ハッピーサマーウェディング♡♡


「いらっしゃいませ」
「うわぁぁぁ~~~」

中に入ったまことは、目を輝かせていた。
俺に会いに来ていた。それは確かに本心だろう。
けど、やはりウエディングに憧れがあった。だから、何度も何度でも足繁く通えたのだろうと推測出来る。
ただ、やはりまだ彼女の言う通り学生だ。中には入りずらい。
長年通っては、外で眺めるだけの日々。思いは募っていた事だろう。

「やっと、来てくれましたね」

受付のお姉さんが、まことにそう話しかけてきた。顔が知られるほど、来ていたとは……。
あの日から今までの年月の長さと、通っていた回数に胸が傷んだ。

「あはは、見られちゃってましたか?お恥ずかしい限りです」
「噂になってましたよ?モデルさんみたいな長身な美少女が通ってるって」
「そんな、モデルみたいだなんて……照れるな」
「いや、まことは実際ポテンシャルすっげぇいいぜ?」
「フィアンセさんですか?」
「フィアンセだなんて、照れるなぁ」
「いや、実際フィアンセだろ?」
「ご結婚、されるのですね?」
「いや、まだお互い学生なのでまだ先です」
「でもプロポーズはもう済んで、結婚は決まってるぜ!」
「勇人……」

受付嬢に色々聞かれ、照れまくって謙遜するまことに代わり、俺は事実をありのままに説明する。
結婚の約束も無いのに、ここには入らない。予行演習として、興味深かったから入ったのだ。

「なぁお姉さん、まだまだ先だけど予約って出来るんですか?」
「何言ってんだよ、勇人?」
「いや、だって結婚するなら式も上げるだろ?俺、まことのウエディングドレス姿見てえもん」
「見てえもんって……したいし、着たいけど」
「じゃあ決まりな!どうせならここで挙げようぜ?俺たちがこの地で初めて出会った思い出の場所でさ」
「勇人……」

結婚式を挙げるなら、ここしかない!そう直感した俺は、考えるより先に動いていた。自分でも驚く程のフットワークの軽さで。

「なぁ、大丈夫だよな、予約?」
「ええ、勿論ですよ」

困惑して茫然自失になっているまことを他所に、俺はテキパキと予約を取り始めた。
まことが専門学校卒業して働いて、慣れてきた23歳くらいがベストか?日にちは仏滅だとしても、初めて会ったあの日がいいな。

「よし、予約完了っと!」
「ありがとうございました。予約金が発生しますが、如何されますか?5万円からになりますが……」

おいおい、それを早く言ってくれよ、お姉さん。

「はい、これで」

バイトをしていて常に10万は財布の中に入っていた。とりあえず5万円支払い完了!

「本当に予約しちゃったよ、この人は……」

そう呆れて言ったかと思うと、声を出して腹を抱えて大笑い。
何にしても、まことを笑顔に出来たんだから思い切って予約して良かった。
まぁ、予約しようと思って入ったわけではなかったが、思い立ったが吉日って奴だ。行動して良かった。

「じゃあ中、色々見るか?」
「ああ」

そう、俺たちはまだ中に入っただけだった。5階建てのデカいブライダルショップだ。じっくり見られる。

「ごゆっくりどうぞ」
「ご案内致します」

受付嬢に代わり、今度はウエディングプランナーが中を案内してくれるそうだ。

「本日は3件の結婚式が入ってます」

そう言って一件目の会場前に行くと、花嫁と花婿が親族や友人達と話している所に遭遇した。

「うわあ、綺麗だな」

まことの方が綺麗だ。と言う言葉は今は飲み込んでおいた。

「ウエディングドレスもご覧になりますか?」
「見ます!」

即答しただけあって、衣装部屋に案内されると夢中でドレスを目を輝かせて見始めた。俺の存在など忘れて……。
いや、まことが楽しそうだから例え空気化しても俺は本望だ。

「今日はありがとうございました」

一通り見終えると、まことはプランナーや受付嬢にお礼を行って満足して万遍の笑顔で店を後にした。
俺も一礼して後に続く。

「今日はありがとな♪」
「どう致しまして。まことの幸せそうな笑顔を見れたんだ。プライスレスだよ」
「5万円払ってたけどな」
「うっ、それは……言うな」
「あはは、ごめん。払わせちまって。でも、本当に嬉しかった」
「お安い御用さ」
「5万円が?」
「それはもう良いだろ?ははは」

俺自身もここに来る前はこんな事になるとは想定外だった。まこともそうだろう。
そんなつもりで連れてきた訳では無いはず。ただ、嫌な思い出を塗り替えたかっただけだろう。
しかし、思いもよらぬ方向で最高の思い出へと塗り替える事になった。

「これで、結婚式挙げるまでは死ねないな」
「ああ、いい目標が出来たよ。体づくり頑張らないとな!」

決して大袈裟なんかじゃない誓い。
俺たちは互いに惚れている。
しかし、この命は互いのためではない。互いの主の為にある。
敵が現れたら主の盾となり、守る騎士と戦士だ。その事は決して忘れてはいけない。

「さて、帰って野菜と花、植えるか!」
「ああ、すっかり遅くなっちまったけどな」

店を出ると、日は暮れ始めていた。
俺たちは、ブライダルショップで大分長居をしていたらしい。ブライダルショップの魔力、恐るべし!
とは言え、まことの幸せな笑顔を見られたので良しとしよう。5万、取られたけど……。




おわり

2/2ページ
スキ