遠い日の少年


そして子供の日、大勢の方が楽しいと言って保育園で仲良くなった男の子数人を連れて来た。

「ぼくのおともだちの1個上のきみとくん、さいとくん、ゆーとくんにかずとくんだよ♪」

連れて来た4人を得意気に両親に紹介する衛。

「「「「こんにちわー♪おじゃまします」」」」
「いらっしゃい、こんにちは。衛と仲良くしてくれてありがとう♪これからも仲良くしてあげてね」
「「「「うん」」」」

そう挨拶を交わすといそいそと鯉のぼりを見ようと外に出て行くと、仲良く話している声が聞こえて来て2人は耳をすまして聞き耳を立てる。

「まもるくんの鯉のぼり、すっげぇ~」
「ホントだ。鯉が5匹も泳いでるぞ!」
「1番上の黒いのはますたーだろ?」
「僕らの色もあるよ♪」
「パパに頼んで5匹泳がせてもらったんだ~。色もみんなの色買ってもらったんだよ」
「さすがはますたー気が利く~」
「やさしい」
「たよりになるな」
「さんきゆーな!」

近くで会話を聞いていた両親は顔を見合せキョトンとなる。
不思議な事は多々あった。
でもそれは衛だけだと思っていた。
しかし、今目の前にいる4人の子供たちもまた、衛と同じで前世の記憶があり、衛と何らかの関係があった子達なのか?と思しき言動にとても驚いた。
そんなはずはない。いや、あるのか?
うさぎとの事といい、とても不可思議だった。

そして鯉のぼりをこの五色に買い揃えたのは今年の事だった。
どうしても大きく黒い鯉のぼりとそれより一回りほど小さい赤、青、緑、灰色の四色の鯉のぼり。
普段はわがままなど言わない衛が“どうしても欲しい”と珍しくごねたので、仕方なく折れた形になった。ーーあれはそういう事だったのか?と点と点が線として繋がった。
複雑な想いを抱いて見ていると、今度は家の中に入って五月人形を見ようという事になり、衛の部屋へと上がって行った。

「うっわぁ~かっけ〜」
「ってかでっけぇ~」
「すっげぇ~」
「すごいけど……五月人形とはちょっと形ちがくない?」
「そうかな?これがふつーだと思ってたけどな……何がちがうの?」
「ん~なんてゆーかすたいりっしゅなところ?」
「たしかに、おれんちのとは全然ちがうな~」
「戦国武将ってゆーか、せーよーの鎧だよなぁ~これ?」
「そーなのか?これ見るとなんか不思議なきもちになるんだよな……」
「「「「たしかに……」」」」

近くで見守っていた衛の両親は、五月人形でも不思議な話をする5人に更に不安になる。
子供である筈なのに、会話をしている5人はどこか大人びていてーー。

本当に近い未来、手の届かない遠くへ行ってしまうのではないかと不安に駆られる。
しかし、例えどんな未来が来ようとも驚かずに受け止め、衛の将来を見守って行こうと2人はこの時誓った。

だけどこの誓いはこれからたったの3ヶ月後には永遠に果たされ無いものになってしまうとは、この時の2人には知る由もなかった。



おわり

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