セーラーコスモスSSログ
『不思議な幼女と花火』
幼女を拾った。
いや、拾ったと言うには語弊があるか。
正確には舞い降りて来た。俺の部屋のベランダに。
ちびうさの時とは違って、その子は傘をパラシュート代わりにして優雅に俺のベランダへとやって来た。
「参ったな……」
名前を聞いても、何を聞いてもニコニコして“ちびちび〜”と答えるだけ。全く的を得ない会話に、疲れきっていたら、遠くの方が光った。
「ああ、今日は花火大会だったか……」
忙しい日々の中に加えて、“ちびちび”としか言わないこの子の突然の出現に、花火大会の事をすっかり忘れていた。
「ちびちび〜〜」
キャッキャッと楽しそうに花火を見始めた幼女を見つめる。
どうやら小さいのに打ち上げ花火は怖くないようだ。
「花火って言うんだ。綺麗だろ?」
「ちびちび〜!!!」
こちらを向きながらニッコリ笑う幼女。
不思議だ。初めて会った気がしない。
それどころか、いつも会っている気さえする。
そう言えばどこかうさに似ているような気がする。
「お前、俺の彼女にそっくりだな。ちびうさみたいに未来の俺たちの子か?……なんてな」
有り得ない話ではない。
現にちびうさだって空から落ちてきた。
うさにそっくりなちびうさは、未来の俺たちの子供だった。
この子だってちびうさ同様、外見も雰囲気も似ている。
警戒心も無く、人懐っこい性格はうさぎそのものだ。
笑顔が可愛いところもうさそっくり。ちびうさよりも瓜二つで似ている。
「ちびちび〜〜〜」
「……まぁ、そうだよな」
“ちびちび”しか言わないんだ。
最初から期待なんてしていないが、答えてくれるなんて思っていたわけじゃない。
ただ、そうだったら嬉しいなと思っただけだ。
打ち上げ花火が怖くないのもそうだったら頷ける。
幼女の見た目をしているが、ちびうさ同様900歳だなんて飛んでもない年齢の可能性だってある。
見た目に惑わされてはダメだと言う教訓は散々している。
「どこの子?」
「ドコノコ?」
「……はぁーーー」
質問には繰り返すだけ。
言葉を知らないって訳では無いようだが、何故こんな的を得ないんだ。
まぁ、今の所大人しく花火を見ているからいいけど。終わった後はどうしたらいいだろうか?
「打ち上げ花火は楽しんでるか?」
「ちびちび〜〜〜」
老若男女関係なく花火は楽しむ傾向にある。
どこの誰だが知らないが、満足してくれると嬉しい。
終わった後のこと?
ふっ、愚問だな。
(翌朝交番に連れていこうとして、寝かせていた寝室を見ると消えていた。
昨夜の事は夢か、それともゴーストを見たのかと思ったが寝ている型が着いていて現実であったことを思い知った。)
おわり
20240912 宇宙の日