花想
否、やはりうさぎちゃんが可愛くて、とてもいい子だから惹かれているのだ。
そう、いつしか俺は、うさぎちゃんを一人の女性として見ていた。落とすつもりが、俺が彼女に落ちていた。
「手に入れたい!銀水晶も、うさぎちゃんも……絶対に!」
彼女自身も、何処か俺を通して違う誰かを見ている。誰なのかが、知りたい。
「うさぎちゃん、明日もおいで?君の秘密をもっと知りたい、な。うさぎちゃん」
セーラームーンと同じおだんご頭の君こそ、セーラームーンだろ?
司令室や銀水晶の事。そして何よりうさぎちゃん自身の秘密をもっと知りたい。
君が隠している全ての事を知りたい。うさぎちゃんの全てを知りたい。
そして、何故うさぎちゃんが中々俺に落ちてくれないのかも……。
「俺はこんなにも君の事が好きなのに、うさぎちゃん、君は誰を思っているんだ?」
うさぎちゃんが俺に惹かれないのは、そいつが原因だろう。そんなにそいつが良いのか?
そして、俺が暗示をかけられないのもそこに起因しているのだろう。
俺自身も、遠藤としての以前の記憶が思い出せない。頭の中にある記憶は、他の誰かの記憶の様に感じる。ーーー他人事。そう呼ぶのに相応しい。
そしてそのもう一人の誰かによって、俺の意思とは裏腹に暗示がかけられない。誰かが俺を止めている。
「お前は誰だ?」
俺の心をコントロールするお前は、一体誰なんだ?
そして、それは俺自身にも言えることだと知った。
「俺は、一体何者だ?」
どこの誰で、今まで何をしていたのだ?
俺自身の記憶はどこだ?俺の想いはどこにある?
“うさぎちゃんが好きだ”
この想いも、果たして俺自身の、俺が感じている感情なのか?それとも……。
うさぎちゃんを思う気持ちは、紛れもない遠藤、俺自身の感情のはずだ。
それを確かめたい。
「うさぎちゃん、また来てくれたんだね」
「遠藤、さん……」
「今日はどこかに行かない?うさぎちゃんとデート、したいな」
「え?」
「嫌?」
「イヤ、じゃ……ない、です」
誘えば、やはり優しいうさぎちゃんは断らない。
うさぎちゃんに触れたい。感じたい。この気持ちにちゃんと向き合いたい。そして、俺自身の事も、うさぎちゃんの事も知りたい。
だから、良いだろう?ねぇ、うさぎちゃん?
おわり