星合いの二人、願いを込めて


一方俺たちは、親公認とはいかなかったし、神の掟に背いていたが逢いたい時に逢えた。
それでもクイーン・セレニティの慈悲深いお心で転生し、再びうさと会い、立場など気にせず愛し合う事が出来ている。当たり前では無いと分かっているからこそ有難みに身が引き締まる。

「もう七夕の話に前世を重ね合わせて切ない気持ちになる必要無くなるね!」
「ああ、未来は自分たちの手で切り開いて行けばいいんだ。もう悲しむ必要は無いよ」
「まもちゃんとこうしていつでも会えるもんね!」
「うさと出会えて幸せだよ」
「私もよ、まもちゃん」

見つめ合い、うさの誕生日の日以来の口付けをする。誰の文句も言われないゆっくりした時間の中でのキス、柔らかいうさの唇を堪能する。
キスを終えると外はいよいよ雨が本格的に降ってきていた。

「あぁ~雨、降ってきちゃったぁ~」
「結局は雨が降るってオチになるな……」
「まもちゃんと夏の大三角見たかったのにな……」
「梅雨が開けたら見ような」
「うん!あっ!まもちゃんの誕生日には真夏で雨も降らないから見られるね!」
「そうだな」

この間うさの誕生日を終えたばかりだが、もううさの頭の中には俺の誕生日に切り替えてくれていることが嬉しかった。
6歳で両親をなくし、そこから誕生日は嫌いなイベントになっていた。誰にも祝って貰えないばかりか、両親の命日……。この日に何の思い入れもない。
だけど、うさがこの日を大切に思ってくれていると知る事が出来て、とても胸が熱くなった。

「やっぱり織姫と彦星、今年も会えなそうかな?」
「きっと催涙雨だな」
「さいるいう?何それ?」
「諸説あるけど、年に一回の機会に会うことが出来ずに悲しむ織姫と彦星が流す涙と言われているんだ」
「まもちゃん、詳しいね!さっすがー♪」

余りにも色々知識をひけらかし過ぎて引かれないか心配だったが、あまり物事を知らないうさにとっては知らない事を知れてとても楽しいらしい。目を輝かせて俺の話を質問しながら聞いてくれる。普通ならつまらなくて嫌だと思うが、うさは最高の聞き手だ。

「サンキュー♪じゃあ最後にもう一つ!」
「何なにぃ?」
「星合って言葉は知ってるか?」
「ほしあい?知らない!どんな意味があるの?」
「年に一度、7月7日の夜に牽牛と織姫、ふたつの星が出会う、つまり七夕の事さ」
「うわぁ~ロマンティック♪」

七夕の知識を色々学んだうさはわけも分からず幼少期から悲しんでいた事を克服出来たようで、とても喜んでいた。
ただ、七夕に関しての知識を一気に詰め込みすぎてこの先の受験に響いてこないかが心配なところだったが……。

「星合かぁ……。前世の私たちもそうだったのかもね?」
「ああ、そうかもしれないな?でも今も星を守護に持っているから、そう言った意味ではずっと星合かもしれないぞ」
「言われてみれば……。でも私たちは今はいつでも会えるよ!」
「ただし、うさの成績が悪くなれば別の話だけどな?」
「もぉー、まもちゃんの意地悪ぅ!」
「ハハハ」

いつでも会えることがどれだけ貴重で当たり前な事ではないか、俺たちは知っている。それだけに今この瞬間も幸せな事だと噛み締めている。
つい先日もうさの成績が悪かった事により育子ママからの弊害で会えずにいた。だからこそ今こうして会えて嬉しいのだ。

「でも今年の私の短冊の願いはかなったもん♪」
「ちゃっかり短冊書いてたのか?」
「うん!勉強の息抜きにね!」
「で、何て書いたんだ?」
「“七夕はまもちゃんと会えますように”って。まもちゃんは?」
「俺は書いてない」
「えぇ?書かなきゃ勿体ないよ!」
「いや、叶った試しないし……」
「そっか……来年は一緒に書こうね?」
「ああ、そうだな」

当たり前のように来年の約束をしてくるうさ。
前世では出来なかった遠い未来の約束。
来年もうさは俺と一緒にいてくれるのかと思っただけで胸が温かくなる。
うさと一緒なら来年はどんな願いを書こうか?と考えながら過ごす未来も捨てたもんじゃないと思った。




END

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