるという選択をしてはくれなかった。
願いは虚しくまもちゃんは旅立っただけじゃなくて、目の前でクリスタルを奪われて消えてしまった。突然の事でなんにも出来なかった。

あの時、流れ星に一緒にいてくれるようになんて願ったからバチが当たったんだ。何にも知らずに流れ星に願ったからまもちゃんは私の目の前で……

流れ星の、星々の真実と運命を知った今は迂闊に流れ星に願うなんて出来ない。

「うさ、どうした?」

いつもははしゃいで口数が多い私が珍しく黙り込んでいるのを怪訝に思ったのか、まもちゃんが私の顔を心配して覗き込んで来た。

「泣いているのか?」
「……まもちゃん」

私は流れ星を見て感傷に浸り、いつの間にか涙を流していたみたいだ。自分でも気づかなかった涙に動揺する。
その涙をまもちゃんは右手の親指で優しく拭ってくれる。その行動に私はホッとして抱きついた。

「この流れ星達の事を考えていたら、自然と涙が零れ落ちていたの」

私は過去に思いを馳せて流れ星に感情移入していた事を話した。ギャラクシア戦で見聞きした事、感じた事を包み隠さず。
コルドロンから助かって地球に戻っても、私は暫くあの時の戦いの詳細を誰にも語れなかった。また生きて再会出来た。ただそれだけで充分だった。嬉しかった。思い出したくなかった。

けれど今なら。ペルセウス座流星群がある今なら言える。力を貰えると感じた。
まもちゃんがクリスタルを抜かれてからコルドロンで再会するまでのことを全て語って聞かせた。

「うさ……」

ちびちびに言われた“戦いは終わらない。それを背負っていくのは私だ”と言う言葉を聞いたまもちゃんは衝撃を受けていた。

「どんな運命を背負っていても、俺はそれでもずっとうさの傍で支えて行きたい。一緒に戦い、運命を乗り越えて一緒に背負って行く。俺たちはいつまでも一緒だ。例えどんな姿形になっても俺はうさを見つけ出すから!」

私が背負う過酷な運命に寄り添ってまもちゃんは支えると言ってくれた。いつまでも一緒だって。優しく抱きしめてくれた。
嬉しくて涙が止まらなくなって、まもちゃんの胸の中でずっと泣いていた。

「ありがとう、まもちゃん」
「俺たちは運命共同体だ。固い絆で結ばれている。うさだけに背負わせない」

そう、私とまもちゃんはずっと一緒に生きていくの。
前世に結ばれなかったセレニティとエンディミオンの為にも私とまもちゃんは幸せになる。絶対的な願い。

私たちはまだ学生で、結婚まではまだまだ長い時間がかかる。いつ結婚出来るかなんて分からない。
けれど、流れ星に願いなんかしなくてもまもちゃんと私はいつまでも一緒。それは確かだけど、不確かな未来だけれど、流れ星なんて無くても二人の気持ちは同じで変わらない。




おわり

20230813 ペルセウス座流星群

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