秘密の趣味
不思議な手鏡をいつもの様に見ていたある日の事だった。それは突然やって来た。
「ママとパパ、どうしているのかな?」
何となく呟いた一言で状況は一変した。
それまで何も変わらず私を映し出していた手鏡は、私以外の何かをボンヤリと映し出した。
「これは……?」
映像は30世紀のパパとママだ。間違いない。
今の様子を映し出しているみたいだった。
銀水晶にだってこんな事出来ない。私の心次第だって言っても限界があった。
だけどネプチューンの手鏡は、今私が見たいものを見せてくれるのだと推測した。
「じゃあ、もしかして今ほたるちゃんがどうしているかも見られるのかも……」
そう呟けば手鏡はたちまち反応し、映像はパパやママから切り替わり四人の影が映し出された。
「やっぱり、そうなんだ」
推測は確信へと変わった。
そこに映し出された映像は紛れもなく今のほたるちゃんとみちるお姉ちゃん達だ。
ほたるちゃんはまだ赤ん坊のままで、三人は必死で子育てしている。そんな微笑ましい四人の家族の映像を映し出していた。
「いや、でも流石に盗み見は……」
見られると言っても無断で見ているのだから悪い事をしていると言う自覚がある。いけないことだと分かっている。
だからこの日は手鏡を置いた。
「ダメダメ!こんな事いけないわ!」
みちるお姉ちゃんはこの手鏡でいつも何を見ていたんだろう。見たいものが見られることはきっと持ち主だから分かっているはず。どんな映像を見ていたのか。単純に気になった。
「流石は魔具タリスマン」
月の王国の道具ってどうしてこんなに不思議な力を秘めたものばかりなんだろう?
銀水晶を筆頭に、聖杯とかルナPとか。上げたらキリが無い。
「でも、ほたるちゃん元気そうで良かった♪」
最初は盗み見をダメだと思っていた私だけど、夏休みなのに誰も相手をしてくれない寂しさを紛らわす様にみちるお姉ちゃんの手鏡の魅力には勝てず、また手を取って魅入ってしまった。
「鏡よ鏡、鏡さん。ほたるちゃんは今、どうしてる」
私の問いかけに手鏡は呼応して、又ほたるちゃん達を映し出してくれる。
赤ん坊のほたるちゃんは、三人のお姉さんに囲まれてすくすく育っていた。
「あれから1ヶ月近く経つもんね!」
まだ生後1ヶ月のほたるちゃん。泣いたり笑ったり忙しそうにしている。
ほたるちゃんが泣くとみちるお姉ちゃん達はアタフタして困って、ミルクを上げてみたりオムツを替えたり、寝かしつけたり。三人で協力し合いながら慣れない子育てを頑張っているみたいだった。こんな三人を見るのも何だか新鮮で、楽しい。
「ほたるちゃん、幸せ者だなぁ~」
ほたるちゃんを中心に三人が絆を深め、結束しているのが見ていて分かり、ホッコリする。こんな姿を見られるのも手鏡があるお陰だとみちるお姉ちゃんと手鏡に感謝した。
一時期はほたるちゃんがセーラーサターンの生まれ変わりだから目覚める前に殺すと殺気立っていたプルート達。
だけど、今はそんな過去なんて無かったみたいにほたるちゃんを大切に育てている。それこそ自分達の本当の子供以上の愛情を持って大切にしているのが見て取れる。
「ほたるちゃん、良かったね。優しい人達に育ててもらえて」
もしあの時にみちるお姉ちゃんがほたるちゃんを育てる事を買って出てくれなかったらどうなっていたんだろう。
土萠教授は死んでしまったし、親戚とか知らないし。本当に三人には感謝だ。この三人以外に適任も無いだろうしね。30世紀に帰ってパパとママに頼むのもありだったかもしれないけど。
「すくすく育ってね。また会えるの楽しみにしてるから」
今度はいつどんな形で会えるのかは分からない。だけどきっと会えるって信じているから。
その後も私はこっそりとほたるちゃんを手鏡通して見守ると言う誰にも言えない秘密の趣味が始まった。
お陰で暇を持て余していた夏休みは楽しい想い出へと変わり、毎日が楽しくなった。
こんなにほたるちゃんを身近で見守れるんだもん。凄いよ。
「私も赤ちゃんなほたるちゃんと遊びたいなぁ……」
ただ楽しいばかりではなかった。盗み見していると恋しくなり、ほたるちゃんに会いたくなってしまった。
とは言え、今どこに住んでいるかなんて手鏡には分からない。それにまだその時でも無い。うさぎ達もみんなに会いたいのを我慢して受験勉強を頑張っているんだ。私だけひっそりと会いに行くわけにはいかないし、場所が分からなくてかえって良かったんだ。
「まぁ、盗み見してる時点で出し抜いてるから意味ないんだけどね」
矛盾に一人ごちる。
「わぁ、凄い!」
考え事をしながら見ているとみちるお姉ちゃんがほたるちゃんを寝かしつけるのにヴァイオリンを弾き始めた。
プロのヴァイオリニストの演奏が子守唄なんて、なんて贅沢なんだろう。
「やっぱりほたるちゃん、幸せ者だよ」
どんな子に育つんだろう。
私の事、覚えてくれているかな?
また私と友達になってくれるかな?
色んな不安はあるけれど、今はプルート達にほたるちゃんを任せて私はまたいつの日か再会出来ることを楽しみに毎日を過ごした。
おわり
20230830 月が土星に接近する日
「ママとパパ、どうしているのかな?」
何となく呟いた一言で状況は一変した。
それまで何も変わらず私を映し出していた手鏡は、私以外の何かをボンヤリと映し出した。
「これは……?」
映像は30世紀のパパとママだ。間違いない。
今の様子を映し出しているみたいだった。
銀水晶にだってこんな事出来ない。私の心次第だって言っても限界があった。
だけどネプチューンの手鏡は、今私が見たいものを見せてくれるのだと推測した。
「じゃあ、もしかして今ほたるちゃんがどうしているかも見られるのかも……」
そう呟けば手鏡はたちまち反応し、映像はパパやママから切り替わり四人の影が映し出された。
「やっぱり、そうなんだ」
推測は確信へと変わった。
そこに映し出された映像は紛れもなく今のほたるちゃんとみちるお姉ちゃん達だ。
ほたるちゃんはまだ赤ん坊のままで、三人は必死で子育てしている。そんな微笑ましい四人の家族の映像を映し出していた。
「いや、でも流石に盗み見は……」
見られると言っても無断で見ているのだから悪い事をしていると言う自覚がある。いけないことだと分かっている。
だからこの日は手鏡を置いた。
「ダメダメ!こんな事いけないわ!」
みちるお姉ちゃんはこの手鏡でいつも何を見ていたんだろう。見たいものが見られることはきっと持ち主だから分かっているはず。どんな映像を見ていたのか。単純に気になった。
「流石は魔具タリスマン」
月の王国の道具ってどうしてこんなに不思議な力を秘めたものばかりなんだろう?
銀水晶を筆頭に、聖杯とかルナPとか。上げたらキリが無い。
「でも、ほたるちゃん元気そうで良かった♪」
最初は盗み見をダメだと思っていた私だけど、夏休みなのに誰も相手をしてくれない寂しさを紛らわす様にみちるお姉ちゃんの手鏡の魅力には勝てず、また手を取って魅入ってしまった。
「鏡よ鏡、鏡さん。ほたるちゃんは今、どうしてる」
私の問いかけに手鏡は呼応して、又ほたるちゃん達を映し出してくれる。
赤ん坊のほたるちゃんは、三人のお姉さんに囲まれてすくすく育っていた。
「あれから1ヶ月近く経つもんね!」
まだ生後1ヶ月のほたるちゃん。泣いたり笑ったり忙しそうにしている。
ほたるちゃんが泣くとみちるお姉ちゃん達はアタフタして困って、ミルクを上げてみたりオムツを替えたり、寝かしつけたり。三人で協力し合いながら慣れない子育てを頑張っているみたいだった。こんな三人を見るのも何だか新鮮で、楽しい。
「ほたるちゃん、幸せ者だなぁ~」
ほたるちゃんを中心に三人が絆を深め、結束しているのが見ていて分かり、ホッコリする。こんな姿を見られるのも手鏡があるお陰だとみちるお姉ちゃんと手鏡に感謝した。
一時期はほたるちゃんがセーラーサターンの生まれ変わりだから目覚める前に殺すと殺気立っていたプルート達。
だけど、今はそんな過去なんて無かったみたいにほたるちゃんを大切に育てている。それこそ自分達の本当の子供以上の愛情を持って大切にしているのが見て取れる。
「ほたるちゃん、良かったね。優しい人達に育ててもらえて」
もしあの時にみちるお姉ちゃんがほたるちゃんを育てる事を買って出てくれなかったらどうなっていたんだろう。
土萠教授は死んでしまったし、親戚とか知らないし。本当に三人には感謝だ。この三人以外に適任も無いだろうしね。30世紀に帰ってパパとママに頼むのもありだったかもしれないけど。
「すくすく育ってね。また会えるの楽しみにしてるから」
今度はいつどんな形で会えるのかは分からない。だけどきっと会えるって信じているから。
その後も私はこっそりとほたるちゃんを手鏡通して見守ると言う誰にも言えない秘密の趣味が始まった。
お陰で暇を持て余していた夏休みは楽しい想い出へと変わり、毎日が楽しくなった。
こんなにほたるちゃんを身近で見守れるんだもん。凄いよ。
「私も赤ちゃんなほたるちゃんと遊びたいなぁ……」
ただ楽しいばかりではなかった。盗み見していると恋しくなり、ほたるちゃんに会いたくなってしまった。
とは言え、今どこに住んでいるかなんて手鏡には分からない。それにまだその時でも無い。うさぎ達もみんなに会いたいのを我慢して受験勉強を頑張っているんだ。私だけひっそりと会いに行くわけにはいかないし、場所が分からなくてかえって良かったんだ。
「まぁ、盗み見してる時点で出し抜いてるから意味ないんだけどね」
矛盾に一人ごちる。
「わぁ、凄い!」
考え事をしながら見ているとみちるお姉ちゃんがほたるちゃんを寝かしつけるのにヴァイオリンを弾き始めた。
プロのヴァイオリニストの演奏が子守唄なんて、なんて贅沢なんだろう。
「やっぱりほたるちゃん、幸せ者だよ」
どんな子に育つんだろう。
私の事、覚えてくれているかな?
また私と友達になってくれるかな?
色んな不安はあるけれど、今はプルート達にほたるちゃんを任せて私はまたいつの日か再会出来ることを楽しみに毎日を過ごした。
おわり
20230830 月が土星に接近する日