第三章 恋慕
ーーーまもちゃん…会いたいな
まもちゃんが留学してから早いもので、もう三ヶ月も経とうとしていた。
こんなにも会えない未来が来るなんて、付き合い始めた時は、想像もしていなかった。
ギャラクシアとの戦いでもクリスタルを抜かれたまもちゃんとは会うことはできなかったけど、こんなに長くはなかったから、寂しい。
付き合った当初から、夢はお医者さんで、その為に留学したい事は聞いていて、覚悟はしていた。ハズだったのに、いざその時が来たら、心から喜んであげる事ができなかった。
あたしも心が狭いな……なんて、我ながら自己嫌悪に陥って、更に落ち込む。
前世でも、こんなに長く逢えない。なんて事は無かったから、耐性が無くて、どうしていいのか分からない。
まもちゃんは今、アメリカでどうしているかな?
何の講義を受けているのかな?
何食べているのかな?
何を考え、何を思っているのかな?
私の事は考えてくれてる?
あたしの様に、会いたいとか寂しいとか思ってくれているのかな?
同じ気持ちなら嬉しいな、なんてわがままな事を思ってしまう。
勿論、連絡は定期的にしていて、色々話はしている。
便利な世の中になったもので、メールやLINEで、相手の都合や時間なんて関係無く連絡が取れるのはありがたい。
勿論、顔も見たいし、声も聞きたい。
そんな時は、時間を合わせてリモートで顔を見ながら話をする。
その時はとても嬉しくて、楽しい時間。
だけど、終わってしまうと、途端に寂しさが込み上げて来る。もっと、もっと…ってなってしまう。
「じゃあ、またな。うさ、愛してるよ」
「まもちゃん///あたしも大好きだよ」
たまのリモートで長電話(って言うの?)を終えたあとの事。
寂しく思っていたら、ちびうさが部屋へと入って来た。
学校での出来事を色々話してくれているみたいだけど、まもちゃんの事で頭がいっぱいになっているあたしには、ちびうさの言葉は殆ど入ってこない。
「でね、ももちゃんがね?」
「まもちゃんがどうしたの?」
あたしは思わず、ビクッと反応した。どうしてちびうさがまもちゃんの話をするのだろう?
「ももちゃんだよ!あたしの友達の!もう、うさぎ、しっかりしてよ」
「ああ、ももちゃんか…」
まもちゃんの事を考え過ぎていたみたいで、【ももちゃん】が【まもちゃん】に空耳してしまった。
「うさぎらしいと言えば、らしいけど。まもちゃんは今、留学中。そろそろ慣れてよね!」
「面目ない…」
ちびうさに心配してもらって気を使わせて、あたし、何やってるんだろ。自己嫌悪。
落ち込んでいると、スマホに美奈Pから着信が。
「もしもし、美奈P?」
「うさぎ、やっと繋がった!」
リモートでまもちゃんと長々お話している間、何度もかけてくれていたのか、美奈Pに呆れられた。
「ごめん、美奈P。まもちゃんとリモートでお話してたの」
「良いわよ。そうだと思ったから」
「面目ない…」
「ま、私も大した用事じゃないから構わないわ。うさぎの声が聞きたかっただけだから」
まるで恋人に言うみたいに、浮いたセリフを言ってくる美奈Pに照れる。
それを歯切りに、美奈Pの怒涛のトークが展開される。
あたしの声が聞きたいって言ってたのはどこへ行ったのか?と思うくらい、一人で喋り続ける美奈Pは、まるで関西出身のお笑い怪獣そのもの。
長い美奈Pの話を聞きながら、あたしはまたさっきのまもちゃんとのリモートでのやり取りを思い出して、心ここに在らずになっていた。
「まこちゃんがさ?」
上の空で聞いていると、また再びドキリと胸が高鳴った。
「まもちゃんがどうしたの?」
「うさぎ、本当に大丈夫なの?まこちゃんよ、まこちゃん!木野まことよ!」
「あ、まこちゃん…」
あたし、本当にダメだ。ももちゃんだけじゃなくて、まこちゃんまで【まもちゃん】と聞き間違えるなんて…。
まもちゃんもまこちゃんも、思い返せばあたしが呼び出した愛称なのに、自分でトラップにハマるなんて、ダメだな…。
ももちゃんは仕方ないとしても、どうしてまもちゃんとまこちゃんを似た呼び方してしまったんだろう。ここに来て、自分の呼び方の安易さに、呪いたくなった。
「んもう!私たちだっているのに」
「…面目ない」
美奈Pにも呆れられてしまった。きっとずっと、美奈Pには色々迷惑かけているし、心配させているんだろうな。
お友達がいっぱいいて、充実した日々でも、あたしはまもちゃんがいないとダメみたいだ。
さっき顔を見てお話したばかりだけれど、まもちゃんに会いたいな…。
早く留学から帰ってきて、まもちゃん。