原作まもうさSSログ


『ずっと二人で……(まもうさ)』

都内の高級レストランの前にドレスアップした一組のカップルが今か今かとソワソワしながらも楽しそうに待っていた。
アラフォーとなりますます色気と博識さ、落ち着きを増した衛とアラサーだが中々落ち着きを見せないが人妻の色気が増したうさぎだ。

この日は結婚10周年の節目の日で、普段子供2人の面倒や家事を頑張っている愛妻に感謝を込めて少し背伸びをして2人で高級レストランでお祝いをしようと前もって予約をして、店に連れて来た。

子供はうさぎの実家の両親へお願いをしてきた。
笑顔で快諾して送り出してくれる2人からは今も尚幸せオーラが溢れていて、50代になっても仲が良くラブラブなうさぎの両親を見て衛もうさぎとずっとこんな風にいたいと理想の両親像を描いていた。

店への予約は18時だが、昼過ぎからうさぎとデートを兼ねて外出していたので早めに着いてしまい、店の前で待つに至った。

「まもちゃんと2人きりでデートなんて久々だったからちょー楽しかったよ」
「チビ達がいるし、俺も忙しくて相手してあげられないからな。ごめんな」
「全然大丈夫だよ♪毎年結婚記念日と誕生日祝ってくれるし、お仕事頑張ってくれてるから。しかも今回はこんな高級レストランで記念日迎えられるんだもん。うさは嬉しい」
「うさに喜んで貰えたらこっちも幸せだ」

今日のデートを振り返って話し込んでいたら丁度いい時間になり、店を入る事にした。
予約席に案内され座るとフレンチのコースとシャンパンをオーダーする。
普段は中々来ない店でうさぎも衛も落ち着かず気持ちがソワソワとしてしまう。

思えばここに至るまで色んなことがあった。
出会い方も中々にトリッキーで、30点の英語の答案用紙をぶつけられ、喧嘩を交わしたことから始まった。
その後は互いに正体を知らぬまま戦士として敵と戦いながらも惹かれ合い、実は前世で禁断の恋をしている仲だと発覚し、恋に落ちることは運命だったんだと思った。

次から次へと強敵が現れ、何度もピンチになりその中で気持ちがすれ違ったこともあったけれど、それでもうさへの強い想いがあったからその度に納得できるまで話し合い乗り越えてきた。

普通の日常を送る中でも些細な事で喧嘩をしてきたけど、それでもうさの事を誰より愛していたし、こんなどうしようも無い俺に愛想をつかさずずっと着いてきてくれたからこそで。

シャンパンで乾杯してフレンチを食べながらうさと昔の話で盛り上がる。

「まもちゃんに見せたいものがあったんだ」

出てきた手のひらの上には昔トレードしようと言ってそのまま保留になってしまっていた懐中時計が乗っていた。

「参ったなぁ」
「え?何で?」
「俺も持ってきてたんだ」

昔、舞踏会会場でうさが落としてしまい拾っていたハンカチを俺も持ってきていたから以心伝心かと思い驚いた。

「ハンカチ?」

うさに見せると驚いていた。
それもそうだ、トレードしようと約束した日、何とは言わなかったし、何よりハンカチを落としていた事も気づいてなかったはず。

「トレードしようって言ってた奴」
「ハンカチの事だったんだ~。全く知らなかった!いつ落としてたんだろ?」

不思議そうに考え込むがさっぱり分からなかったのか考えるのをすぐにやめてしまった。

「舞踏会の会場で落としたんだ」
「舞踏会?まもちゃんと踊った事以外記憶に無いや」

うさらしい答えに笑ってしまう。

「懐中時計、動いてるのか?」
「動いてるよ!ちゃんと定期的に電池替えてるし」

案外ちゃんとメンテナンスしてくれていたことに驚いたと同時に定期的に気にして見てくれていたことを悟り胸が熱くなる。

「これ、ずっと大切にしてたんだよ?もう1回留学行き直して離れ離れになった時もずっとこれ見てたの。懐中時計見るとまもちゃん思い出して頑張ろう!って乗り越えられたんだ」

少し寂しそうに、でもとても嬉しそうに懐中時計を見ながら語るうさに少なからず寂しい思いをさせていたことに胸が締め付けられた。
同時にあの時交換しなかったことが結果的に今の今までうさの心の支えになっていたと知り、トレードしなくてよかったと心から思った。

うさだけではない。少なからず俺自身もこのハンカチにとても励まされてきた。
何を隠そう俺も留学先に持って行きお守りにしていた。
うさを近くに感じられたし、挫けそうになっていた時も頑張れた。
うさも同じだったと知って嬉しかった。

「俺も留学生にハンカチ持って行ってんだ。すっげぇ元気もらってた」
「一緒だね♪嬉しい」

お互い元気が出る最強アイテムと確認した俺たちはやはりトレードをする事はやめにしてずっと持っていることになった。

ディナーを食べ終わった俺たちは、トレードを約束した公園へ久しぶりに行く事になった。
辺りはすっかり暗くなり人も疎らになった公園で俺たちはまた想い出を語りながら過ごした。

「ここでキスしてたらちびうさが降ってきたんだよな…」
「そうそう!首の骨が折れたかと思ったわよ。またキスしたら降ってきたりして?」
「まさか?それはもう流石に無いだろ?勘弁しろよ…」

冗談を言いつつ自然とそう言う雰囲気になり、キスをする。

ドォーーーーーーーン!!!

ヒューーーーーーー

ドテッ!!!

「……」

マジデオチテキヤガッタ…

「うっさぎ~!まぁ~もちゃん!ひっさしぶりぃ~…って2人ともちょっと老けた?歳とったねー?何歳になったの?」
「ちびうさ~!あんたなんでまた来たのよ?呼んでないわよ!」
「えへへぇ~遊びに来ちゃった!」
「まもちゃんが変な事言うからだぁ~涙」

また恒例の2人の言い争いが始まってしまい呆れてしまう衛。

そんな2人のやり取りを見ながら衛は、改めてこの先もずっとうさぎの笑顔を大切に守っていこうと誓うのだった。




おわり

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