いつでも傍で
せっかく勝ち取った平和、ゆっくりして欲しい。
そう願い見守っている私達とは裏腹に、やはり第六感で何かを感じとったのか、日課である炎での占いを真剣にしている様だった。
中学3年生に上がり、学祭で占いの出店をやると張り切っていたし、超常研の部長と知り合って理解者が出来たのか新たな敵と嫌な予感を感じつつも生き生きとしていた。
それに月のプリンセスと似た子の出現。そして人体発火現象ーー。
色々な謎を残したまま、私達の火星のプリンセス、セーラーマーズは敵に何処かへと連れ去られ、暫く不在の日々が続いた。
とても不安だった。幼い彼女と会ってからこんなにも長く離れていた事が無かったから。
無事でいるのだろうか?生きているのだろうか?とただ私達にはセーラーマーズの安否を案じ、祈る事しか出来ない。とてももどかしかった。
一日がとても長く感じる。傍にいないことがこんなに辛く苦しいなんてーー。
それから暫くして無事戻ってきてくれてとても安堵した。
致命傷なども何も無く、戦う前と同じ姿で、よく無事に戻って来てくれたとホッとした。
そして1つの大きな戦いが終止符を打った事も同時に感じ取れた。
今度こそ普通で平和な日常と幸せをーー。
しかし、無常にもやはりまた何かが起ころうとしているのか、また毎日炎で真剣に占う日々が始まった。
謎の予知夢に先祖返り、新たなセーラー戦士と思しき人物2人、ヒーリング能力を持つ土萠ほたると名乗る少女ーー。
そんな中、15歳の誕生日は山で清めたいと行って私達を置いてM山で修行に行ってしまった。
カラスの姿をしているから仕方ないとは言え、やはり新たな戦いが始まっている以上、ついて行ってお傍にいたかった。
カラス姿じゃ出来ることは限られているけれどーー。
安否確認くらいは出来る。
そして数日後、M山から下山して帰ってきた彼女はやはり何かあったようで、一回り成長していると同時にどこか覚悟の様な強い意志を纏っているように見えた。
その後も度々見る予知夢に悩まされ、炎で占いを繰り返していた。
毎度の事とはいえ思い詰めて占いをしているから体調壊さないか、とても心配になる。ーーまぁ戦士だから半端な鍛え方していないだろうし、精神もとても強いお方だから大丈夫だろうと思うけど、私達のプリンセスだから過保護なくらい心配はしてしまう。
この戦いもまた強大なようで、外部太陽系と名乗る戦士が3人も現れ、手を引く様に言われた事が何よりの証拠のようだ。
その後何とか和解し、セーラームーンを中心に心をひとつにして敵に立ち向かい、大変な大きな戦いに終止符を打ったみたいだったけど、目覚めさせてはいけないセーラーサターンが目覚めてしまったり、セーラームーンがファラオ90に飛び込んだりして、地球が滅びかけるとても大変な戦いだったみたい。
だけど、どんな戦いであれまた平和を取り戻し、こうして無事に戻ってきてくれてとても嬉しかった。
***
平和が暫く続いたと思えば今度は受験と言う名の戦いが待っているみたいで、毎日毎日勉強に明け暮れる日々。
とはいえ彼女が通うTA女学院はエスカレーター式で受験勉強は無い。その代わり進級は厳しい為、それなりに勉強しないといけないらしい。
彼女は頭がいいから特に心配はして無い。受験勉強もとても楽しそうにしているからーー。
そして時は平和を保ったままあっという間に過ぎ去り春がやってきた。
見事桜は咲き、志望校へと合格した5人は、高校入学を喜んだのも束の間、千年に一度の皆既日食のその日、敵はその隙に入り込んできた。
私達はすぐ様彼女の元へと向かい、危険のシグナルを発信した。
「月」のカードーー「不安、悪い予感」
彼女が得意なタロットカードでーー。
やはり今回の戦いも苦戦を強いられているようで、みんなの“夢”を狙う卑劣なやり方で攻めてきた。私達のプリンセスもーー。
敵の本拠地であるデッド・ムーン・サーカスに偵察に行く事になり、私達も着いていくことに。
みんなと離れ、ミラーハウスへと吸い込まれる様に入っていってしまった。中で何か起きているのかとても嫌な予感がする。
カラスの姿では入れないのは分かってはいたけれど、強行突破でミラーハウスの窓ガラスを割り、侵入した。
中に入れた私達は床に倒れている彼女が目に飛び込んできた。
「プリンセス・マーズ!」
前世での呼称で彼女を起こす私達は、本来の姿である人間へと変えて彼女の前に姿を現した。
やっとその時が来たのだと悟ったからーー。
プリンセス・マーズを月の姫の四守護神の1人として強く戦える様見守り、迷える時は正しい道を行けるよう導く事ーー。
その時が来たから漸く人の姿で彼女の前に現すことになった。
私達の姿を見たプリンセス・マーズは多くを語らない私達を“何者”であるか、その鋭い第六感で分かってくれたみたい。
そして私達はマーズ・クリスタルを渡して変身を促し、マーズ・アローで技を放つよう導いた。
その変身はとても神秘的で力が満ち溢れていて、技はとても力強く気迫が感じられた。
見事敵を撃退し、その場は切り抜けたけど心の奥をズカズカ入り込む卑劣なやり方で襲ってくる事に嫌悪感を露わにして、より一層の警戒心と注意を払う為、気を引き締めていた。
久しぶりに、本当に何億年ぶりに人の姿になってマーズと共通言語で話せてとても嬉しかったし、楽しかった。
マーズ・クリスタルを私達の手で渡して新たな変身、そして新たな必殺技を促せた事もとても誇らしかった。
そして次にデッドムーンサーカス団に乗り込んで行った時は激戦を極め、あっという間に最終決戦ーー。
前世の因縁を断ち、月の姫と地球の王子の危機をセーラー戦士全員が揃い一丸となり立ち向かう戦い。
月の姫と自身の変化と敵の長を倒す為、私達の名前と同じ火星のキャッスルの力を借りてセーラームーンの聖杯に力を与え、無事にこの危機を乗り越えた。
***
そしてまた再び地球に平和が訪れた。
しかし今回はその平和は長くは続かなかった。
毎日の様に丸で雨でも降るかの如く降り続く流星雨。
綺麗な天体ショーとは裏腹に、異常なまでに降り続く流星雨は星を守護に持ち、敵と戦う使命を持つ私達の姫達はどこか胸騒ぎがしていたと思う。
そしてその予感は的中してしまい、マーキュリーとジュピターが消されるビジョンが見えて来て胸が張り裂けそうになる。
その数日後、私達の元にとても懐かしい人物が訪問してきた。
母星であるコロニス星で訓練兵として一緒だったレッドクロウ。
まさか母星もセーラーコロニスも全て裏切り、敵に魂を売り、仮初にもセーラー戦士になって私達の前に現れるなんて思いもしなかった。
しかもそれが私達の最期になるなんて……。
まさかレッドクロウに消されてしまうなんて、そんな未来は予想してなかった。
セーラーマーズのお傍に最後までいられず、目の前で健闘もむなしく消えてしまった。とても悔しい。
志半ばで儚く散ってしまった私達だけど、奇跡的にセーラーマーズのマーズ・クリスタルによってまたこの世に転生する事が出来た。
そしてまたセーラーマーズの元に置いて貰える事になった。
それでも私達はカラスの姿が長かった事もあり、人として暮らす事よりもカラスの姿でマーズの傍で変わらずそばに居る事を選んだ。
その方が楽だし、長くセーラーマーズの傍にいられるから。それでも人とカラス、臨機応変に柔軟に切り替える生活を送ることにした。
そんな銀河を賭けた戦いが終わり、普通の日常が戻ってきた。
セーラーマーズの側近としてお傍に仕える身の私達に普通の幸せや日常は無いに等しく、気は休まらない。
だけど、それでも束の間の戦士の休息は“普通”を噛み締め、気を張りつつも楽しみたいと思っていた矢先、そんな普通の日常がまた再び破られた。