素敵な彼氏
side 衛
俺、地場衛22歳。大学四年生だ。
医学部に通い、日夜医者になるべく精進している。
そして今俺は、己の理性と戦っている。
講義を受けているのだが、隣にうさがいる。
この非現実の様なシチュエーションに、正直、心ここに在らずだ。
いや、俺が提案した事だったのだが、まさか彼女が隣にいるのがこんなにもドキドキするとは思いもしなかった。
正に、蛇の生殺しだ。
何とか正気を保ち、己を律して前を向き、講義を受けている。
でも、教授の言葉など最早BGMと化し頭に入って来ない。
こんな事は今まで一度も無かった。
これが恋人と一緒に講義を受けるということか?ヤバいな。
同い年で同じ学校の同じクラスに恋人がいたら毎日こんな感じなのか?最高にエキサイティングだな。こんな楽しいスクールライフを俺は知らない。
絶対、うさが頑張ってくれなければ知らなかった世界に、俺は兎に角浮き足立たずにはいられなかった。
俺と一緒にキャンパスライフを送りたいと言う理由で必死に受験勉強をして入ってくれたうさ。
大学という特性を生かして、うさに必須科目を一緒に受けようと持ちかけた。
俺は大学四年生にもなって必須科目を何一つ受けれていない。
だけど、うさも幸いまだ受けられていないと聞き、これはうさから留学を頑張ったご褒美だと思った。
うさは慣れない自分で講義を組み立てる事に苦戦しているようで、中々必須科目を入れられなかっそうだ。
新しく出来た友達とも一緒に講義を取っているらしい。
大学に入っても相変わらずすぐに仲良しの友達が出来ていて、流石だと思った。因み女友達だと言っていた。きっとうさを中心にグループが出来ているに違いない。そこに男がいるのかは分からないが、中学高校と同じで共学。今更だが、それでも嫌だ。
単純に俺とキャンパスライフを送りたかったかららしいが、こうして一緒に講義を受けられると聞き、うさは目に見えて嬉しそうだった。
講義前に待ち合わせしてここまで来たのだが、ずっと笑顔で幸せオーラが出ていた。
俺も嬉しくてたまらなかった。
何より、うさに群がる余計な男を自ら撃退して牽制出来るチャンスでもあったからだ。正に、一石二鳥。
しかし、そんな理性と絶賛戦っている俺を他所に、うさは講義そっちのけで俺の事をチラチラと見る始末。ったく、俺の気も知らないで!
ちゃんと見えてるし、視線感じるんだからな!
これじゃあ俺が集中出来ないと思い、心を鬼にしてある行動に出る。
メモ帳を取り出し、文字を書く。
“コラッ!講義に集中しろ!”
自分の事を棚に上げ、うさに指摘する。
ちくしょう!俺だってうさを見たいんだよ!
だけど、秀才ゆえの性がそれを許さない。悲しい性だ。
これが毎週10回以上も続くのかと思うと、先が思いやられる。
果たして、俺の理性は保てるのだろうか?
その後、一回目の講義を終えた俺は、次の講義に向かう廊下でうさに説教をして、以後気を付けるように釘を指した。
おわり
20240210