君と月見と
「ちょっとクンツァイト!月を一緒に見たいだけでこんな夜遅くに会いたいっておたくの王子様は一体何考えてるの?」
まだ怒りが収まらないヴィーナスに詰め寄られ苦笑する。
「今日は満月で、地球では秋に当たる。中秋の名月と言って年に一度の月見と言うイベントだ。プリンセスが住んでる月が綺麗に見られるこの日を一緒に見たかったんだろ?我がマスターはロマンティストだからな」
「何それ意味分かんない。それに月はいつも満月なんじゃないの?」
全く理解不能だと言う顔をして呆れて怒りが治まってきたようだ。
「いや、満月に見えるのは月に1度程度だ」
その後は月の満ち欠けの仕組みについて知ってる事を教えてやると難しい話に明らかに混乱して理解の範疇を超えてしまったようだった。
「まぁいいわ。こう言うのはマーキュリーの独壇場よ!帰ったら分かりやすく説明してもらうわ」
俺も分かりやすく説明したつもりが堅かったのか理解出来ず頭脳明晰なマーキュリーに聞くという。全く失礼な奴だ。
「そんなに月の満ち欠けが変か?」
「変よ!月からは地球はいつでも丸いもの!納得出来ない」
全くこのお嬢様はロマンティックとは無縁だな…。
「月が綺麗だろ?」
「当たり前でしょ?誰の守護星だと思ってるのよ!」
「そうだったな。しかし先程プリンセスを見て驚いた。月と同じように発光していて」
「私も夜に付き添って来たの初めてだったから驚いた。月にいるとああはならないから。地球にいる時だけの現象みたいね?どう言う仕組みなのかは不明だけど」
ヴィーナスも初めて見たらしく、驚いていた。
「マスターが関係してる可能性はあるのだろうか?」
「分からないわ。でも少なからず関係はあるかも?額の三日月マークも王子といる時に光ってる事が多いから」
三日月マーク発光も月に居る時には起こらない現象で、目立ちすぎるから光らすのを止めるよう言い聞かせたが本人ですら光を沈められずコントロール出来なかったと続けて話すヴィーナス。
遠くからでも光っているのが分かるからかえって目立って仕方ないとため息混じりに頭を抱えている。
俺も人の事は言えんがどうもヴィーナスはプリンセスの事となると神経質なくらいに過保護になる節があり、もう少し気楽にすればいいと思う事がある。
月にいると同化して分からないとも考えられそうだが、月の王国のプリンセスの発光現象の謎は神秘だと思った。
この事は誰にも言わないようヴィーナスから釘を刺される。言われんでも分かっている。こんな事言っても誰も信じないだろうし、こちらが頭おかしいと思われるだろう。