初デートに行こう
「そうだ!ついでに案内したい所があるの」
セーラーVゲームでの私の見せ場がないと分かった私は、突然閃いた!
まもちゃんの手を引いて、次に案内したのはゲームセンターの中に作られた私たち戦士にとって大切な場所。
「ここは?」
「司令室よ」
「司令室……」
「そう」
「そんな所があったのか?」
私が連れて来た場所とは、司令室だ。
クラウンの中にある、私たちの大切な場所。
そして、かつて遠藤さんが探し求めていた場所。
侵入されて戦場になり、かなり破損したけど私の銀水晶の力で元通りになっていた。
「ここでルナとアルテミスが色々敵について調べているの」
「そんな大切な場所……」
「まもちゃんももう私たちの立派な仲間だもん」
「うさこ……」
仲間。ルナからは敵かも知れないと言われ、ずっと警戒されていたタキシード仮面。
結果的に彼は、前世でセレニティである私が命を懸けて最も愛したエンディミオンの生まれ変わりの姿だった。
記憶を失っていても惹かれあった運命の人。
成り行きでまもちゃんに案内したけど、ルナも許してくれるよね?
「こんな大事な場所に案内してくれてありがとう、うさこ」
そうか、仲間になったのかとまもちゃんは感慨深そうに呟いた。
私の恋人だもん。仲間以上だよ。教えない理由がどこにもない。これからもここで作戦会議があるかもしれないし。いや、無いことを祈りたいけど。
「ううん、まもちゃんは私の大切な人だもん。当然だよ」
「そう、だよな。この先もここを利用する事があるかも知れないしな」
「出来れば、金輪際無いで欲しいけど」
「確かに」
初めて来た司令室にまもちゃんは興奮を隠しきれないようだった。
無理も無いよね。私にはあまり分からないけど、高機能なコンピュータや探索機と色々調査に必要な設備が整っているみたいだから。
ゲームセンターの時とは明らかに違う眼差しで目の前に広がる光景に興奮している。
ゲームセンターの時もだけど、やっぱり遠藤さんの時の記憶は全くないみたいだった。今のまもちゃんは純粋に地場衛なんだと実感する。
「こんなに喜んでもらえるなんて、私も嬉しい」
「ああ、仲間っていいな」
まもちゃんが何気なく言った仲間と言う言葉がなんだかかなり重かった。
今までまもちゃんは一人で記憶を取り戻すためにタキシード仮面となって戦っていた。私たちとはまるで違う。別行動。仲間なんて当然いなくて。
「これからは一人じゃないよ。私がいるから」
「ああ、そうだな。寂しくないな」
寂しく無い。この言葉が私の胸に突き刺さる。
きっとずっとまもちゃんは一人で寂しかったんだ。本当は分かってくれる仲間が欲しかったけど、一人で大丈夫と強がっていたのかな。
そんな事を考えると胸が苦しくなった。
「これからは、ずっとまもちゃんの傍にいるから!」
「うさこ……」
まもちゃんの身体をギュッと力の限り抱き締める。寂しさも孤独も、まもちゃんが不安に思っている全てを包みたい。
「うさこ、離さないから」
「まもちゃん、大好き」
同じ様にまもちゃんも私を抱き締めてくれた。
まもちゃんを好きになってよかった。心から幸せだなって思える。
やっぱりここに連れてきて良かった。
まもちゃんとゲーセンに来たのは、私の事を知って欲しい。それは勿論あったけれど、遠藤さんとの想い出を塗り替えたかったから。
ちゃんとまもちゃんと想い出を紡いで行きたいと思ったの。まもちゃんと作るはずだった想い出の一ページが、遠藤さんのままはやっぱり嫌で。まもちゃん自身も忘れている遠藤さんの記憶。私の中からも追い出したかった。なんて言ったらまもちゃんも遠藤さんも嫌かな?
「まもちゃん、大好き」
「うさこ、俺も愛してる」
まもちゃんとの初デートは、色気のない場所だったけれど。私はとっても気持ちが温かくなった。
おわり
20240108