愛情パラメーター(エンセレ)


一方のクンツァイトはヴィーナスの行動に怒り心頭になり、怒鳴りながら質問をする。

「ヴィーナス、一体これはどういうつもりだ?我がマスターを侮辱する行為だぞ!」
「あーらクンツァイト、随分と余裕が無いようね?私はただ、王子の我が姫君への愛がどれ程の物か試したかったのよ!」
「ほう、我がマスターを試したと?姫君への愛を疑っていた、そう言う事か?」
「そうよ、悪い?」
「我がマスターを欺く無礼、ヴィーナスと言えど侮辱する行為、許す事は出来ないな。覚悟するがいい!」

クンツァイトは無礼を働いたヴィーナスへ腰に装着していた剣を手にし、華麗に振り上げる。
それを慣れないドレス姿で少しぎこち無いが、こちらも華麗に避ける。

「王子が絡むと本当に見境なしね?こっちは慣れないドレス姿だと言うのに手加減なしだなんて…。紳士がする事じゃないわ!」

そんな事を言いながらもヴィーナスはどこか楽しそうに、そして側近のリーダーとしてこうでなくては、と心の中でクンツァイトを信頼を置いていた。
そして自身も護衛の為に持ってきていた剣を手にしてクンツァイトに向かって行った。

「貴様こそ剣を手に刃向かってくるとは、穏やかじゃないな?」

剣を交えながら近づき会話をする。

「何故私がプリンセスじゃないと分かったの?」
「全然似ていないぞ!逆に何故似ていると自信を持っていたんだ?」
「王宮中では双子と評判だったのよ!王子にもあんたにも瞬殺だったけどね…」
「こちらに向かってくる時、ドレスを着慣れていないのが遠くからでも歩き方に出ていたぞ」

まさかそんな盲点があったとは気付かず困惑した。
確かにドレスは年に数回着る程度で気慣れていない。
だが、だからと言って所作がなってないとは思ってもいなかった。
自分のドレスとプリンセスのドレスは少し勝手が違い、着心地はあまり良くないとは感じていた。
ただとても軽く、動きやすい素材で出来ているのか、軽やかに動けていただけにそれだけで見破られるとは思いもよらなかった。

「フッ次はもっと上手く化けて来るんだな?」
「望む所よ!またリベンジしに来るから、その時まで剣の腕磨いて待ってなさいよ!」
「貴様こそ剣の技、増やしておけ!」

キスをしてロマンティックな主君とは裏腹に、リーダーは敵意むき出しで剣を数度交えてこの日の逢瀬は終了した。
すぐにプリンセスでは無いと見抜かれた事が嬉しかったセレニティとは違い、とても悔しく、王子の姫への愛が本物と認めざるを得ない結果に釈然としないヴィーナスはまた絶対!リベンジしようと誓った。

今回、ヴィーナスが悔しかったのはクンツァイトまでもが何故か瞬時に見分けが着いた事だった。
とても不可解で、不思議だった。
その事を見送ってくれたジュピターに報告がてら話す事にした。

「どうだった?王子は欺けたかい?」
「…それがね?王子もクンツァイトもすぐに見破ったのよ?納得いかないわ…」
「逆にしてやられた、と…」
「王子の我が姫への愛は本物だったわ…認めざるを得ないじゃない!でもクンツァイトは何なの?リーダーとしての洞察力?怖いんだけど…」

落ち込みながら話すヴィーナスにジュピターはこの時思った。
王子と同じくクンツァイトもヴィーナスを深く愛しているのではないか?とー。




おわり

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