あたしはあたしよ
side うさぎ
また敵が現れた。
まもちゃんもちびうさもいない中で、新たな敵と戦わなきゃいけない。そう気を引き締めながら帰宅すると、玄関に知らない靴が置いてあった。
「ニコッ♡」
「だっっ誰っこのコっ」
小さな女の子が笑顔で出迎えて来て驚く。
しかも育子ママの言葉で更にびっくりする。
「いやねぇ、うさぎ。自分の妹のちびちびちゃんのカオ、忘れちゃったの?」
「ちゃったのっ??」
……はい?
勿論、妹なんていない。忘れるはずない。
これはちびうさの時と手口が似ているから、流石の感の悪い私にもピンと来た。
ちびうさの様に未来から来て、ママ達を何らかの術で家族と思わせたんだって。
私と顔が似ているから私と関係があるんだろうなってことは何となく察する。
敵も現れたし、何か警告なのかな?
とか色々考えたんだけど、ちびうさより小さいし、オウム返しばっかで意思疎通が出来ない。どうしよう……
美奈P達に会わせても、一緒だった。
ただ、私の二人目の子供か、ちびうさの子供と言う結論に。
もしもちびうさの子供なら、孫って事になるのよね?どーしよう。16歳でおばあちゃんになっちゃったよ?
どんな子かは正直分かんない。だけど敵意は感じられない。単純に可愛い♡
ちびうさと違って人懐っこい印象。
そのお陰で一緒に寝る事にしたんだけど、いい匂いがする香炉を持ってて癒される。
もしもこの子が未来の私の子孫なら、敵から守ってあげなきゃ。
ちびうさが来た時のように狙われて助けを求めているなら、力になってあげたい。
連絡のつかないまもちゃんの家に電話をする。不安になりながら呼び鈴を鳴らしているとちびちびが寄り添ってくれた。
不思議な子。何でも分かってる感じがする。ちびちびを抱き締めると癒される。ホッとする。
ジュピターやマーキュリーだけじゃなく、ヴィーナスとマーズまでクリスタルを抜かれてしまった。
ヴィーナスとマーズのクリスタルを抜いた奴の顔を見て、封印していた記憶ーーまもちゃんのクリスタルが抜かれた事を思い出す。耐え切れなくて、気を失ってしまった。
次に目を覚ますと、家で自分のベッドだった。傷ついた私にちびちびはずっと寄り添ってくれていた。
本当に何でもお見通しみたい。
セーラーティンにゃんことの戦いにセーラー戦士姿のちびちびが駆けつけてきて驚いた。
セーラー戦士、だったのね?
こんなに小さいのに、もうセーラー戦士になれるのね……
帰りの公園で、無邪気にブランコを漕いでいる姿は本当に小さい女の子そのものなのに、セーラー戦士だなんて……
「……不思議なコね、あんたってば。あたしにはなーんにも教えてくれなくて」
本当、あたしにはなーんにも教えてくれない。
ただただ笑顔で、あたし達の言葉を繰り返すだけ。
なのに、すんなり火球皇女やスリーライツにはセーラー戦士である事を明かしてる。信用、されてないのかな?それとも心配させない為?
分からないけれど、敵では無い事は分かるわ!
妙に懐かしくて、憎めなくて安心する。
なんにも言わなくても何かが分かるような……
「お前はだあれ?」
思い切って聞いてみた。
ちびちびの事をもっと知りたい。
「あたしはあたしよ」
あたしはあたし……
「コラッ☆またはぐらかしたわねっちゃんと答えなさい、ちびちびっ☆」
「きゃははっ」
あたしはあたし、か……
そう、だよね?
私も、色んな顔を持つけれど、私は私だもん!他の誰でもない。何者でもない。
私は私でしかないんだもんね。
はぐらかされちゃったけど、やっぱりまだ言えないのかもしれない。
言えるようになったら、話してくれる、よね?
直後、ギャラクシアの攻撃を受ける。
不意を着いた攻撃に、為す術なく倒れてしまった。ちびちびを守ってあげることが出来ず、不甲斐ない。
そう思いながら見た夢でギャラクシアに引きずり込まれそうになった。
そんな私の手をずっとちびちびが握ってくれていた。ちびちびに、助けられた。助けるハズの子なのに……
「ちびちび……おまえが助けてくれたのね」
ーーずっと感じてた
あたしの手を引っ張る柔らかくて温かい手
「ありがとう、ちびちび。ホントに不思議で頼りになるコね、お前って」
セーラー戦士だからかな?
私の事をなんでも知っているみたい。お見通しって感じ☆
私よりも、ずっとずっと頼りになるし、しっかりしていると感じる。
射手座Aスターで敵からの攻撃で数多の窮地に立たされる。ヘヴィメタルパピヨンの攻撃で窮地に立った時、ちびムーンとカルテットが到着する。
私の声を感じて導いてくれたとちびムーンは言うけど、私はちびムーン達が来る事すら知らなかった。
プリンセス火球のナビで来たと思っていたのも違っていた。
そんな時、ちびちびに注目が集まる。
ちびムーンに妹でも子供でも無いと否定される。
じゃあ、ちびちびは一体、何者なの?
「戦いは終わらない。ずっと続くわ」
頼みのクリスタルがコルドロンへと消えて戦意喪失した私に、ちびちびがそう語りかけて来た。
「あなたが背負ってゆくのよセーラームーン!きっと後悔するわセーラームーン!」
やっぱり、ちびちびはただのセーラー戦士じゃ無かった。未来を、遥か先の未来を見てきたんだ。知っているんだとちびちびの言葉で確信した。
そして、戦いが続く未来に傷つき、絶望して私に救いを求めてきたのね。
そんなちびちびに、私がしてあげられること。それはーー
「戦いの終わりには希望と未来があるって、あたしは作ってみせる。皆との未来を。だから、あなたも希望と未来を捨てないで」
未来に救いがある事。希望がある事をちびちびに教えてあげることくらい。
「信じて。あたし達の希望の星は決して消えたりしない。星が輝き続ける限り、あたし達は大丈夫!負けないから」
信じる心を持つ事の大切さを、諦めない心を持つ事の意味を伝える。
すると私の頬っぺにキスしたちびちびは、その姿を大人の姿に変えた。
そっか、やっぱり立派なセーラー戦士だったんだね!
ずっと、不思議な子だって思っていた。
何もかも知っていて、寄り添ってくれていたんだね!
ありがとうね、ちびちび。
ここまで導いてくれて。
今まで守ってくれて。
私を頼ってくれて。
未来を教えてくれて。
最後まで見ていて。
私の戦いを。
そして、その先の希望と再生を。
私の全てを持って、終わらせてみせる!
そして、もう一度また人生を歩めるんだってところをーー
おわり
20230505 こどもの日