時を超えたプレゼント
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした。じゃあ次はプレゼントだね」
メインのプレゼントの包みを衛に手渡すうさぎ。
「はい、開けてみて♪」
「ありがとう」
うさぎからプレゼントを受け取った衛は、早速言われた通り包みを開ける。
すると、そこから思いもしないものが現れ、衛は驚く。
入っていたのは、文字がぎっしり書かれたA4の紙三枚。更に梱包された小さな箱のような固いもの。
「これは……“月の土地権利書”“月の地図”“土地所有権の宣言コピー”これって……」
「そう、月の土地だよ」
そう言ってにっこり笑ううさぎ。
「月の王国の血を引く前世のあたし、セレニティからのプレゼントです。勿論、月野うさぎであるあたしがあげたいプレゼントでもあるのよ」
「うさ……セレニティ……」
衛は言葉にならなかった。どう言葉にすればいいのか、分からなかったのだ。
「セレニティの時、ずっとエンディミオンに月に来て欲しいなって思ってたけど掟があって叶わなかったでしょ?いつかあたしが住んでいた月を、ゆっくり見て欲しいなって思ってたんだ」
「俺も、エンディミオン時代、随分と月へ憧れたよ」
「そうだったね」
「覚えてくれていたんだな」
「忘れるわけないよ」
行けないからこそ憧れる。前世での逢瀬での時、互いにそんな話をしていたことがあった。
お互いに一緒に過ごした時間と話した事は宝物のようにキラキラしていた。
「それにね、今はこうしてまもちゃんの地球に住ませてもらってるから。そのお返しでもあるの」
「何だよ、それ。うさは列記とした地球人だよ」
「そうなんだけど。ケジメ、みたいな?えへへぇ~」
前世は月の王国のプリンセス。そんな自分が今こうして地球に住めていることは奇跡だとうさぎは感じていた。
衛の方は、いかにもうさぎらしいと微笑ましくなった。
「その箱も開けてみて」
「そうだったな」
衛はもう一つのプレゼントを開けると、中にはブレスレットが入っていた。
「ムーンストーンのブレスレットだよ」
「これも月か」
「そう、ムーンストーンはあたしの誕生石でもあるの。だからあたしだと思って大切にしてね」
「ああ、ありがとう」
礼を言って、衛はムーンストーンのブレスレットを早速左腕に着けた。
するとうさぎは頬を染めて自身の左腕を上げて見せて来た。
「それって……」
「そ、実はオソロイで買ったの♡」
「お揃いか。嬉しいけど、何か照れるな」
「えへへぇ~~」
お互いのブレスレットを見て、うさぎも衛も照れ笑いする。
「それにしても、土地権利書と宣言書は分かるけど、地図がよく分からないな……」
「あたしは英語が読めないから分かんないや。アハハ」
月に土地勘のない衛。うさぎは英語が分からないと笑い合う二人。
「じゃあ、今から月に行っちゃう?」
「はあ?」
うさぎの唐突な提案に完全に置いてけぼりを食らい、驚く。
「どこか分かんないなら行って確かめるのが一番!ほら、百聞は一見にしかずってゆーじゃん!」
決まり!とうさぎは善は急げと言わんばかりに立ち上がる。
そして、鞄の中から銀水晶が入った変身コンパクトを取り出す。いつも、いつ何があってもいい様に携帯している。
「行くよ、まもちゃん!」
「うさ、本気か?」
「本気も本気!まもちゃんもゴールデンクリスタル一応持ってね」
「ああ」
こうしてうさぎに押し切られるまま、月へと行く事になった衛。
残りのケーキを冷蔵庫に入れクーラーのスイッチを切り、飲み食いしていた食器類を炊事場に置き、月の地図を持ちゴールデンクリスタルを用意する。
うさぎと玄関に行き、靴を履く。手を繋ぎ、うさぎは銀水晶を取り出す。
「月へ!」
そううさぎが言うと、銀水晶は光り輝き二人を包む。同時にその場から姿を消す衛とうさぎ。