愛は盲目


嫌な予感をいち早く察知したキングはクリスタルパレスの扉に向かうとそこには顔を一生見たくなかった男がこちらに向かって歩いてくるのが仮面越しに見えて嫌悪感を示す。

「何をしに来た!?」
「貴様に用はない!セレニティに会わせろ」
「お前に会わせるセレニティはいない!」
「相変わらず余裕がないな、エンディミオン?会うだけだ。奪いはしない」
「誰がそんな戯言信じるというんだ?」
「セレニティに会って献上したいものがあるんだが」

拉致のあかない押し問答にイライラするデマンド。
クイーンを会わせたくなくて余裕を無くすキング。
最早収拾がつかず、両者一歩も譲らぬ言葉の攻防戦。
血走っている2人はクイーンを巡っての男の戦いへと発展する寸前である。

「お前の物など受け取らん」
「このお菓子を渡したいだけだ!良いから会わせろ!」
「会わせないし、そんな何が入っているのかも分からん物など受け取るわけがないだろう。毒が入ってるかもしれないし、あるいは惚れ薬が調合されているかもしれないからな」
「安心しろ!そんな卑怯な真似はしない!スーパーで買ってその足で直ぐこちらに来たのだからな!」
「フンっどうだか」
「何!?」

キングからの侮辱の言葉の数々にとうとう痺れを切らしてしまったデマンドは、ワイズマンに貰った邪眼で従わせようと黒月マークを変化させて第3の目を開こうとした。
が、その行動を見抜いたキングは技を放つ。

「タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー!」
「ちっ!邪眼の力を舐めるなよ!」

負けじと邪眼を開眼させるデマンドに対し、ゴールデンクリスタルを手にするキング。
黄金に輝く水晶に第3の目が眩み、せっかく開眼させた邪眼が閉じてしまった。
仕方なく邪黒水晶を手に取るデマンド。
キングが持っているクリスタルはさらに光り輝き、強さを増していく。広範囲に黄金の光が広がる。
デマンドも負けじと邪黒水晶の力を解放する。キングとは対照的に辺りを暗黒に染め上げていく。

光と影の攻防戦に辺り一面に異様な雰囲気に包まれる。

☆☆☆☆☆

パレスの中で公務をこなしていたクンツァイトがいち早く安心感のあるオーラと絶望感のあるオーラに気づき、震源地へと向かう。

相反するオーラの元へと辿り着いたクンツァイトはその中心にゴールデンクリスタルを発動させ、怒りに我を忘れてデマンドと対峙しているキングを発見し、驚愕する。

「マスター!」
「クンツァイトか?」

大声で呼ぶと、確認すること無く声で分かったのか、正面を向きデマンドと一触即発状態で対峙していたが、返事を返してきた。

「冷静になるのです!」
「クンツァイト、止めてくれるな…。コイツとはいずれは決着をつけなければいけないんだ」
「だからと言って今する必要は無いのでは?クイーンが悲しみます」
「くぅっセレニティ…」
「それにクイーンはいついかなる時もマスターしか見えておらず、マスターを選んできたでは無いですか?決着も何も軍配は誰がどう見てもマスターが圧勝です」
「それでも、いつだって俺は彼女に関しては余裕がないんだ」
「お気持ちは分かりますが…」

根気強くキングを説得するクンツァイト。
必死の説得により、我を忘れていたキングは徐々に冷静さをとりもどしていった。
そんな2人とは裏腹に完敗を突きつけられたデマンドはより一層怒りと共にパワーを増幅し始めた。

「セレニティに会わせろ!」

怒りに任せて邪黒水晶を発動させようとする。と、その時ー。

「一体全体何の騒ぎなの?」

ヴィーナスが騒ぎに駆けつけやって来た。

「デマンド?何で?…ちょっと!クンツァイト説明しなさいよ!」
「まぁ落ち着け!今マスターを説得してる最中だ。余計な事言うなよ?」
「何それ失礼しちゃうわね!何があったか知りたいだけよ!」
「クイーンに会わせたくなくてマスターがゴールデン・クリスタルを発動させようとしていたんだ」
「なるほどね、クイーンに関しては本当に余裕ナッシングね」

端的に説明すると納得しながらヴィーナスは呆れていた。

「一緒に説得してくれ」
「嫌よ!面倒臭い!それにさっき余計な事言うなって言ったじゃない」
「嗚呼、言った。済まなかった。だが説明前に余計な事言われるとたまらんかっただけだ。この状況の打開策は無いか?」
「…クイーンを連れて来る他無いかしら?」
「…火に油を注ぐ結果になりかねん」
「じゃあ力強くで止める他無いわね!」

この場を何とか収めたいクンツァイトは妻で、最も信頼のおけるクイーンの守護戦士でリーダーのヴィーナスに相談を買うた。
愛の女神でもある為、恋愛絡みはヴィーナスを頼りにしているし、何よりデマンドの事は彼女が一番分かっている。
ヴィーナスを敬い一任する方が良いと感じた。

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