その金平糖はとても苦い


side ルナ


初めて本気で人を好きになった。
恋をしてこの世界がこんなにも美しくて素晴らしいって事に気づいた。
翔さんのことを考えると凄く幸せな気分になった。
恋をして初めてうさぎちゃんの気持ちが分かった。
あの時はこんな気持ちを知らなかったとは言え、とても酷い事を言ってしまったなって反省した。

翔さんの事ばかり気にかけて敵が侵入してるって分かっていたのに、自分の使命を疎かにしてしまっていた。
アルテミスに負担かけてしまった。
こんな非常時に私は何をしてるんだろう。
それなのにアルテミスは笑顔で私を受け入れてくれる。
金平糖まで買ってくれて、優しすぎて心が苦しい。

買ってくれた金平糖を食べると苦く感じる。
翔さんに貰って食べた時はとても甘い味がしていた初恋の味なのに……。
コミュニケート出来たりして分かり合えるって思っていたのに、翔さんにはちゃんと姫子さんって恋人がいた。
所詮は人間と猫で叶わぬ恋。
最初からわかりきっていた事だけど、知らない振りをしていた。
だけど、目の当たりにしてとても苦しくなった。
大好きだった金平糖も失恋と共に苦く感じてしまったみたい。

「全くさ!俺が一生懸命色々対策練ってんのに皆して、ルナの意見が一番!ルナがいないと作戦会議は出来ない!って帰っちゃうんだぜ☆」

作戦会議にも出ずに翔さんに会っていた私にアルテミスはそんな優しい言葉で迎え入れてくれて、そんな優しさが苦しい。
ごめんね、アルテミス。
アルテミスが私を好きなの知っていたのに、違う人を好きになってしまって、好きになれなくてごめんね。
私にとってのアルテミスは前世からの腐れ縁で、戦士達を支える同士で、そういう目で見られなかったの。

ダイアナもごめんね。
きっと私の事で自分の存在について想い悩んでるよね?
自分が産まれない未来があるんじゃないかって不安になってるよね?
だけど、この想いは止められなかったの。
周りを不安と不幸にしてるって、私だって分かってる。
だけど、どんどん好きになっていってしまったの。
アルテミスにもダイアナにも罪悪感はあるわ。
ダイアナの顔なんてまともに見られないし……。

だけど、こんな私を皆何の文句も言わないどころか優しく見守ってくれて。
それがとても有難かったし、心苦しくもあった。
うさぎちゃんなんて1日だけ私を人間の女の子にしてくれた。
結果的にお別れを言う事になってしまったけれど、お陰でちゃんとこの恋にピリオドを打てたから、とても感謝してる。

人間の男の人に恋をした事、後悔はしていない。
色んな感情、周りの人の優しさ、恋をする人達の気持ち、世界の素晴らしさを知れたから。
こんな私でも本気で人を愛せるんだって分かったから。
愛する事の素晴らしさを教えてくれた翔さん、ありがとう。
大好きだったよ、私の宇宙少年!



そして私はまた猫としていつもの日常に戻るの。
月野家に帰ると、家の前ではアルテミスが雪まみれで待ってくれていた。
ずっと見守ってくれてたのね。
心配かけてごめんね、ありがとうアルテミス。

「……あたしを待っててくれたの?」
「当たり前だろ♡さ!中へ入ろーぜ♡お腹空いちゃった!」

笑顔で出迎えてくれるアルテミスの優しさに救われた。
私の居場所、帰る場所はいつでも皆のところなんだって改めて感じた。

アルテミスにもう少し優しく、素直になって向き合ってみても良いかな?何て考えてる自分がいた。




おわり

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