セーラーコスモスSSログ


『次の世界へ』


クイーン・セレニティは、銀水晶を使い悪しきもの達を封印し、プリンセス達に未来を託し、静かに生命を閉じた。

滅びゆく命の中、クイーン・セレニティはこれまでの人生を走馬燈のように駆け巡っていた。

クイーンになり、セレニティを産み育て本来ならば千年生きるはずだった。それが、たった一度侵入者を許してしまっただけで脆くも月の王国は終焉を迎えてしまった。

いや、侵入者は今だけでは無い。セレニティの誕生祝賀会にも一人いた。

そいつは王国を継ぐことなく滅びると適当な呪いをかけてきた。信じてなかったが、一応の打開策は取った。今も銀水晶に最後の願いを託して王国を蘇らせるよう働きかけた。

アイツの通りになったなどとは思わないが、結果何十億年と繁栄し、宇宙一として君臨し、全銀河の星々から羨む存在であった月の王国が一瞬で滅びるなど誰が想像出来ただろう。正に呪いそのものだとクイーンは感じた。

「来世に幸せなって……」

力尽きたクイーン・セレニティはゆっくりと目を閉じた。

「ここは……」

次に目を開けると、セレニティを抱き締めながら辿り着いた場所へと来ていた。

生も死も全てが始まり全てが終わる場所ーーギャラクシーコルドロン。

「お久しぶりですね、月の王国のクイーン・セレニティ」

目の前には前に来た時と同じ姿形のガーディアンコスモスが立っていた。

「ガーディアンコスモス……」
「さて、あなたがここに来たという事は、来世を望んでいるということ?それとも、別の人生を歩みたい?」

ガーディアンコスモスは静かにクイーン・セレニティに問いかける。

「私は、何十億年と栄えた月の王国を終わらせた前代未聞の女王。銀水晶も使ってしまい、セレニティへと託しました。王国の言い伝え通り私は責務を背負い、セーラー戦士となります」
「迷いはありませんか?」
「ええ、ずっと覚悟をしていました。そういうものだと思っていましたから、迷う余地も無いです」

そう語るクイーン・セレニティの目はまっすぐでなんの迷いもなく澄んでいた。

月の王国には代々、銀水晶と共に受け継がれし伝説が存在していた。

宇宙一繁栄と長寿を誇っており、宇宙の平和を祈っていた。役割を終えた月の女王は死後、宇宙を守護する戦士となるのだと。

宇宙一の聖石である銀水晶の持ち主である月の女王の役目を終えた後の次の人生は宇宙最強の戦士、セーラーコスモスとなる事。

「では、本当に良いのですね?」
「はい、覚悟は出来ております」

最終確認に、クイーン・セレニティは力強く答えた。

その言葉に、ガーディアンコスモスはロッドを構える。ロッドを振ると、星の閃光が降り注ぐ。その光を浴びたクイーン・セレニティは見る見る姿形を変えてゆく。

頭はお団子のそれではなく、ハート型のシニヨン。月の王国の者である証のおデコの三日月は星型へと変え、硝子のようなドレスからセーラー戦士の戦闘服へと変わっていた。

「今日から貴女がセーラーコスモスとなり、この宇宙を護る最強の戦士となるのです」
「これが、セーラーコスモス……」

セーラーコスモスとなり、戦闘服に身を包んだクイーン・セレニティは不思議な気持ちに陥っていた。

何百年と傍で見慣れていたはずのセーラー戦士の戦闘服。いざ、自分が着るとなると変な気分だと感じていた。

ただ、太陽系のセーラー戦士の戦闘服とは色も形も雰囲気が違うからだろうか。

「セーラーコスモス、貴女はここ、ギャラクシーコルドロンでセーラーカオスから平和を守るのです」
「はい」
「射手座Aスター全域を任せます」
「これから宜しくお願い致します」

こうして月の王国の女王、クイーン・セレニティはセーラーコスモスへの変化し、何十億年と宇宙に君臨し続けた。




おわり

20231212 クイーンディ

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