原作まもうさSSログ
衛の誕生日前世の夜、うさぎは0時と同時に直接祝いの言葉を伝えたいと衛のマンションへと来ていた。
部屋の中にいても分かるくらいいつもより外が明るい事にうさぎは気づく。
「わぁー、満月だよ、まもちゃん!」
気になりベランダの外に出ると、満月で思わず感嘆の声を上げ、衛を呼ぶ。呼ばれた衛もベランダに出てうさぎの横に並ぶ。
「本当だ。綺麗だな」
満月を見た衛は素直な感想を漏らした。
「幸せだねぇ~」
「え?」
「こうして二人で月を眺められている事が」
「ああ、そうだな」
「もうあそこに帰らなきゃいけないって思わなくていいって。ずっとまもちゃんと一緒にいられる未来があるって幸せ」
「うさ……」
前世、ここで眺める月は帰らないといけない場所として現実を突きつけて来るだけの切ない光だった。
エンディミオンとの未来は無い。その事をまざまざと見せつけられていた。
「俺も、あそこに帰したくないってずっと思っていた」
「まもちゃん……」
「今も不安だけどな」
衛も又、うさぎと同じ気持ちでいた。
月に帰ってしまえば次はないのでは無いか?
そんな不安と常に戦ってきた。
帰したくない。帰らないで欲しい。
何度心の中で叫んだか。
「まもちゃん……私はもう月には帰らないよ!」
うさぎは衛に力強く言葉を発する。
衛の不安が払拭されるように。
「ああ、だけど銀水晶があるからいざとなると行けるだろ?」
「行ってもすぐ帰るし、行く時は絶対まもちゃんと一緒に行くから心配はいらないよ!今はまもちゃんがいるここが私の居場所だもん」
「そう……だよな」
天涯孤独だった衛は、どうしても物事を暗くネガティブに考えてしまう。
うさぎの言葉に救われる。
「まもちゃんの誕生日の前日が満月なんて凄いよね~」
うさぎが笑顔で言葉を続ける。
「当日じゃない所がうさの守護星らしいけどな」
「もー、まもちゃん!どーゆー意味よ、それ?」
「深い意味は無いさ」
「むう!……きっと、セレニティもエンディミオンの生まれ変わりのまもちゃんを祝いたかったのかもね」
「前日に?」
「もう過去の人だから、今の私に遠慮して前日に満月の演出をしたのかもしれないよ」
「単に俺の誕生日を知らないだけだろ?」
「そんな事無いよ!きっと知ってる。おめでとうって言いたくて光り輝いているんだよ」
「時を超えた、セレニティからのメッセージか。ありがとう、セレニティ」
満月から放たれる輝く光はセレニティからの時を超えたメッセージなのだろうか。
衛とうさぎは日付けが変わるまでずっと二人で月に祈っていた。
おわり
20230802 フルムーン