Eclipseの夜に
「うさはどこにも行かないよ?ずっとまもちゃんのそばにいるよ?終わったら、ね?お願い!」
「ズルいよ、うさ」
お願いには弱い衛。“終わったら”と言う言葉の破壊力に負けてしまった。
ただ、まだ終わった後にそんな余裕があればいいが……と言う不安は拭えない。
後ろから抱きしめ、しっかりうさぎをガードして皆既月食に挑む事にした。
出来ればこのまま何も無く無事皆既月食が終わりますようにと衛は自身のゴールデンクリスタルへとひっそり祈りを捧げた。
「苦しいよ、まもちゃん……」
「うさがこの皆既月食同様影になって消えてしまわないようにこうしていたい」
「大丈夫だよ!こんなに月が地球に接近してるんだもん!まもちゃんから離れたくないんだよ」
月と地球を自分達に重ね合わせる。
前世ではお互い憧れて止まなかった互いの星。
手が届かなかった美しい星。
どれだけ願っても手に入らない、一緒になる事が許されなかった前世。
今も絶対にうさぎと共に生きる人生を約束されている訳では無いけれど、うさぎが選んでくれるならばずっと一緒に生きて行きたい。そう思っていた。
「うさ、愛してる」
「まもちゃん……私も大好きよ」
イチャつきながら月を見ると皆既月食が始まったのか地球の影に隠れて黒くなり、部分的に欠けて行く。
そして同時に赤く染っていく月に今の自分達に重ね合わせる。
後ろからがっちり抱きしられ影になるうさぎが照れて赤くなっている。
「スーパーブラッドムーン、綺麗だな」
「神秘的だね~」
「うさも綺麗で神秘的だよ」
「もう、まもちゃんったらぁ~照れちゃう」
「神秘の戦士、だもんな?」
「流石はまもちゃん、上手いこと言う!」
「どんなうさも俺は大好きだし、永遠に一番美しく輝く星だと思ってる。例え離れ離れになっても絶対、見つけ出す!」
「ありがとう♪じゃあ頑張ってずっと美しく輝いていないとね!」
皆既月食を見ながら不安を打ち消す様に衛はうさぎに永遠の愛を誓っていた。
そんな事とは露ほども知らないうさぎは衛からの愛の告白に暖かい気持ちになり、胸の中の星を光り続けておかないとと決意していた。
イチャイチャしながら見ていたら天体ショーは無事終わりを迎えた。
デッドムーンの時とは違い、ひとまず無事終わり、衛は漸くホッとして抱きしめていたうさぎを離した。
「うさ、何ともないか?」
「ん?まもちゃんの愛で満たされたよ♪」
その能天気さに救われる衛。
「ならよかった。さ、さっきの続き、するか?」
そう言ってうさぎをお姫様抱っこして寝室へと向かい、ベッドへ下ろし、さぁこれから始めようとしたその時、うさぎからの一言に奈落の底に突き落とされた。
「まもちゃん、それが……その、とっても言い難いんだけど、ね?さっき言い忘れてたんだけど……」
「ん?何だ?」
「実は、私、生理……なの」
「え?なんて?」
「今、女の子の日だから、無理なの!ごめんね?」
「うそ、だろ?」
「本当なの……。ごめんなさい!」
「……そんな。俺のこれをどうすれば……」
まさに天国から地獄である。
スーパーブラッドムーン……
うさぎが誰かによって血を流すと思っていて外敵から警戒していた衛だが、月の物だったとは予想外だった。
「だってうさ、今月はまだのはずだろ?」
「そのハズだったんだケド、早まっちゃって……」
申し訳なさそうにうさぎは答える。
医者志望でうさぎの事は何でも把握していると自負している衛はうさぎの月経事情も完璧に把握している。
今回の様にやりたくても出来ないを避ける為、私利私欲の為である。
お陰で今までミスなくセイコウ(成功・性交)していた。
それだけに今回外れて出来ないことがこんなにも悔しいとは思いもしなかった。
「オアズケ、ツライ……」
「ごめんね、まもちゃん。終わったら好きなだけしてくれて良いからね!」
「いつ終わるんだ?」
「始まったばっかだから4日後くらいかな?」
「予約お願い致します!」
「了解しました!」
失意の衛は1つの望みをかけてうさぎに約束を取り付けた。
こうして2人とも何も無く無事皆既月食の日を終えたのであった。
END
2021.05.26
皆既月食&スーパーブラッドムーンの日