また寝ると同じ夢を見る。
だけど今度は少し違っていた。

｢これは私のタリスマン、サブマリンミラー。そして…｣

いつも持っていた手鏡、確かに大切なものなんだとどこかで理解はしていたが、それが1つ目のタリスマン。彼女が持ち主だったのか…？
必死で理解を追いつかせていると、目の前で光を放ちながら現れたものを見て驚いた。
天王家の家宝と言い伝えられて来た“剣”そのものだった。

｢それが2つ目のあなたのタリスマン、スペースソード。そしてあなたは私と同じこの世界を救う使命を持つ選ばれた戦士。その剣を持って戦うのよ｣

何を言ってるんだ？僕が選ばれた戦士だって？選ばれたくない！僕じゃなくてもいいだろ？大体、タリスマンの持ち主イコール戦士と言うのもなんの根拠も無い。
それに戦闘服はこの女性と同じで露出度が高く派手な物に身を包まなければならないのも意味がわからない。寒そうとかではなくて、恥ずかしくないのだろうか？それにこんなに肌が見えていたら戦いづらいだろうし、何より万が一敵から攻撃を受けた時、身体に傷がつきやすいのではないか？色々難が有りそうな服装だと思うし、年頃の女性として羞恥心的な所はどうなのだろうかと思う。

世界崩壊を救う選ばれた戦士と言うのも嫌だが、彼女と同じ戦闘服ならより一層嫌だ。
タリスマンの剣はカッコイイが、それを凌駕する戦士になりたくないという理由。
そもそも僕は女としてこの世に性を受けて来たこと自体まだ受け入れていないのに、ミニスカートの戦闘服なんてどう考えても柄じゃない。何故僕なんだ？理由が分からない。

｢嫌だ。君一人が戦えばいい！僕のタリスマンが必要ならばいらないからあげるよ。あと1つ見つけて世界崩壊を食い止めるといい｣
｢私だってこんなバカバカしいことは嫌よ！それにタリスマンはそれぞれの持ち主しか使いこなせないの。あなたにしかその剣は使えないのよ｣
｢そんなの知ったことじゃない！｣
｢何がそんなに嫌なの？｣
｢君みたいに戦闘服の布が少ないのが無理だ！僕は女として産まれたことも受け入れていないんだぞ｣
｢ワガママね！それに私の戦士名はセーラーネプチューンよ。覚えて置いてちょうだい｣

初めて名乗った彼女の名前にどこか聞き覚えがある気がしたが、それよりもやはり戦闘服はセーラー服風のそれなんだと瞬時に理解出来て盛大に絶望した。

｢あなたが何故女性として生を受けたのかもその剣を取れば理解出来るわ｣
｢その手には乗らないぞ｣

手に取ってしまえば最後、今までと一緒ではいられず自分の置かれる状況は一変され、普通の生活には戻れないと理解していた。
彼女、セーラーネプチューンの口車に乗せられて取ったら最後だ。思惑には絶対に乗らない！そう誓ったが、夢の中なら大丈夫なのではないか？と少しばかり興味をそそられてしまった。

自分の中の天使と悪魔が囁き、理性が葛藤している。
“夢の中なら大丈夫だ、取ってみろ”
“夢の中とは言え油断は禁物、ダメだ”

要は現実で取らなければいいだけの話、取ってみて様子を見てもいいかもしれない。そう思い、恐る恐る剣に手をかけようと試みる。

｢それを取って後悔はない？｣

今までと明らかに違う声色とトーンでセーラーネプチューンに問いかけられ、勢い余って剣を取ってしまった。
すると剣は光り輝き、僕の周りに光が纏い暖かいオーラに包まれ、とても心地良い気持ちになった。
そして今まで夢で見ていなかった映像がフラッシュバックして来た。
これは…何だ？前世の記憶？
暫くして漸く光が収まったかと思うとセーラーネプチューンと同じだが違う色の戦闘服を身にまとっていた。

…マジか！？やはり布が少ない。
でも心做しかしっくり来るから不思議な感覚だ。





そして夢から目覚めると、その右手には保管されていたはずの剣がしっかり握られていた。
まさか？と思い服を確認するとあのセーラースーツを身にまとっていた。
夢だけの事だと軽はずみで取ってしまった剣だが現実とリンクしていたようで、どうやら僕はセーラー戦士として目覚めてしまったようだ。
夢の中でもフラッシュバックして流れ込んできた記憶は、現実でも生々しく頭の中でイメージ映像として残っており、寧ろ夢の中より生々しく鮮明に前世の記憶が戻ってきた。

そう、僕は前世はセーラーウラヌスとして月の王国を太陽系外の敵の侵入から護る為にクイーンに選ばれた戦士だった。
僕が女として産まれたこともちゃんと意味がある事だったんだと、全ての運命を受け入れる事にした。
そして夢の中で導き続けてくれていた彼女、セーラーネプチューンを現実で探し出してもう1つのタリスマンを集める使命が始まった。


ただやはりセーラースーツの布が少ない事だけは中々受け入れられないでいる。






END