原作まもうさSSログ



「やあ、そこの女子大生」

大学近くの喫茶店のテラス席で、うさぎは一人でパソコンと睨めっこしていた。
うさぎにとって大学生となり初めての前期テストが目前に迫っている。講義によってはテストでは無くレポートを提出すれば単位を貰えるものもあり、今正にうさぎはレポートを格闘中。
鬼気迫る顔でレポートと向き合っているため、誰かに呼ばれている事も気付かない。

「おーい、そこの女子大生!」

声の主が再びうさぎへと話しかける。
中々の集中力だ。それか名前を読んでいないから話しかけられているのが自分の事だと分かっていないのか。

「うさ!」

呼びかけ方を変えてみるかと名前を呼ぶ。
そこで漸くうさぎは顔を上げ、呼ばれた方向を見る。とそこには待ち合わせしていた人が立っていた。

「まもちゃん!」
「すっごい集中力だったな」
「あはは、呼ばれてるって思ってなくて。女子大生って言ってたから」

微かに聞こえてはいた。だが呼ばれ慣れない“女子大生”と言う言葉に自分だと思わず無視した。
そう言えば女子大生だったと改めてうさぎは気付いて照れた。

「うさは立派な女子大生だ。レポートも頑張ってる様だしな」
「もう必死だよ。大学生って大変」

大学に進学する。衛と同じ大学に行く。それはうさぎが決めた進路だった。
二年間死に物狂いで勉強し、見事合格。今ここでこうしているのは努力の賜物。
しかし、まだまだ自分が女子大生である事に慣れていなかった。
この感覚はセーラー戦士をなった時と少し似ていた。どこか他人事で、自分では無いようなそんな感覚。

「大学生って遊んでいるイメージあったけど、違った〜」

レポートだ課題だと追われて、その上テストも迫って来ている。時間が幾らあっても足りない。こんなはずではなかったとうさぎはレポートを進めながら衛に愚痴る。

「楽な学部や学科もあるだろうけど、大抵は大変だから諦めろ」
「そーだけど……」

中学や高校の時は亜美と言う心強い天才少女がいて、テスト前は何かと助けてくれた。だが今は違う大学の医学部に通い、彼女は自分の勉強で手一杯。見てくれる人はいない。
衛とは同じ大学だが、亜美と同じで医学部。うさぎの学部の事は分からない。手伝って貰えないし、手伝えない。

「俺ん家でやるか?」
「うん、そうする」

衛もうさぎ以上に課題にレポートにと追われていた。
テスト勉強もあるし、五月蝿い喫茶店のテラス席でやるよりはましで、集中出来るだろうと提案する。
元々うさぎとは一緒に勉強する約束をしていたのだから、自然な流れだ。付き合ってから幾度となく衛の家で勉強をしていた。大学受験の時は特に衛の家でやり込み、やる気が漲った。

「テストが終われば夏休みだ。頑張れ」
「初めての大学でのテスト、ドッキドキだよ。早く夏休みになって欲しい」
「単位取れるようにお互い頑張ろうな」
「うん、夏休み来たらすぐまもちゃんの誕生日だね」

うさぎにとって未知の世界である大学のテストが迫り、緊張を隠せないでいた。
中学や高校とは違い、長い講義の中学高校で言えば二回分のテスト範囲。テキストやノートの持ち込みOKのものは助かるが、そう出ないものは覚える事が多い。
テストで赤点オンパレードの過去を持つうさぎは単位が取れるだろうかと心配だった。

「うさなら乗り越えられるって信じてる」
「ありがとう。夏休み、いっぱいデートしようね」

まもちゃんの誕生日も楽しみだと言いながら、衛の家への道のりを夏休みに思いを馳せて帰って行った。




おわり

20240712

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