原作まもうさSSログ


最近、“魔の6時のバス”と言う噂を良く耳にするようになる。
勿論俺は信じてなどいない。
ただ、タキシード仮面として警察の手に追えない事件と遭遇する事が多くなっている。
正義の戦士って奴も現れたし。
関係ないとはいい切れないし、放ってもおけない。
バス通学している事もあって噂とは別に気になる。
幻の銀水晶関連の事件だとするとなおのこと。

そんな事を思いながらもいつもの時間のバスに乗る。
変な噂のせいで乗りたがる人がいないのか、今日は誰も乗っていない。
1番後ろで本を読んでいると騒がしく乗ってくる奴がいる事に気づく。
しかも俺の隣に腰掛けてきた。
誰もいないのに吸い寄せられたかのように後ろに腰掛ける。
最近よく会うお団子頭だ。
ただ、全く俺の事には気付いていない。
気づいているから横に座ったのかと思ったらどうやら違った様だ。
それどころか、バスの中に猫連れで、猫と喋っている。
しかも猫も人語を介している。
前に街で偶然会った時もこの黒猫喋っていたような気がする。

「ニャーッニャーッ」

不思議に思っていると猫の方が俺に気づき、不味いと思ったのか取ってつけた様に猫語で鳴き始めた。

「どしたの?ルナ、まだるっこしいわね喋ってよ!」

やっぱり聞き間違いじゃない。
喋る猫なんだ!

「そうだよルナ、もっと喋れよ」

俺がいるから喋れないんだって。
いい加減気づけよ、俺がいる事。
こんなにお団子を見てやってるのに……。
気づけば喋りかけていた。

「あ~~~っまたあんたっっ」

やっと俺に気づいたお団子は車内に響き渡る程のキンキン声で驚いて絶叫する。
いや俺は幽霊か何かか?
周りをもっとよく見ろ!
俺しかいないからいいけど、注意力や緊張感持って思慮深く行動しないとその内痛い目見るぞ。

「……キンキン声出すな☆お団子頭よく会うな」
「なぁんでここにっっ」
「俺はバス通学なんだよっ」

寧ろ聞きたいのはこっちの方だ。
何で同じ時間に乗ってるのに今日は会うんだ?
しかも猫連れてバスに乗るって……。

「うそっあんたって普通の中学生だったのっっ!?そいえばきょーはセーフク着てるっっ」
「オレはれっきとした高校生だっ」

中学生に間違われるとは心外だ!
俺はそんなにおぼこく見えるか?
何でチュー坊に間違われなきゃ行けないんだ。
払拭する為、学生証を見せる。
そう言えばお互い名前も年齢も知らなかったな。

「“地場衛、元麻布高校二年”ふぅぅ~~~ん☆……バス通学なら知ってる?“魔の6時のバス”」

あぁ、なるほどな。噂を聞いて興味本位と好奇心でバスに乗ってみたって感じか?
でも怖いから猫を連れて気を紛らわしてた。ってところか?

「……知ってるよ。この路線だろ。この頃ただでさえ変な事件が多いのに」

そう言いながらメガネを外し、セーラームーンの事を思い出していた。
変な事件と共に現れたセーラームーン。
経験が浅く、戦い慣れていない彼女。
危なっかしくて見ていられない。
だけど助けてやりたい。サポートしてやりたい。
何故かそんな気持ちにさせられ、いつしか気になる存在になっていた。

「ーーーー正義の戦士…………」
「えっ?」
「……いや、何でもないよ……」

そんな事を考えながらお団子頭を見るとメガネを外したせいだろうか?お団子とセーラームーンの顔が重なって見えた。
いつの間か勝手に口から言葉が出ていた。
お団子頭がセーラームーンであるはずが無いのに……。
セーラームーンと同じお団子頭、怖がりな癖に好奇心旺盛。
色んなことがリンクする。
どこかで同一人物であれば。そんな風に思っていたからだろうか……。

しかし、人の言葉を喋る猫に“通信機でレンラクを……”なんて言葉を聞けば、疑いたくもなる。
いかにもそれらしいもんな。

変な事を聞いたからか、お団子頭は次で降りて行った。
俺は自宅へと帰り、“魔の6時のバス”を調べるため、タキシード仮面の姿へと着替える。
お団子頭の事も気になるから要マークだ。
もし、もしもお団子頭がセーラームーンであれば、きっと何らかの動きがあるはず。
そうでなくても、危険な目にあっていたら助けたい。そんな事を考えていた。

様子を見ていると6時になり、例のバスが来た。
行き先が点滅し、どこに行くか分からなくなった。
やはり魔の6時のバスの噂は本当だったのか?
様子を見ていると壁に穴が開き、バスはそこへ吸い込まれるように入っていく。
バスを追いかけなければ!
そう思っているともう一つ驚くべきことが起きた。

お団子頭がCAへと変化した。
そしてバスに飛び乗ろうとしている。
後先考えずに突っ走って、何か考えがあるのか?
ったく、世話がやける。
追いかけようとしたが、既に遅くバスは遠くなり、行ってしまった。
お団子頭といつも一緒にいる黒猫、ルナとか言ったか?猫は助けられたが、お団子頭は助けられなかった。

穴が閉じられるのを見ながら、その場に残された俺は呆然と考えていた。
ーーーー確かに目の前で変身したーーーー!!
あの子は一体…………。

やはりセーラームーンなのだろうか?
バスの中での幻は、あながち間違っていないのだろうか?
最近よく偶然会うお団子頭、会えば色んな顔をして元気を貰っていた。
いつしか気になる存在になっていた。
これが恋かは分からない。
穴が閉じられて助けに行く事が出来ない。
どうか、無事でいてくれ。
俺のお団子頭への想いを確かめるまでーー。




おわり

※2021年9月20日のバスの日に書き下ろしたもの

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