夢幻泡影
衛を見ると私の事をマジマジと見ていた。
そして何か考えている様な仕草をしている。
「そう言えば思い出したぞ!1度この格好の奴に会ったことがある!……たしかあれは」
「ああ、バーチャルリアリティシアターで1度な。覚えていたのか?」
「ああ、そこだ!やはりあの時の変な奴か?」
「変な奴とは失礼だな。お前の代わりにうさぎを陰ながら守ってやってたんだ。そんな事言われる筋合い無いぞ!」
漸くあの時の事を思い出したようだが、自分自身の分身に対して変な奴とは失礼なやつだ。
「あまり守ってる様に感じなかったぞ。やられていた記憶がある」
覚えておかなくていい、嫌な事は記憶に残っているんだな。
「私はお前の分身だからな?お前が出来る範囲の事しか出来ないから仕方ないだろう」
「そうか……何かすまない」
痛い所を着いたようだが、それを矢となり衛自身の心にグサグサ突き刺さったようだ。ちょっと意地悪な事を言い過ぎたかと反省する。
「所でお前が記憶を取り戻してうさぎと付き合う事になったあの日からどれくらいの月日が経ってるんだ?」
「今は夏だ」
「……そんなに経ってないのでは無いか?」
「まぁ、そうだな」
なんて事だ。そんなにすぐ別れていたのか?私が戻った意味は?こんなすぐに呼び戻されるなら戻らない方が良かったのでは無いかとさえ後悔が込み上げる。情けない本体だ。
「うさぎの事はどう思っている?今でも好きか?」
「いっそ嫌いになれたら楽なんだけどな……」
素朴な疑問だった。当然だ。好きなのに別れるなど私にはどうしても考えられない事だったから。
しかし、遠回しだがまだ好きだからこそ苦悩している事が見て取れる。これは何とも辛い事だ。
「うさぎは別れを納得したのか?理由は話したのか?」
「いや、愛情を感じられなくなったと突然一方的に別れを告げた」
「……酷い男だな」
「……面目ない」
我ながら酷い振り方だと思った。
出会ってからここに至るまで、うさぎに対する態度が酷すぎる。
何一つ変わっていない。そんな気がする。
「で、うさぎの反応は?」
「納得できない様子だった。何度もしつこく理由を聞いてきて別れたくないと懇願された」
「当然だな。俺でも納得できない」
救いようの無いバカだ。
「で?今は戦いは?」
「新たにブラックムーンと言う奴らが現れて戦っている」
戦いのある世界か?仕方が無い。これが戦士として生まれてきた運命だからな。
夢の内容もその戦いに直結していると考えると妥当だろう。しかし、そうなら敵の思う壺にはまってないか?
「夢の内容は敵からの警告、と言う事は考えられないか?」
「まぁそう考えるのが妥当だろうな」
「では何故別れを選んだ?」
「彼女を失いたくなかった!俺と別れる事でうさこが幸せになるならと身を引いた」
「彼女の幸せはお前といる事だ。魔界樹から自分の身を呈して庇い続けた彼女の愛は本物だった。それを手放すとは愚かなことを……」
全くもってその通りだと思ったのだろう。反論が返って来なかった。
「お前は戦いの場には?」
「行ってるさ!彼女を助けてる」
「月野うさぎの時は冷たい態度を取り、セーラームーンは助けているのか?」
「ああ、せめてセーラームーンだけはと思って」
「それでは益々彼女は混乱するし、納得できない。蛇の生殺しだな」
話を聞けば聞くほど呆れる。
この男は月野うさぎと出会った当初から本当に何の進歩もないように感じる。
会えば喧嘩をしていたあの頃、お互いに正体が分からないけれど無性に熱き血が騒ぎ助けたくなり、無我夢中でセーラームーンを助けていた。
そしてカーディアン(花札衛)との戦いの時もそうだ。
会えば冷たい態度を取り、記憶を無くすもセーラームーンを守りたいとの想いが芽生え私が生まれ、いつも助けに行っていた。
全然成長していない本体に呆れ果てる。
「どうすれば良かったんだ……?」
こうするしかなかったんだ。お前ならどうする?と言わんばかりの問いに嫌気がさす。
「どうするのが正解かは分からない。しかし、お前の行動は正しいとは思わない。自己満足に過ぎないし、彼女には伝わってない。お前自身も後悔しているように見えるからな。私が出てきたのが何よりの証拠だ」
私は地場衛の“月野うさぎを愛してやまない。守りたい”との想いから出来た影。
知らず知らずのうちに月野うさぎへの想いを拗らせた結果、私と言う影を再び蘇らせてしまったに違いない。
「そう……だな」
この日はその内日が昇り、朝になった為話は終わってしまった。
衛も黙り込んで考え込んでしまったし、私も聞きたいことは聞けたからまぁ一段落と言った所だろう。
今後はどうなるのか、衛が大学へ行ってる時間は考える時間になった。外に出るわけにもいかないし、自ずと考える時間が与えられた。
よく考えなくとも相談相手はいるはずがなかった。
6歳で両親を亡くし、そこからは1人で抱え込む人生を送っていたから相談出来る人などいない。
しかもうさぎの事となると余計相談相手がいない。
この場合、親友の古幡元基に相談するわけにもいかないだろう。
こういう時、適任の仲間がいない事がこんなにシンドいとは思ってもみなかった。
アルテミスやルナ辺りに相談に乗ったら親身になってくれそうだが……。
これだ!と言う名案が思いつかないまま数日が過ぎていった。
その間も衛は大学へ行き、帰ってきたら私がいる事に毎回ウンザリしている。
敵が現れるとタキシード仮面となりセーラームーンを助ける為、戦いに加勢している所も見ていた。
本当に助けはしているのか。
しかし、戦いの度に助けに行っていると言うわけではなかった。行かない時もあった。
何故助けに行かないのかはもう流石に問いつめはしない。
想いを断ち切るなら、うさぎを想うなら助けない方がいいのだから。
それにうさぎには4人の守護戦士がいる。
彼女達に任せる方が心強い。
夜中は相変わらずあの夢を見るのか、寝てはうなされて起きるの繰り返しのようだ。
1人で抱え込み苦しむくらいならうさぎに夢の話をすればいいとさえ思えてきた。
単純な話では無いかもしれないが、それが1番いい方法な気さえする。
そんなある時、この状況がしんどくなった私は戦いが起きたら現場に月影の騎士として出て行こうと決意した。
ここにいても状況は変わらない。それどころか悪化の一途をたどってる気がする。
私と違い、戦いが起こる度にタキシード仮面は出向いている訳では無いと分かった以上、これを利用して今度衛が加勢しない日にセーラームーンを助けようと思い立つ。
そして何か考えている様な仕草をしている。
「そう言えば思い出したぞ!1度この格好の奴に会ったことがある!……たしかあれは」
「ああ、バーチャルリアリティシアターで1度な。覚えていたのか?」
「ああ、そこだ!やはりあの時の変な奴か?」
「変な奴とは失礼だな。お前の代わりにうさぎを陰ながら守ってやってたんだ。そんな事言われる筋合い無いぞ!」
漸くあの時の事を思い出したようだが、自分自身の分身に対して変な奴とは失礼なやつだ。
「あまり守ってる様に感じなかったぞ。やられていた記憶がある」
覚えておかなくていい、嫌な事は記憶に残っているんだな。
「私はお前の分身だからな?お前が出来る範囲の事しか出来ないから仕方ないだろう」
「そうか……何かすまない」
痛い所を着いたようだが、それを矢となり衛自身の心にグサグサ突き刺さったようだ。ちょっと意地悪な事を言い過ぎたかと反省する。
「所でお前が記憶を取り戻してうさぎと付き合う事になったあの日からどれくらいの月日が経ってるんだ?」
「今は夏だ」
「……そんなに経ってないのでは無いか?」
「まぁ、そうだな」
なんて事だ。そんなにすぐ別れていたのか?私が戻った意味は?こんなすぐに呼び戻されるなら戻らない方が良かったのでは無いかとさえ後悔が込み上げる。情けない本体だ。
「うさぎの事はどう思っている?今でも好きか?」
「いっそ嫌いになれたら楽なんだけどな……」
素朴な疑問だった。当然だ。好きなのに別れるなど私にはどうしても考えられない事だったから。
しかし、遠回しだがまだ好きだからこそ苦悩している事が見て取れる。これは何とも辛い事だ。
「うさぎは別れを納得したのか?理由は話したのか?」
「いや、愛情を感じられなくなったと突然一方的に別れを告げた」
「……酷い男だな」
「……面目ない」
我ながら酷い振り方だと思った。
出会ってからここに至るまで、うさぎに対する態度が酷すぎる。
何一つ変わっていない。そんな気がする。
「で、うさぎの反応は?」
「納得できない様子だった。何度もしつこく理由を聞いてきて別れたくないと懇願された」
「当然だな。俺でも納得できない」
救いようの無いバカだ。
「で?今は戦いは?」
「新たにブラックムーンと言う奴らが現れて戦っている」
戦いのある世界か?仕方が無い。これが戦士として生まれてきた運命だからな。
夢の内容もその戦いに直結していると考えると妥当だろう。しかし、そうなら敵の思う壺にはまってないか?
「夢の内容は敵からの警告、と言う事は考えられないか?」
「まぁそう考えるのが妥当だろうな」
「では何故別れを選んだ?」
「彼女を失いたくなかった!俺と別れる事でうさこが幸せになるならと身を引いた」
「彼女の幸せはお前といる事だ。魔界樹から自分の身を呈して庇い続けた彼女の愛は本物だった。それを手放すとは愚かなことを……」
全くもってその通りだと思ったのだろう。反論が返って来なかった。
「お前は戦いの場には?」
「行ってるさ!彼女を助けてる」
「月野うさぎの時は冷たい態度を取り、セーラームーンは助けているのか?」
「ああ、せめてセーラームーンだけはと思って」
「それでは益々彼女は混乱するし、納得できない。蛇の生殺しだな」
話を聞けば聞くほど呆れる。
この男は月野うさぎと出会った当初から本当に何の進歩もないように感じる。
会えば喧嘩をしていたあの頃、お互いに正体が分からないけれど無性に熱き血が騒ぎ助けたくなり、無我夢中でセーラームーンを助けていた。
そしてカーディアン(花札衛)との戦いの時もそうだ。
会えば冷たい態度を取り、記憶を無くすもセーラームーンを守りたいとの想いが芽生え私が生まれ、いつも助けに行っていた。
全然成長していない本体に呆れ果てる。
「どうすれば良かったんだ……?」
こうするしかなかったんだ。お前ならどうする?と言わんばかりの問いに嫌気がさす。
「どうするのが正解かは分からない。しかし、お前の行動は正しいとは思わない。自己満足に過ぎないし、彼女には伝わってない。お前自身も後悔しているように見えるからな。私が出てきたのが何よりの証拠だ」
私は地場衛の“月野うさぎを愛してやまない。守りたい”との想いから出来た影。
知らず知らずのうちに月野うさぎへの想いを拗らせた結果、私と言う影を再び蘇らせてしまったに違いない。
「そう……だな」
この日はその内日が昇り、朝になった為話は終わってしまった。
衛も黙り込んで考え込んでしまったし、私も聞きたいことは聞けたからまぁ一段落と言った所だろう。
今後はどうなるのか、衛が大学へ行ってる時間は考える時間になった。外に出るわけにもいかないし、自ずと考える時間が与えられた。
よく考えなくとも相談相手はいるはずがなかった。
6歳で両親を亡くし、そこからは1人で抱え込む人生を送っていたから相談出来る人などいない。
しかもうさぎの事となると余計相談相手がいない。
この場合、親友の古幡元基に相談するわけにもいかないだろう。
こういう時、適任の仲間がいない事がこんなにシンドいとは思ってもみなかった。
アルテミスやルナ辺りに相談に乗ったら親身になってくれそうだが……。
これだ!と言う名案が思いつかないまま数日が過ぎていった。
その間も衛は大学へ行き、帰ってきたら私がいる事に毎回ウンザリしている。
敵が現れるとタキシード仮面となりセーラームーンを助ける為、戦いに加勢している所も見ていた。
本当に助けはしているのか。
しかし、戦いの度に助けに行っていると言うわけではなかった。行かない時もあった。
何故助けに行かないのかはもう流石に問いつめはしない。
想いを断ち切るなら、うさぎを想うなら助けない方がいいのだから。
それにうさぎには4人の守護戦士がいる。
彼女達に任せる方が心強い。
夜中は相変わらずあの夢を見るのか、寝てはうなされて起きるの繰り返しのようだ。
1人で抱え込み苦しむくらいならうさぎに夢の話をすればいいとさえ思えてきた。
単純な話では無いかもしれないが、それが1番いい方法な気さえする。
そんなある時、この状況がしんどくなった私は戦いが起きたら現場に月影の騎士として出て行こうと決意した。
ここにいても状況は変わらない。それどころか悪化の一途をたどってる気がする。
私と違い、戦いが起こる度にタキシード仮面は出向いている訳では無いと分かった以上、これを利用して今度衛が加勢しない日にセーラームーンを助けようと思い立つ。