誕生日に向けて


翌日、土曜日で学校は休みだが亜美達と勉強会がある為、まことの家へと向かった。
勉強に身が入らず、ボーッとしては溜息の繰り返しに、無視を決め込んでいた4人だが、根負けしてしまい亜美が喝を入れる。

「うさぎちゃん!さっきから全く進んでないけど、どうしたの?」

聞かれたうさぎは、待ってました!と言わんばかりの顔をするが、美奈子達3人はとうとう聞いてしまったわね?と言わんばかりの苦い顔をした。

「聞いてよみんな!あのね、昨日まもちゃんと夏休みの計画してたんだけど、まもちゃん、誕生日に学校の勉強合宿があるからいないんだって……」

昨日の出来事を端的に話すうさぎ。
まことと美奈子はその話を聞いた途端、苦虫を噛んだような嫌な顔をした。

「勉強合宿?何そのつまんなそうな合宿……」

信じらんな~いと美奈子はゲンナリする。

「一日中勉強だけをする合宿みたい」
「そのまんまだな……」
「進学校ならそういうのあるって聞いてたけど、実際あるのね?」
「レイちゃんところも進学校だろ?ないのか?」
「高校からはあるみたい」
「“勉強合宿”何て素敵な響きなのかしら!」

ゲンナリしている面々を他所に勉強の鬼、亜美はキラキラした顔で食い付いてきた。
やはり、と言った感じである。

「一日中勉強だけが出来る環境下が用意されてるなんて、願ってもない事だわ!素晴らしいわ♪」

いかにも亜美が好きそうなイベントである。

「羨ましいって顔してるわね、亜美ちゃん……」

勉強が大嫌いな美奈子はその顔を見て引いていた。

「美奈、私たち、受験生なんだからどれだけしたって充分すぎるってことは無いのよ!うさぎちゃん、衛さんが行ってる間はまた勉強に集中出来るチャンスよ!」

亜美は分かっていた。衛がうさぎの勉強の妨げになっている事を。
夏休みと言えど受験が控えている為、遊ぶための長期休暇ではない。
勉強して志望校に合格出来るよう努力する為に設けられた夏休みだと亜美は思っていあた。
その思いとは裏腹にうさぎはやはり衛と遊ぶため、ラブラブする為の夏休みだと喜んでいた。

「うっ!やっぱり勉強しなきゃいけないのね……」
「あーー聞こえない!聞こえない!聞こえない!聞こえない!聞こえないーー!」

現実と向き合おうとするうさぎに対して美奈子は耳を塞ぎ、現実逃避を始める。

「美奈!私も塾がほぼ毎日あるから変わらず週一回の勉強会だけど、ちゃんと勉強しなさいよ?分からなければアルテミスに聞くのもいいかもね!」
「何て世知辛い世の中なの……。アルテミスなんて猫じゃない!猫に聞くなんて、人としてのプライドが許さない!」
「でも確かに美奈よりは全然頭良いよな!」
「まこちゃん酷い!まこちゃんだって似た様な物だと思うけど?」
「美奈よりはマシさ」
「2人とも、そういうのをどんぐりの背比べって言うのよ!」

亜美のキツい一言で賑やかな会話は止まり、勉強が強制的に再開されることになった。
勉強しながら各々(亜美が私たちも勉強合宿しましょう)と言ってこなくて良かったと心の中でホッと一安心していた。

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