音符に想いを乗せて
彩都の運転する車で移動すること10分。
目的地のフレンチレストランに到着する。
ウエイターに案内され、席に着く。
バースデースペシャルコースをオーダーする。
先に運ばれて来たドリンクのグラスを合わせて乾杯する。
「亜美、お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「でも残念!」
「何が?」
「まだお酒は来年までお預けでしょ?一緒に飲めるまで後一年もあるなんて……」
「飲めても彩都さんも今日は車だからダメでしよ」
「まぁそうなんだけど」
一つ歳をとったと言えどまだ未成年の亜美とお酒を飲めないことを嘆く彩都。後一年がとても長く感じられる。
「気を取り直して、これ、私からの誕生日プレゼントよ」
「ありがとう、何かしら。開けてもいい?」
「勿論よ」
亜美は可愛い包装紙で梱包されたプレゼントを開け始める。
中から出て来たのは、一枚のCDだった。
「これって、CD?」
「ええ、私が独断と偏見で選んで弾いて録音したCDよ」
彩都の言う通り、CDのタイトルを見ると彩都の手書きでジャンルもバラバラだった。
「前に私が弾くピアノが大好きだって言ってくれた事があったでしょ?」
「覚えていてくれたの?」
「当たりえじゃない!」
それは一年近く前の話。受験の息抜きにと彩都の家でピアノ演奏を聴いた後に亜美がふと漏らした言葉。
「あなたの弾くピアノは優しくて、前世からずっと大好きだったわ。勿論、今の昔以上に大好き。ずっと聴いていたいわ」
亜美が望むならとその日以降、聴きたい時に彩都の家で演奏をしたり、電話越しにひいてあげたり、LINEで送り付けたりしていた。
しかし、これでは互いに時間をもてる時でなければいけず、効率が余りに悪過ぎる。どうすればいいかと彩都は知恵を絞って考えた結果、CDに録音してプレゼントをするという事だった。
これならば互いに時間を縛らずに亜美が聴きたい時に聴ける最前の方法だ。勿論、会いたくないとか時間が惜しいとか決してそんな理由では無く、会いたいが止むを得ず会えない時にという打開策だ。
「嬉しい♪ありがとう。これでいつでも彩都さんのピアノが聴けるわ」
「喜んでくれて私も嬉しいわ。でも、安上がりでごめんなさい」
「安くないわ!世界でたった一枚だけのCDだもの。それに今日のデート代は全部あなたが持ってくれているから、かえって高くついているんじゃない?」
「そう言ってくれて救われるわ。亜美は優しいのね」
「感謝するのは当然の事だわ」
そう言いながら亜美はCDのタイトルに目を向けて黙読し始める。
CDタイトル“親愛なる亜美へ”
1.運命
2.カノン
3.エリーゼのために
4.The Rose
5.Over The Rainbow
6.To Love You More
7.ENDLESS RAIN
8.Imitation Rain
9.RAIN
10.NO TITLE
11.NO TITLE
12.NO TITLE
「ねえ、聞いてもいいかしら?」
「なあに?」
「CDのタイトルに3曲、NO TITLEってなっているけど、どうして?」
曲のタイトルが分からないものをチョイスする事は考えられず、亜美は疑問を素直に口にした。
「やっぱりそこ、指摘するわよねぇ……」
聞かれた彩都は少し困った顔をして言い淀んだ。
「ええ、知らない曲を選曲するとは思えないし」
「確かにそうよね。聴いてからのお楽しみ♡って言ったらどうする?」
「やだぁ、勿体ぶらないでよ」
何やら意味深に言う事を躊躇う彩都だが、亜美は逃げる彩都の態度を許さなかった。
「知りたい?」
「知りたいから聞いてるんですけど」
「そうよね。聞いても引かない?」
「???ええ、引かないわ!」
押しの強い亜美に根負けした彩都は、観念して言うことにした。
「そのNO TITLEはね、私が作曲したものなのよ」
「まぁ、凄い!」
何とNO TITLEだった曲は彩都自らが作曲して弾いた曲だと言う。それを聞いた亜美は、単純に感動した。
「亜美を思い浮かべて作曲して弾いたのよ」
「私を?」
「ええ、気持ち悪いわよね」
「そんな事ないわ!とっても嬉しい」
彩都の言葉に亜美は感動した。
自分をイメージした曲を弾いてCDにしてプレゼントなんて予想していなかった。
どれだけの時間をかけて作り上げたものなのか。どんな思いで作ったのか。費やした時間と思う気持ちを考えると亜美は素直に嬉しかった。
きっと曲を作っている時、とても恥ずかしかったに違いない。何度も止めようと思っただろう。だけど、こうして形にして贈ってくれた事に感謝した。
「ほんっとに、嬉しいわ。ありがとう、彩都さん♪どんな曲なのか、聴くのが楽しみ」
今日一番の飛びっきりの笑顔でお礼を言う亜美に彩都はドキリと胸が高鳴った。
「ゆっくり楽しんで頂戴」
「そうするわ。これで勉強頑張れる。難しくて挫けそうになっていたから」
「天才少女の貴女でも医学はそう容易いものじゃないのね」
「だからこそやり甲斐は感じているわ。自分で決めた夢だもの」
「そうね。程々に頑張んなさい!いつでも力になるから相談してね」
「はい」
この後、フレンチのコースを食べながら二人は将来の事、趣味の事などを話しながら楽しい時間を過ごした。
おわり
20230910 水野亜美生誕祭2023
亜美ちゃん、お誕生日おめでとうございます✨
アクアリウムは三年前に書こうとして違うネタが下りてきたから見送り、今年書くことに😊
作中の選曲は私の独断と偏見で選びました🤣
クラシック3曲、洋楽3曲、邦楽3曲(奇しくもX JAPANのYOSHIKI様プロデュース曲)そしてキザにもゾイ作曲を3曲で一時間半くらいは収録されているかと。
個人的にマジでこのCDがほしいです🤣🤣🤣
最後までご拝読頂きありがとうございますm(_ _)m
碧央
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