アルルナダイアナSSログ
『恋をしている、愛する君のために(アルルナ)』
俺は途方に暮れていた。
美奈に散々叱咤され、参っていた。
確かに俺は、ルナに振り向いてもらうための努力を何一つしていない。
それは、何をしたら良いか分からないと言う事もある。けど、やはりどこかで慢心していたのだと思う。
恋するルナに何をすればいいのか分からず。気づけば俺は、衛のマンションへと来ていた。
「アルテミスじゃない」
立ち往生していた俺に到着したうさぎが声をかけてきた。
「まもちゃん家に来るなんて、珍しいね」
「ああ」
短く答える。うさぎのテンションが、凹んでる俺の心に響く。笑顔も眩しい。
「アルテミスも入るでしょ?」
「ああ」
うさぎが衛の家のドアを開ける。一緒に入って行く。
「まもちゃん来たよ!アルテミスも一緒だよ」
「アルテミス、珍しいな。どうした?」
衛の家に来ることも、落ち込んでいることも珍しくて、驚かれる。
「ルナの事か?」
ルナが恋をしている事、相手は俺じゃない事、俺がルナを好きな事を知っている衛。何も言えず落ち込む俺を察して聞いてくれた。
「ルナの為に何をしてあげればいいか、さっぱり分からない……」
「正直俺はルナじゃないからな……うさ、何か思い当たる事はないか?」
「え?うーん、そーだなぁ……」
一番近くで見ているうさぎが考え込む。
「まもちゃん、こんにちはー」
そこに勢いよくちびうさがダイアナと登場する。衛にプライバシーって奴は無いのか?
うさぎと言い、ちびうさと言い、無断で入ってくる。と落ち込みながら冷静に考えてしまった。
「パパちゃま」
今、最も顔を合わせずらい未来の愛娘と目が合う。どうしよう。まともに見れない。
「アルテミス、どうしたの?」
驚くちびうさに、衛とうさぎが簡単に説明してくれた。
「そっか、ルナは最近、金平糖を好んで食べてるよ。ってこんなんでアドバイスになるかな?」
「金平糖……それだ!!!」
「どう言う事?」
「買いに行くんだよ」
「アルテミスが?」
「そうだよ」
「どうやって?お金はどうするの?」
「第一、どうやって持って帰るんだ?」
俺の提案に次々と現実を突き付けてくる。
猫が買い物できない事くらい分かってる。
だけど、俺が買わなきゃ意味が無いんだ。
「衛、お金貸してくれ。風呂敷も貸してほしい。後、念の為、メモを書いて欲しい」
金平糖を買いに行く。この原動力で、テキパキと衛にお願いをする。
驚きながらも衛は色々準備をしてくれた。有難い。頼れるのはやはり同性である衛だけ。
あ、今回はちびうさもだな。衛譲りでしっかりしてる。単純に感心した。
「よし、出来た」
風呂敷を体に巻いてもらい、その中にお金とメモを入れてもらった。
「アルテミス、本当に一人で行くの?」
「男に二言は無い!」
一人でやり遂げると決意していた。
高らかに宣言して、部屋を出ていった。
その後をちびうさが追いかけて来て、ドアを開けてくれた。
「それじゃ、行ってくる」
「頑張って、アルテミス」
うさぎに応援され、衛のマンションを後にする。
勢いで出てきたけど、金平糖ってどこで売ってるんだろう?
取り敢えず商店街の駄菓子屋辺りを探ってみるか?
そんな事を考えながら歩いていると。
「アルテミス~」
呼ばれて振り向くと、ちびうさだった。ダイアナと一緒に追いかけてきたようだ。
「何で来たんだよ?」
「心配で後を着いてきたの。見守るだけで、手出ししないから安心して」
心配してくれるのは単純に嬉しかった。だけど、一人でやり遂げたい。
ちびうさの存在を消して、駄菓子屋を目指す。
十番商店街に着くと、小洒落たお菓子屋さんが目に入る。ここなら、金平糖がありそうだ。
意を決して中に入る。キョロキョロと金平糖を探す。
あ、あった!と歓喜しながら、金平糖の場所へと向かおうとした、その時。
「あら、猫ちゃん」
店の女性に見つかり、声をかけられ、ヒョイッと抱き上げられてしまった。
「ニャーニャー(風呂敷を見てくれ)」
風呂敷を見てもらうように誘導する。
「風呂敷なんて巻いて、面白い猫ね」
「ニャー」
「外して欲しいの?」
「ニャーニャー(そうそう)」
何とか気付いてもらい、外して貰う事に成功する。
「メモとお金?何なに……“金平糖をお金の分だけ下さい。お釣りと商品はまた風呂敷に包んで下さい。お手数お掛け致しますが、よろしくお願いします”ってご主人様のお使い?凄いわね!」
感心しながら、店主は金平糖を会計してくれた。お釣りとレシート、そして金平糖を風呂敷へ包んで体に巻き付けてくれた。
「ニャー(ありがとう)」
「ご主人様によろしくね。今度はご主人様も連れてきてね♪」
店主に見送られ、店を後にする。
「アルテミス、お疲れ様」
「パパちゃま、かっこよかったです」
外で見守ってくれていたちびうさに郎を値切らわれる。未来の娘に褒められ、照れ臭くなる。
「見守ってくてれ、サンキューな」
ちびうさに礼を言いながら空を見上げると、すっかり暗くなっていて。夜空には、一番星が輝いていた。
美奈も、俺を見守ってくれてたのか?なんて愛の女神にも感謝しながら、俺は、司令室へと向かう事にした。
しかし、この場合のご主人様は誰に当たるんだろう?
美奈なのか、衛なのか?そんな疑問にぶち当たりつつ、ゲーセンを目指した。
おわり