トリセツ


付き合って少し経ったある日、うさこから手紙を渡された。

「ラブレター、書いてみたかったんだぁ~」

なんて無邪気に頬を赤らめて照れながら渡して来るから微笑ましくなりながら受け取った。
恥ずかしいからいない所で見て欲しいと言われたから、家に帰り一人になったところでこの手紙を開封した。
その内容に、一人の時で良かったと心底思った。

「何だこれ、可愛すぎるな」

手紙の内容が、うさこらしくて顔がニヤつく。こんな顔、学校のヤツらにもうさこにも見せられないな。
取説、か……。
上手いこと考えたよな、うさこのやつ。
これ、何気に結構助かるやつでは?

朝と放課後の遅刻は早速やらかしてたしな。
寝坊しても起こしてくれる環境だから、ついつい寝過ごしてしまうのだろう。俺は、誰にも迷惑かけられない環境だったから早起き必須だったし。勉強出来るのは医者になりたいから兎に角頑張るしか無かった。ずっと一人だった事も幸いして、集中出来てたのもある。

しかし、幾ら勉強苦手だからと言って手紙がほとんど平仮名なのは……
難しかったり、画数の多い漢字はほとんど平仮名か……
仕方がないとは言え、これはやはり酷いな。
でもまぁ、俺の事を思って頑張って書いてくれたのだから手紙にもあるように今回は大目に見てやるか。とか言って、本当にうさこを大目に見続けて甘やかしまくりそうな未来が見えるな。

確かにうさこの言う通り、まだまだ互いのほんの一部しか知らない。ほとんど何も知らない中で惹かれていったのは事実だが、ちゃんとうさこが好きだと胸を張って言える。

俺は、セーラームーンの様に強い力は持ち合わせてはいないが、うさこが傍にいて欲しいと言うなら力になりたいと思っている。
勿論、仲間がいるから俺は足でまといになるかもしれないが。

うさこにこの手紙をいつ書いたか聞いて、驚いた。
何と、学校の授業中に書いたと悪びれもせずに言ってのけたのだ。
勉強が苦手なのは仕方がない。せめてそれならば授業中だけは集中して受けて欲しいと切実に思った。

手紙は素直に嬉しかった。
付き合える事になったのも嬉しい。
平和が訪れたのもホッとしている。
これからうさこと毎日会えるのも、今までの俺の人生からすれば最高のプレゼントだ。

しかし、敵が襲ってこなくとも、うさこの成績が悪くてはきっとその内会えなくなる。
俺らを苦しめるのは、勉強。と言うオチにならない様にうさこには最善を尽くしてもらいたいものだ。

とは言え、うさこ手紙ありがとな!
そして、これからも末永くよろしく頼むよ。




おわり

20230710

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