希望の香りがする場所(みらい)へ


彼女が存在しているという事。
それはまた戦いがあるかもしれないと言う事。
それでも、セーラームーンは未来を信じて私たちを転生させてくれた。
彼女自身もまた戦いがある世界かもしれなくても、戻って来た。

「セーラームーン」

一言お礼が言いたくて話しかけてしまった。
感動の再会の最中に現金だと思ったけれど、どうしてもお礼が言いたくて。

「プリンセス火球!」
「セーラームーン、ありがとう」
「いいえ……あたしの方こそ……プリンセス火球。……ありがとう」
「お礼、言われることは何も」
「ずっと一緒に戦って、励ましてくれたわ」
「こちらの方こそ、3人を失って絶望してた私を支えてくれて、どんなに心強かったか」

そう、どれだけセーラームーンの存在が希望だったか。
強く美しいセーラームーンがどれだけ私の、銀河のセーラー戦士の憧れか。
そんな人に感謝してもらえるなんて、こんな光栄な事はないわね。

「みんな、戻って来て良かった。そちらの男性は、もしかして……?」
「ええ、恋人のゼウスです。貴女のお陰でまた巡り会えたわ」
「ゼウスと申します。彼女を支えてくれた事、そしてこうしてまたみな一緒に生まれてこられた事。感謝致します。貴女にこうして会えた事も光栄に存じます。ーーシルバー・ミレニアムの次期女王、ネオクイーンセレニティ。そして、ゴールデン・キングダムの次期王、キングエンディミオン」
「オレの事、知っているのですか?」
「ええ、太陽系の強く美しい守護戦士たちは銀河に散らばるセーラー戦士たちの憧れ。そして伝説です。プリンスとプリンセスが手を取り、地球の次期キングとクイーンの輝きを見せたあの一瞬ーー。生命力に溢れた星の光のパワーは時空を超えて銀河中に伝わってきましたから。そんなあなた方に、会えて光栄です」

あの星の光のパワー、とても力強くて希望に満ち溢れていた。
暖かくて、落ち着く希望のパワー。
だけれど、それを機にギャラクシアの侵略と破壊が勢いを増して、私たちの星まで死の星になるなんて……。
彼を目の前で失う事になってしまうなんて想いもしなかった。

セーラームーンが、シルバー・ムーン・クリスタルが悪いわけじゃない!
嫉妬して、悪の心が生まれるのが悪いの!
セーラームーンはきっかけに過ぎなかったんだって、私は思う。
彼女がいたからこそ、またこうしてみんな一緒に生まれてこられたのだから。
ギャラクシアもレテもムネモシュネも、シャドウ・ギャラクティカの仮初のセーラー戦士たち全員もまた生まれ変わってるかもしれないけど。
今度は真っ当に生きて欲しいわね。

「そうだったんですね。よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」

ゼウスと王子エンディミオンが手を取り合って熱く握手を交わしている。
それを見ると、何だか感無量になって。
目頭が熱くなって、込み上げて来るものがある。
プリンセスも、プリンスも、とてもいい人たちだわ。

「地球に、是非遊びに来て下さい」
「はい、是非!あなた方にも、私たちの星に、是非遊びに来て下さい」

お互いの星に遊びに行く約束までしてるわ。うふふ。
どうなっているかしら?私たちのキンモク星は……?

「私たちのプリンセスを護ってくれて、感謝しているよ」(ウラヌス)
「敵だと疑って、ごめんなさいね」(ネプチューン)
「力不足で、最後まで力になれず、申し訳ございませんでした」(プルート)
「いいえ、疑うのは戦士として当然のこと。立派でしたよ」(メイカー)
「私たちも、途中で力尽きてしまって最後まで一緒に戦えなかったし」(ファイター)
「まぁ私たちも、余裕無くて大人げなかったしね」(ヒーラー)

みな、それぞれに別れの挨拶をしている。
住む世界が遠く離れていても、お互い同じセーラークリスタルを持つ守護戦士。
あの時は戦いで、心の余裕が無くて、どんな関係だったかは私には分からないけれど。

「私たちも最初に殺られてしまって…」(マーキュリー)
「手も足も出なくて、不甲斐なかった。悔しいよ、うさぎを守り切れなくて……。敵だと疑って攻撃的になってしまった」(ジュピター)
「あなた達の気持ちは痛い程分かるから、気にしないで」(ファイター)
「私たちも、試すような事をして、ごめんなさい」(マーズ)
「いいえ、かっこよかったですよ!プリンセスに純潔を誓ったあなた達」(メイカー)
「そうそう、何だっけ?“とっくに命を捧げたたった一人の人がいるから男なんかお呼びじゃない”だっけ?」(ヒーラー)
「へぇー美奈子お姉ちゃんもレイお姉ちゃんもそんな事言ってたんだ?」(サターン)
「普段、彼氏欲しい~って言ってるのに、やるじゃん!」(ジュピター)
「ち、違うわよ!口からでまかせよ!本心じゃないわよ!」(ヴィーナス)
「いやいや、マジな顔だったよ、ヴィーナス」(ヒーラー)
「もう!そーよ!私の一番はうさぎよ!これで良いでしょ?」(ヴィーナス)
「そう、私たちはうさぎを守る守護戦士だもの。うさぎを置いて大切な物なんて他には無いわ。昔も今も、そしてこれからも未来永劫ね!」(マーズ)
「それでこそ真のセーラー戦士!!」(ファイター)
「あなた方は?」(ネプチューン)
「私たちも、プリンセスが一番大切ですよ!」(メイカー)
「プリンセスの為ならなんだって出来る」(ファイター)
「勿論、プリンセスは私たちの生き甲斐よ」(ヒーラー)
「そう、お互い同じね!」(プルート)
「これからもお互いプリンセスを護って行きましょう」(マーキュリー)

まぁ、ファイターたちったら、あんな事言っちゃって。
私を護る。それは彼女たちの使命ではあるけれど、全てをかけて犠牲にして欲しいなんて思ってない。望んでもないわ。
だけど、その気持ちだけで充分。ありがたい。

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