追想


そして、2つ目の理由は月に行った時、クイーンにーーー前世のお母様に言われた事。

「大丈夫、きっと生きています。安心して」

クイーンの言う通り、きっとまもちゃんはダークキングダムでどうにか生きてる。そう信じているから。
だから、遠藤さんはまもちゃんの他人の空似だと思っているの。同じであって、違ってる。私を呼ぶ声も、眼差しも。それに……

「セーラームーンと同じお団子アタマだね」

最初に言われたこの言葉がどこかで引っかかっていた。
それ以降も、会うと必ずと言っていいくらいセーラームーンの事を聞いてくる。
きっと、遠藤さんの興味があるのは私じゃ無くて、私を通してセーラームーンを見ていて。本当に興味があるのはきっとセーラームーン。

確かに私はセーラームーンだけれど、その前に私は月野うさぎで……。
ちゃんと月野うさぎとして見て欲しい。なんて贅沢な事なのかな?

きっと、私のわがままなんだよね。
私だって、遠藤さんと同じで。遠藤を通してまもちゃんを見ていて。同じ事をしているんだもん。仕方ないよね?私を私として見てくれなくても、文句は言えないよね。それに……

「セーラーVやセーラームーンは普段はどこにいるんだろう。司令室とかあるのかな?」

司令室を探りたいみたいだった。
どうしてそんなにセーラームーンやセーラーV、そして司令室が知りたいの?私やセレニティじゃ無くて、どうしてセーラームーンなの?どうして?

遠藤さんは悪い人なの?あなたは誰なの?
かつてタキシード仮面が取った軽率な行動で危険にさらされたことがあったけど。その時でさえ、敵じゃない。悪い人じゃないって、どうしてだか確信があった。

けれど、遠藤さんは普通の人なのに、言動が疑わしい。まもちゃんと同じ顔なのに、どこか違うせいで、何故か100%信じる事が出来ない。
戦士としての勘?ーーーそんなもの私の中にあったのかな?
プリンセスとしての危機感?ーーーそんなの備わってたかな?

「うさぎちゃん!プリンセス!しっかりして。気持ちは分かるけど、自覚を持って。私はあなたの味方よ。私をもっと頼って!」

セーラーヴィーナスーーー美奈子ちゃんが、そう叱咤激励してくれたからかもしれない。
前世でも彼女は私の一番の良き理解者で、セーラーVとして私達よりも早く戦士をしていた。リーダーとして、とても責任感が強い。
その責任感の強さ故、プリンセスとして影武者をして敵を目くらましして私を守ってくれた、頼れる人。
その人から、そう諭されて信じてもらえていることが、支えになっているのかも。

「あいつは地場衛じゃ……ないのよ」

前世からの相棒であるルナにもそう忠告されているのも大きい。心配ばかりかけてしまってる。ごめんね、ルナ。

まもちゃんじゃ無いってどこか分かっていても、会うことが止められないの。
せめてまもちゃんが無事だと言う確信が持てるまで、もう少し待って欲しい。

「うさぎちゃん、また来てくれたんだね」
「遠藤、さん……」
「今日はどこかに行かない?うさぎちゃんとデート、したいな」
「え?」
「嫌?」
「イヤ、じゃ……ない、です」

ダメ!ついて行っちゃ……今度こそ戻れない。
そう自分の中の誰かが、シグナルを鳴らす。
まもちゃん、今あなたはどこで何をしていますか?
うさこは、あなたに似た人に心も身体も持っていかれそうになってます。
お願い、元気でいて。生きていて下さい。

早く会いたいです。
大好きだよって伝えたいです。



おわり

2/2ページ
スキ