キンモク星短編SSログ(旧作版)



「ただいま~」

1人の仕事を終え、帰宅したのは日付が変わろうとしていた10分前。大気と夜天は、俺と違うスケジュールで、早々に帰宅。
リーダーの俺ばかりが忙しいって、何かおかしくね?
何故、リーダー特権で仕事少なく出来ないのか?疑問で仕方がない。

「おかえり~」

夜天の声がした。起きているらしい。
しかし、大気の声が聞こえない。寝たのか?
そんな事を考えながらリビングへと向かうと俺は、目の中に飛び込んで来た光景に絶句した。

「大気、なんて格好してやがんだよ?」

声がなかった主がそこにはいた。
しかし、格好が普通ではない。アイドルらしからぬ格好をしていた。

「全裸で正座してるんだって」

答えてきたのは大気。では無く、何故か夜天で。大気はだんまり。
張の本人は、スマホを握り締めて画面を真剣に見つめていた。異様な光景だ。

「正座は分かるけど、何で全裸?」
「産まれた時のままで、誕生日を迎えたいんだって」
「マジか……?」

そう、後数分で大気の誕生日がやって来る。
真面目な大気は、真面目がおかしな方向へと向かい、産まれたままの姿。即ち、全裸で自分の誕生日を迎えようと考えたらしい。思考回路、大丈夫か?

「スマホ持って待ってるのは?」
「水野からかかって来るんじゃないの?」
「ああ、なるほどな」

水野から最初の“おたおめ”メッセージを受信すべく、スマホをじっと睨みつけてるのか。
果たして水野は、誕生日祝いのメッセージを忘れず日付変わった瞬間に送ってくるかねぇ?そんなタイプには見えねえけど。
寧ろ、愛野やお団子の領域っぽいぞ。

「もうすぐですよ!」

やっと発した言葉がそれかよ。俺への“ただいま”も結局言ってくれてねぇんだけど。
“恋は盲目”とは言ったもので、大気も水野に祝ってもらう事で周りが一切見えていないのかもな?裸で変態だけどな。

「来ると良いな?」
「来ますよ!約束しましたから」

へいへい、水野の事信じてるんだな。
でも、そう上手く行くだろうか?

「さん、にい、いち」

いや大気、新年じゃないんだから。カウントダウンする程楽しみって……。
長年連れ添った連れの意外な恋する一面を見た気がした。

「日付変わりました!」
「ハッピーバースデー、大気」
「誕生日おめでとう、大気」

結果から言おう。水野からの“ハピバ”メッセージは、日付変わっても待てど暮らせど来なかった。
その代わり俺らが、誰よりも早く祝いの言葉を言ってやった。アイドルだから、ベタだけどバースデーソングも歌ってやった。
喜んではくれたが、本命から来なかったから空元気で寝るまで過ごした。

「星野、夜天。ありがとう」

感謝してくれた大気は相変わらず全裸だ。
水野からメッセージが来なかったこと。裸で夜な夜な待機していた事。それが災いして大気は、その日の夜、風邪を引いて寝込んでしまった。

頭がよすぎるのも大変だな。ドンマイ、大気。




おわり



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