第三章 恋慕
留学して一ヶ月程経った。
勉強をしに行っているのだから当然と言えば当然だが、やはり勉強漬けの日々を送り忙しかった。
大学生活にも何とか慣れてきた。
土地勘が無かったハーバードもこちらで出来た友人に色々案内してもらい、何とか生活に不自由のない程度に困らなくなっていた。
勉学に忙しい日々とは言え、やはりうさと会えない環境には慣れず辛くなっていた。
自分で決めた事とはいえ心が折れそうだ。
うさといた時も勉強ばかりだったのに、離れているだけでこんなに辛いとは思いもしなかった。うさの存在と笑顔にどれだけ救われていたのか。身に染みて体感している。
俺でこんなのなのだから、置いていかれている立場のうさは相当な物だろうと察しがつく。
そこに加え、うさは自他ともに認める寂しがり屋。きっと寂しい想いをしているに違いない。いや、絶対している!
強がり、大人になって俺を見送ってくれた笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。無理、してないといいが……
うさには支えてくれる仲間が沢山いる。アイツからが相談役になってくれていたら安心だ。
うさは優しくて可愛い。その上、人との距離がやたらと近い。距離感どうなっているのか聞きたくなるほど、バグっている。
俺のいない間に異性が寄ってこないとも限らない。寧ろ、そこが一番心配だ。
美奈子に監視を頼んだから大丈夫とは思うが、万が一の事が無いとは限らないわけで……
考えたくもないが、うさが俺以外の男に目移りしてしまう可能性だって無きにしも非ずなわけで。
異性も気が抜けないが、敵の侵略も無いとは限らない。
寧ろ、最初の留学で旅立とうとしていた時に空港で容赦なく襲われた。手も足も出ず、攻撃する事も防御も出来ず一瞬で。
俺たちは地球を守る戦士だ。戦う事を義務付けられているし避けられない宿命。俺がいない間にも敵の侵略があってもおかしくない。
……なんて事だ!うさを放っておけない事だらけじゃないか!?
何故俺は留学する結論が出来たのだろう?
確かに小さい頃から医者になる事が夢だった。その為に留学は必須。当たり前の事だった。
そして当たり前のように留学を選んだ。
しかし、こんなに離れる事が不安になるとは思いもしなかった。
前世でも長距離恋愛をしていた。その頃でもセレニティとはこんなに長く会えないなんて事は無かった。
あの頃の俺たちを見ると、今の俺たちの事はどんな風に映るだろうか?
自由に恋愛出来ても不自由だと感じるだろうか?
「はぁ……うさ」
うさに会いたい……
うさの声を聞きたい……
うさに触れたい……
別に心も身体もうさと一つ。一心同体と言うわけでは無いのに、こんなに距離があるだけで引き裂かれた様に痛いなんて。苦しいなんて、思いもしなかった。
自分で決めた事なのに心が折れそうなんて甘えだよな。うさの方が何倍も寂しいだろうに。
時差が余りなければもっと電話で話したり出来るのだが。半日も違うのがな。
留学前にスマホのカメラ機能で色んなうさを撮ってきていた。
笑顔のうさ、泣いてるうさに怒っているうさ。それに、ちょっと大人なエロい顔のうさも。
声も中々聞けないだろうことは予想出来ていたから声も色んなバリエーションを予め録音しておいた。
写真のうさと録音の声のうさで俺はこの辛い勉強漬けの毎日を乗り切ろうと決意した!