Eclipseの夜に


今日はスーパームーンの皆既月食。
うさぎは数日前から大はしゃぎで楽しみにしていた。
いつもの如く一緒に見ようと衛と約束し、この日が来ることを今か今かとワクワクしていた。
衛もそんなうさぎの姿を見て微笑ましく思っていた。

一方で少し不安にもなっていた。
前回の皆既日食の時はペガサスを見たのをきっかけに、デッドムーンの船が侵略、そして胸がチクリと痛くなった。
そこから一気に悪夢の始まりだったから今回も……。
いや、そう何回もありはしないだろうし、あってたまるかと言う気持ちだが、色んな修羅場を経験した結果、重く暗い方向に考え過ぎる癖が出来てしまっていた。ーー戦士の性って奴だろうか?厄介な癖である。

そんな衛とは真逆に、うさぎはマイペースを保ち、呑気に楽しみにしている。それでいい。
何の不安もなくそのまま明るく過ごして欲しい。それが衛の想いだった。
本来、守られる立場にあり、前世では戦いとは無縁の優しいプリンセスだったのだから。
しかし、戦士として目覚めた為、常に先頭に立って最前線で戦う事がプリンセスに覚醒した後も当たり前になってしまっていた。
良くないことと思いながらもやはり一番強い力を持つがゆえ、どうしても頼りにしてしまう。
いつかは彼女には戦士として戦う事を引退して貰わないとと言う想いがあった。
それはブラックムーンとの戦いの時に未来に行って自身の未来の姿であるキングエンディミオンから聞かされた言葉にもあった。
彼女の力を借りず、近い将来にはネオクイーンセレニティとしてこの星を守ると言う未来が必ず来るだろう。ーーそれは抗えない運命。
クイーンに一番近い力を持つと言われるエターナルセーラームーンとして1人で戦った事がきっと大きな引き金になっているはずだから。

「もうそろそろかなぁ?」

ベランダへ出て今か今かと皆既月食が始まるのを月を見ながらソワソワしているうさぎを見て、いつも通りだと衛はホッとした。

「ああ、そろそろ始まる時間だな」
「スーパームーンだから大きく見えるね!」
「そうだな。綺麗だな」
「でも、こんな大きい月が欠けるの?」
「いや、今回は色が変わるだけだよ。赤くなるんだ」
「そーなんだー。皆既日食とは違うんだね。その時によって違うって凄いね!楽しみ~」

相変わらずうさぎは空がもたらす不思議で幻想的な天体ショーを単純に楽しみにしている様子だった。
それを見て衛はホッと胸を撫で下ろす。
そう、このまま何も思わず目の前の天体ショーに思いを巡らせて楽しんでくれれば……そう願っていた。

「楽しみだな。こうしてうさと一緒に見られて、俺は幸せだ。うさとの想い出がまた1つ増えて行く」
「まもちゃん……」

2人の視線が熱くぶつかり重なる。
まだ始まらない皆既月食前のスーパームーンに見守られどちらともなく顔を近づけキスを交わす。
うさぎ的には軽いフレンチ・キス程度を想定していたが、衛は違っていた。
どうしても不吉そうな天体ショーを前に不安を拭えない。
うさぎがもうすぐ起こる天体ショーの様に恨んでいる敵にまた再び攻撃され、血塗られ惨劇が始まるのではないかと不安で気が気では無い。
自然と不安が深い口付けに変わる。

「ん、ふぁ~、まもちゃっ」

その先も欲しくなり、先を進めようと胸に手を伸ばすとうさぎに手を掴まれ少し我に返った。

「皆既月食、見たいよぅ」
「……俺は、うさが欲しい!」

うさぎの意志を尊重したいと思いつつも不安と欲望が止まらない。

「想い出が増えるって言ったのまもちゃんだよ?」

今にも泣きそうなうるうるした目で見つめられ、逆効果で理性が崩壊寸前だった。

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