あたしはあたしよ
「そちらの小さな戦士の方は?」
セーラーセレスにそう問われる。
どう答えようか?いつもの様にすっとぼけようとしたら、うさぎが笑顔で助け舟を出してくれた。
「このコはセーラーちびちびよ」
なーいす☆
その手があったか!
「セーラーちびちびっ?」
「そう!これでも立派なセーラー戦士なの。
セーラーちびちび……
そいえば あんた その後にムーンは付くんだっけ?」
「け?」
私自身もこの小さな体でのセーラー戦士名を決めていなくて、返事に困った。だから、やっぱりとぼけて見せた。
確かにムーン付けたくなるよね。
でも私は、何度も生まれ変わった先の未来のうさぎだけれど、月は守護していなくて……
あたしはあたしだから、セーラーちびちびが一番しっくり来るかな?
うさぎに付けて貰ったんだし、わざわざムーンを付けなくてもいい気がするの。
ちびムーンに妹かどうか確認するうさぎ。
二人にそっくりだというセレスに対して、ミレニアムの女王は第一王女しか産まないと否定する三人。
うさぎの子供じゃないならちびうさの子供かと美奈P達と話していたことをそのまま質問するうさぎ。
「……違うわ!お前は一体誰……?」
感も頭もいいちびムーン。即否定して、私の正体を探ろうとしてきた。見透かされたくなくて、咄嗟にうさぎの足に隠れた。今はまだ、バレたくない!
もう少し、本当の戦いが始まるまではーー。
今はそのタイミングじゃないの。然るべき時が来たら、私から絶対に言うから待って欲しい。
何事も、話すのにタイミングって奴がある。だから、あの時ちびうさも言いたくても本当の事を言えなかったんだよね?
今なら分かるよ、その気持ち。
言ったら信じて協力してくれるのは分かっているけど、説明出来なかったって事。ちびうさ自身も把握出来ていない戦いに、どう説明して協力してもらうか頭が混乱していたんだって。
なのに、あの時の私は余裕が無くて攻めてしまって、本当にごめんね。
奇しくも、ブラックムーンの時の状況が似てる。次々捕らわれる仲間。時空を超え、未来での戦い。敵となったちびうさがまもちゃんとキスをしているのを目の前で見ているしか無かった。
今回は時空も銀河も超えた壮大で壮絶な戦い。先に待ち受けるは、絶望だらけ。
タイミング良く霧が晴れて来て、ギャラクシアの城が聳え立った。
待ち受けていたのはスターライツのクリスタルを奪って行ったセーラーΦとΧ。ギャラクシア直属の配下で一番容赦が無く残忍な二人だ。
セーラー戦士に変身した火球が仇を取ろうとしたけど、ダメだった。また目の前で一つ、命が潰える。
そして、進んだ先で、遂にーー
次に敵として立ちはだかったのは、クリスタルを抜かれ、ブレスレットで一時的に再生した仲間のヴィーナス達。そして、恋人であるタキシード仮面。
セーラームーンを助けに入ったカルテット達がやられてしまった。
ちびムーンもブレスレットを外そうと加勢しようとする。
ダメ!
必死で止めようと、ちびムーンの手を握り、何があったのかを見せる。みんながどんな風になったか、映像を送る。
ちびムーンに、セーラームーンの目を覚まさせて貰う役目をして貰う。
必死で戦うセーラームーン。だけど、予想以上にみんなの力は凄くて。セーラームーン自身もまだ戦う覚悟が出来なくて、苦戦を強いられる。
ちびムーンは迷いなく立ち向かおうとする。
「ーーダメ!手を出しちゃいけない!これはセーラームーンの戦いだから。銀河の行く末がかかってる、セーラームーンの戦いだから。だから、セーラームーンを信じてーー」
ちびムーンの戦いじゃない。セーラームーンの戦い。辛いけど、私たちは見ているしかない。見守るしかないの。
他でもない。ギャラクシアとの戦いも、その先に待ち受ける本当の敵と真実と向き合い戦うのはセーラームーンだから。
「ちびちびーーお前は本当は何者なの?」
再び投げかけられた私の正体への疑問。
今回も何も言わず、セーラームーンとギャラクシアの戦いに集中した。
そして、遂にギャラクシーコルドロンへと到着した。
今までで一番残酷なショーの時間ーー仲間のクリスタル、そしてタキシード仮面がそこにほおりこまれてしまう。
最後の希望ーーちびムーンが消えてしまった。
セーラームーンの絶望の絶叫に、カオスが遂に動いた。そして、カオスの口から今まで戦ってきた敵の真実を告げられる。
愛する人や仲間を失って、何のために戦えばいいのか。戦いの必要性を見失って、セーラームーンは完全に戦意を喪失してしまった。
「セーラー戦士が一人残らずいなくなる。今こそ戦いの終わる時か」
「いいえ、戦いは終わらない。ずっと続くわ」
戦いが終わると感じた二人に、とうとう私の口から更なる真実を告げる時が来たと感じた。
「だから、あなたの手で“今度こそ”今 戦いを終わらせるのよ。銀河ほ未来を救うために。セーラームーン、あなたの最後の力で、全ての敵の源 カオスとコルドロンを消滅させ、戦いを終わらせるのよ!」
辛いけど、分かって欲しい。コルドロンと一体化したカオスを完全に消滅させなければ、戦いは終わらない。みんなも、戻って来られない。
「あなたが背負ってゆくのよセーラームーン!きっと後悔するわセーラームーン!」
銀河に平和を呼ぶには、もうそれしか方法が無い。その役目はセーラームーンにしか果たせない。
そして、その事を言うため、導くために私はセーラームーンに会いに来たの。
「ちびちび、あたしは諦めない。いつだって皆が教えてくれたもの。戦いの終わりには希望と未来があるって。あたしは作ってみせる。皆との未来を。だから、あなたも希望と未来を捨てないで。信じて。あたし達の希望の星は決して消えたりしない。星が輝き続ける限り、あたし達は大丈夫。負けないから」
「……うん」
これだけ辛い事ばかりと直面して、絶望したのに、セーラームーンは前を向いて未来を信じ始めた。
愛する人や仲間を失っても、皆と過ごす未来を諦めていなかった。
辛い現実を突きつけられたのに、それでも信じる事を止めないセーラームーンのその強い言葉に私は、そんな気分になって信じてみたいと思って、つい頷いていた。